株式会社三和鍍金は、昭和25年の創業以来、表面処理業界で信頼を築いてきた企業です。同社は単なるメッキ加工に留まらず、めっき事業、塗装事業、研磨事業、そしてリサイクル事業まで、金属加工業に必要とされる包括的な表面処理ソリューションを提供しています。
現在では50種類以上の表面処理技術に対応可能であり、群馬県高崎市の倉賀野町に位置する工場敷地は合計900坪以上の規模を誇ります。メッキ工場、電解研磨工場、カチオン工場という3つの専門工場を保有しており、各工場が最適な処理条件を維持することで、顧客の多様なニーズに応えています。
三和鍍金が提供するめっき技術は、金属加工業界における防錆対策の重要な選択肢となっています。メッキ処理とは、金属やプラスチックなどの素材表面に薄い金属の被膜を形成する技術であり、主に「防錆」「装飾」「導電性付加」「耐摩耗性向上」といった目的で活用されます。
銅・ニッケル・クロムメッキは古くから工業製品に広く用いられ、基材の性能だけでは補いきれない機能を被膜によって補完する役割を担っています。三和鍍金では、高光沢メッキの提供やお客様のニーズに合わせた仕様選定に真摯に向き合うことで、単純な防錆ではなく、製品の美しさと耐久性を両立させたソリューションを実現しています。
特に注目すべき点は、三和鍍金が硬質クロムメッキやハードクロムメッキといった、耐摩耗性に優れた高機能メッキも提供している点です。自動車や建設機械、精密機器など、厳しい使用環境下にある製品に対しても対応可能な技術力を備えています。
また、無電解ニッケルメッキは電気を使用しない化学反応により金属を析出させる方法であり、複雑な形状の部品にも均一に被膜を形成できるという特徴があります。三和鍍金ではこうした多様なメッキ技術を組み合わせることで、顧客の個別課題に対して最適なメッキ方法を提案しています。
三和鍍金の塗装事業を象徴するのが、カチオン電着塗装です。この技術は、水性塗料の水溶液を満たした電着槽内に直流電流を流し、陰極側にセットした電導性金属素材に塗料粒子(カチオン)を引き寄せつつ電気化学反応により不溶性ポリマー化し、表面に析出・固着させて塗膜を形成する塗装法です。
カチオン電着塗装の最大の特徴は、素材全面に隅々まで接液させることにより、ムラなく均一で密着性の高い塗膜を形成できることにあります。従来の塗装方法では塗り残しが生じやすい複雑な形状や隅部でも、確実に塗膜が形成されるため、防錆性の高さが格段に向上します。
さらに注目すべき環境面での利点として、カチオン電着塗装に使用される塗料はVOC成分が非常に少ない水溶性塗料であるため、環境面・安全面で優れています。昨今、製造業では環境規制が強化されており、VOC削減は業界全体での重要課題となっていますが、三和鍍金はこの塗装技術により、環境配慮と製品品質を同時に実現しています。
自動化省力化により品質の安定と生産性の向上も図られており、塗料のロスも極めて少ないというメリットもあります。自動車部品や建材など、屋外で使用される製品に対する塗装需要が高い現在、三和鍍金のカチオン電着塗装システムは業界内で高く評価されています。
三和鍍金が保有する電解研磨技術は、金属加工業界において意匠性と機能性を両立させるための重要な表面処理手段です。電解研磨とは、電解研磨溶液中で製品をステンレスあるいはその他の金属として陽極として電流を流し、金属表面をミクロン単位で電気化学的に溶解させることで研磨効果を得る方法です。
めっきが表面に金属の膜を作るのに対し、電解研磨は製品を微細に溶かすため、処理を行うほど表面が細かくなり、面粗度が向上します。この過程で、ステンレスの特徴である不働態皮膜がより良い状態で形成されるという大きな利点があります。不働態皮膜とは、ステンレスが自然に形成する酸化被膜であり、これが強化されることで、腐食や変色の耐性が飛躍的に向上します。
ステンレス電解研磨の主なメリットとしては、表面の汚れを確実に取り除くことができ、製品寿命と輝きを求める用途に最適であることが挙げられます。医療器具、食品機械、高級部品など、衛生管理と美観が求められる業界で広く活用されており、三和鍍金は平成9年以降、電解研磨装置を複数導入することで、大量処理対応と高精度加工の両立を実現しています。
一方、デメリットとして注意すべき点は、精密部品の場合、電解研磨で溶解する量が品物や仕上がり要求によって異なること、また電流が均一に流れないこともあり、製品を見込み加工することが必要となるケースがあります。特に内径などの複雑形状では専門の電極を製作する必要があり、コストや納期が増加する可能性があるため、事前の入念な打ち合わせが重要です。
金属加工における表面処理の品質は、本処理以前の前処理工程によって大きく左右されます。三和鍍金が重視する前処理には、酸洗処理、脱脂洗浄、ショットブラストなどが含まれ、これらのプロセスは各種表面処理の前処理および仕上げに活用されています。
酸洗処理は、金属表面の酸化膜や不純物を除去するプロセスであり、後続するメッキ処理や塗装処理の密着性を大幅に向上させます。特に鋼材の表面に付着した酸化鉄やスケールを化学的に溶解させることで、メッキ皮膜との結合力が強化され、長期的な耐食性が確保されます。
脱脂洗浄は、素材表面の油分や有機物を除去するプロセスであり、これがないと塗料粒子やメッキ液の密着が阻害されてしまいます。三和鍍金では、予備脱脂から本脱脂、さらには複数段階の水洗を経て、完全な脱脂状態を達成することで、後工程の品質を確保しています。
ショットブラスト処理は、高速で粒子を金属表面に衝突させることで、表面の凹凸を形成し、後続する塗装やメッキとの密着性を向上させる工程です。多種・多用途で目的に合った処理が可能であり、キズなし、シミなし、カゴ痕なしという高品質なアロジン処理への対応も実現しています。
これら前処理工程を最適に実施することで、三和鍍金は最終的な表面処理品質の安定性と耐久性を保証しており、業界内での信頼性を確立しています。
三和鍍金は、単なる金属加工企業ではなく、環境配慮を企業理念の中核に据えた表面処理メーカーとしての立場を明確にしています。昨今のSDGs推進と環境規制の強化に伴い、同社はリサイクル事業を強化し、「ただのめっき屋ではない」という新たな価値提供を目指しています。
リサイクル事業では、剥離サービスにより既存の表面処理膜を除去し、素材を再生させるプロセスを提供しています。これにより、廃棄される金属製品から有価物を回収し、新たな資源として活用することが可能になります。有価物買取事業では、めっき関連の金属回収から買取まで一貫対応を実施し、材質ごとに適切な剥離・リサイクルが可能です。
さらに注目すべきは、太陽光パネルリサイクル事業への参入です。再生可能エネルギー産業の急速な成長に伴い、廃棄される太陽光パネルの処理が重要課題となっており、三和鍍金はこの課題に対して資源を回収し循環型社会の実現に貢献する取り組みを開始しています。
また、経営理念において「伝統ある表面処理業界に第二革命を」というミッションを掲げ、「モノが捨てられ、消費される時代だからこそ、サステナブルな技術を通じ、環境や人にやさしい文化構築を目指す」というビジョンを実現するべく、組織全体で取り組んでいます。これは、従来型の短期利益追求型製造業から、長期的な価値創造と環境責任を両立させる企業へのシフトを象徴するものです。
加えて、全自動ラインを所有することで短納期・超短納期にも対応可能であり、小ロットから大ロットまで多様な生産規模に対応できる柔軟性も備えています。三和鍍金は、昭和25年の創業以来の技術蓄積と、令和時代の環境課題への真摯な向き合い方を組み合わせることで、金属加工業界における新たなスタンダードを確立しようとしています。
参考リンク:株式会社三和鍍金公式サイト - めっき技術の基礎と応用について詳細に解説されており、金属加工従事者にとって有用な情報が豊富です。
https://sanwamekki.com/business/
参考リンク:三和鍍金ブログ「メッキライブラリ」 - ベーキング処理などの特定技術に関する詳細な説明があり、技術者向けの実践的な知識が得られます。
https://sanwamekki.com/info/column/column_mekki/the-baking-process/