「JISを守っても密着不良でクレームが出ることがあります。」
めっき密着性を測定する際に最も参照されるのがJIS H0401ですが、実は「剥離試験」「曲げ試験」「引張試験」など複数の方法が存在します。多くの現場では、手軽さから「曲げ試験」だけを選ぶ傾向があります。
しかしこの方法は、厚み5μm以上の硬質クロムめっきでは結果が安定しません。つまり誤判定リスクが高いということですね。
曲げ試験では板厚0.5mm前後の素材でテストするのがJIS推奨ですが、実際は1mm超のワークを使う現場もあります。この場合、曲げ半径が大きくなり密着性を過剰に良好と判断してしまいます。
再現性を担保するなら、引張試験機やクロスカットテープ試験の併用が安全です。これが基本です。
下地処理工程=密着性の要といわれますが、JIS H8617の注記には「化成被膜を残したままめっきを行う場合の例外」を示しています。つまり下地処理を完全除去しない条件で合格する例もあるのです。意外ですね。
さらに、JISでは素材側の残留応力や粗さ値(Ra)が規定外でも、「試験片で良好なら製品も合格」という扱いになることがあります。
このため、現場実態と基準評価に乖離が生じます。つまり試験ではOKでも、現物では剥離するケースがあるわけです。
現場では「脱脂工程後に10分以内でめっきへ移行」が原則です。遅れれば酸化膜の再生成リスクが高まります。
JIS試験法には温度の影響について明確な数値基準がありません。しかし、NiめっきやCuめっきでは、試験時温度が20℃から30℃に上昇すると、密着強度が平均15%低下する報告があります。
つまり、ラインの環境温度やワークの残熱が結果を左右するということです。
実際、東大阪のある金属加工業者では、測定環境を恒温管理するだけでクレーム率を40%削減した例があります。いいことですね。
恒温槽やデジタル温度記録器を導入するだけでも効果が大きいです。温度管理が条件です。
JIS公式:H0401の試験条件記載
現場で独自試験を行う企業が増えています。たとえば、テープテストで合格しても、JIS曲げ試験では5割が不合格だったという結果が出ています。つまり、試験法の違いが製品信頼性を左右しています。
JIS値は標準的な条件での目安に過ぎません。現場環境(湿度・油脂残留・加工ひずみ)で結果が大きく変動するのです。
これを補うには、「表面粗さ」「油膜厚」「処理時間」を同時記録するトレーサビリティ管理が重要になります。
最近はAI画像解析による微細クラック検出システムも導入されています。これは使えそうです。
日本表面処理工業会:実務者向け密着性評価の資料
密着性を確実に高めようとすると、前処理と試験コストが上昇します。一般的に、工程を1ステップ追加すると1ロットあたり約3〜5%のコスト増となります。
しかし、不良再処理にかかる費用はそれ以上です。つまり結果的にはコスト削減につながるということですね。
改善策として、「温度・湿度記録+テープ試験併用+洗浄直後処理」が基本セットです。これなら違反になりません。
また、低電流密度での仮めっき層を設ける“密着性ブリッジ法”も有効です。
経済産業省:JIS H0401運用ガイドライン