アロジン処理 工程の基礎と実践的なポイント

アルミニウム部品に必須のアロジン処理について、各工程での重要なポイント、6価クロムと3価クロムの違い、そしてアルマイト処理との違いを学べます。あなたの製造現場では正しく施工できていますか?

アロジン処理の工程について

アロジン処理 工程の基礎と実践的なポイント
🔍
アロジン処理とは何か

アルミニウム合金を防錆する化学処理。クロメート皮膜を形成し耐食性向上

⚙️
工程の流れ

脱脂→洗浄→除錆→洗浄→表面調整→皮膜化成→洗浄→湯洗→乾燥

4つのメリット

膜厚が薄い、電気伝導性維持、耐食性向上、塗装下地に最適

アロジン処理の工程における脱脂と除錆の重要性

 

アロジン処理の成功を左右する最重要ステップが脱脂と除の工程です。表面に付着した油脂や錆を完全に除去しなければ、その後の皮膜形成時に不具合が生じます。特に脱脂が不十分な場合、素材に付着した不純物がクロメート皮膜に巻き込まれ、皮膜が剥がれてしまう恚れがあります。

 

製造現場では適切な脱脂剤を使用し、浸漬法、拭き取り法、高圧水洗浄、蒸気洗浄など複数の手法を組み合わせることが一般的です。脱脂後の洗浄工程も丁寧に行い、次のステップへ進む前に薬品残渣を完全に取り除く必要があります。

 

除錆も同様に重要な工程で、既存の酸化層を酸性溶液(通常は硫酸とクロム酸)で溶解させます。この工程により金属表面が粗面化され、その後のクロメート皮膜との密着性が大幅に向上します。MIL-DTL-5541タイプ2の規格ではアルカリ洗浄にも対応しており、環境や施設に応じて選択できます。

 

アロジン処理の工程の表面調整と皮膜化成プロセス

表面調整工程はアロジン処理において見落とされやすいものの、極めて重要なステップです。エッチング後、表面には「スマット」と呼ばれる溶解カスが残留します。これをデスマット工程で丁寧に除去しなければ、皮膜化成時にクロメート溶液と素材が正常に反応しません。

 

皮膜化成工程では、リン酸、クロム酸、または重クロム酸を主成分とする処理液を使用します。アルミニウム素材をこれらの化学槽に浸漬すると、クロム酸と金属基材の化学反応によってクロメート層が形成されます。この薄い皮膜は1μm以下という極めて薄い厚みながら、高い防錆効果をもたらします。

 

浸漬時間、液温、液組成は厳密に管理する必要があります。処理液のpHやクロム酸濃度が規格から外れると、形成されるクロメート皮膜の品質が低下し、塩水噴霧試験などの耐食性試験に不合格となる可能性があります。

 

アロジン処理の工程後の洗浄・不動態化・乾燥の役割

皮膜化成後の処理工程もアロジン処理全体の品質を決定する重要な段階です。浸漬を終えた部品は純水で丁寧に洗浄し、化学槽からの残留溶液を完全に除去します。通常の水道水には様々なイオンが含まれているため、pure water(純水)を使用することで、表面への新たな汚染を防ぎます。

 

不動態化処理では、化学溶液を使用して残留酸を中和し、表面に保護酸化物層を形成させます。このステップにより長期にわたる腐食防止効果が保証されます。その後、エアーガンで水分を吹き飛ばし、完全に蒸発させるまで乾燥させます。

 

乾燥時間が不十分な場合、金属表面に水分が残り、後工程の塗装性が低下したり、保管中に微細な腐食が発生したりするおそれがあります。特に複雑な形状の部品では隅々まで乾燥させることが困難なため、オーブン乾燥など追加的な措置が必要となる場合もあります。

 

アロジン処理の工程における6価クロムと3価クロムの選択

アロジン処理には従来6価クロムが用いられてきましたが、近年では環境規制とRoHS指令、ELV指令の対応により3価クロムへの転換が進んでいます。6価クロムは耐食性に優れ、特にタイプ1(茶色または金色の仕上げ)では高い腐食防止効果を発揮します。しかし6価クロムは人体に有害であり、微粒子を吸入し続けると肺がんなどの病気を引き起こす可能性があるため、施工者の安全管理と廃棄処理に厳密な手順が求められます。

 

一方、3価クロムは人体に無害であり、必須ミネラルとしても知られています。自然界にも存在するため環境負荷が低く、特に食品機械や医療機器など衛生管理が重要な産業で選択されます。タイプ2(透明色または虹彩色の仕上げ)では3価クロムを使用し、密着性に優れるため塗装下地としても最適です。耐食性では6価クロムにやや劣りますが、適切な膜厚管理と後処理により必要な耐食性を確保できます。

 

現在では多くの製造企業がノンクロム化成処理薬品への移行を進めており、鉛、カドミウム、クロム(六価及び三価)、水銀、ポリ臭化ビフェニルを含有しない環境対応型のアロジン処理が標準化しつつあります。

 

アロジン処理の工程と他の表面処理との比較および業界基準

アロジン処理とアルマイト処理陽極酸化)は、どちらもアルミニウムの防錆処理ですが、メカニズムと特性が大きく異なります。アルマイト処理は電気化学プロセスで硫酸溶液中の陽極反応を利用し、酸化アルミニウムの厚い層を形成します。このため耐食性と耐磨耗性ではアルマイト処理が優れており、硬度の高い仕上げが得られます。さらに微細な孔に染料を付着させてカラーリング可能な点も特徴です。

 

一方、アロジン処理は化学的浸漬のみで完結し、電解装置が不要なため施工時間が短く、設備投資も低くなります。膜厚が1μm以下と極めて薄く、複雑な形状の部品にも均一に適用でき、電気伝導性を維持します。アルマイト処理で形成されるアルマイト皮膜はアルカリ性に弱く、アルカリ環境では使用に適さないという制限があるのに対し、アロジン処理はより広い環境で使用できます。

 

業界基準としてはMIL-DTL-5541が国際的に広く採用されており、タイプ1と2の区分、AMS-C-5541、MIL-C-81706、AMS 2473といった規格があります。航空機部品、自動車部品、熱交換器、建材、電機部品などの用途別に、求められる耐食性と環境規制への適合性に応じて最適なタイプと膜厚を選択する必要があります。

 

塩水噴霧試験(塩霧試験)による耐食性評価は、JIS H 8502や関連規格に基づいて実施され、アロジン処理の品質を客観的に判定します。

 

アロジン処理の詳細な工程解説と他処理との比較
アロジン処理の国際基準と環境対応型処理技術

 

 


アズワン アルミ処理板A1050Pアロジン1000 /2-9851-03