ダイヤルゲージは、寸法の変化を高精度に測定できる工具です。単体では使用できず、スタンドなどの測定治具に取り付けて使用します。その基本的な測定原理は、スピンドルの直線運動または円弧運動を歯車機構などで機械的に拡大し、指針の回転として表示するというものです。
ダイヤルゲージの基本構造は以下の通りです。
ダイヤルゲージの大きな特徴は、直接測定と比較測定の両方ができることですが、測定範囲が限られているため、多くは比較測定に用いられます。また、寸法変化だけでなく、平面度や平行度、傾斜度、同軸度などの幾何公差測定にも活用できるという利点があります。
スピンドル式ダイヤルゲージは、最も一般的に使用されているタイプです。その構造は、スピンドルの上下動を内部のラックギアとピニオンギアでダイヤルに伝え、針の回転として変位を表示します。
スピンドル式の主な特徴:
金属加工現場でのスピンドル式ダイヤルゲージの主な活用方法としては、旋盤使用時の芯出し作業やフライス盤使用時の平行出し作業があります。また、シリンダーゲージなど各種精密機器の表示部として組み込まれることもあります。
大きさによっても分類され、標準タイプのほか、目盛面径を大きくして読み取りやすくした大形タイプ、治具への組み込みやすいコンパクトな小形タイプも存在します。
てこ式ダイヤルゲージは、「テストインジケータ」とも呼ばれ、てこの原理を利用した構造を持っています。スピンドルの角度の変化を内部の歯車機構で針に伝え、寸法変化を表示します。
てこ式の主な特徴:
てこ式ダイヤルゲージの最大の利点は、その高い分解能と精度です。特に回転軸の振れ測定や、工作機械の精度検査など、わずかな変位を正確に測定する必要がある場面で真価を発揮します。
また、スピンドル部分が細いという特性を活かし、スピンドル式では測定が困難な狭いスペースや複雑な形状の測定に適しています。近年はマグネットスタンドなどの固定位置の微調整機構付きスタンドが普及しており、測定範囲の狭いてこ式ダイヤルゲージの使い勝手が向上しています。
デジタルインジケータは、アナログ式ダイヤルゲージの近代版とも言える電子式の測定器です。スピンドルの動きをエンコーダーが読み取り、液晶ディスプレイに数値として表示します。
デジタルインジケータの主な利点:
従来のアナログ式ダイヤルゲージと比較した場合、デジタルインジケータは特に以下の点で優れています。
ただし、電池切れのリスクや、極限環境での使用に制約があるなどのデメリットもあります。用途や使用環境に応じて、アナログ式とデジタル式を使い分けることが重要です。
ダイヤルゲージを正確に使用し、その精度を維持するためには、以下のポイントに注意する必要があります。
使用前の確認事項:
測定時の注意点:
精度維持のためのメンテナンス:
ダイヤルゲージは油や液体・粉塵などの汚れに弱いため、切削加工環境などでは保護カバーの使用も検討すべきです。また、長期間使用しない場合は、適切な保管条件(湿度や温度の管理)も重要です。
ダイヤルゲージは金属加工だけでなく、様々な産業現場で活用されています。ここでは、具体的な活用事例と最新のトレンドについて紹介します。
自動車産業での活用例:
電子機器製造での活用例:
最新トレンド:IoT連携とデータ活用
近年のダイヤルゲージ技術の進化として注目されているのが、IoT連携とデータ活用です。従来のアナログ式ダイヤルゲージでは測定値の記録・活用に課題がありましたが、最新のデジタルインジケータではBluetooth接続や無線LAN接続により、測定データをリアルタイムでPC・タブレットに転送し、統計処理や品質管理に活用できるものが登場しています。
このようなIoT対応測定器の普及により、以下のようなメリットが生まれています。
また、画像寸法測定器のような新たな測定技術も登場しており、ダイヤルゲージの限界を超えた多点同時測定なども可能になっています。
製造業におけるIoTやデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れは今後も加速すると予想され、測定工具もこの流れに合わせて進化していくでしょう。ダイヤルゲージ単体での測定から、システム化・自動化された測定へと移行する傾向が強まっています。
しかし、その一方で従来のアナログ式ダイヤルゲージも依然として多くの現場で活用されており、特に極限環境や電源確保が難しい現場では、その信頼性と堅牢性が評価されています。