型締め圧力の計算で成形機サイズを正しく選定する方法

型締め圧力の計算は射出成形機の選定に直結する重要な工程です。投影面積・キャビティ内圧力・余力の考え方を正しく理解していますか?

型締め圧力の計算と成形機の正しい選定方法

計算式どおりに成形機を選ぶと、バリが出て損失が出ることがあります。


この記事の3つのポイント
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型締め圧力の基本計算式

必要型締め力=投影面積(cm²)×キャビティ内圧力(kgf/cm²)÷1000×余力。この計算式が成形機サイズ選定の出発点です。

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計算だけでは不十分な理由

樹脂の種類・ゲート形状・圧力ロスなど、計算式に現れない要因が実際の型締め力に大きく影響します。

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余力と成形機サイズの正しい考え方

余力1.2〜1.3倍を見込まないと、バリや成形不良が発生して損失が拡大します。正しい選定が品質とコストを守ります。


型締め圧力の計算とは何か:基本の計算式と単位をおさらい

型締め圧力(型締め力)とは、射出成形時に溶融樹脂金型内へ高圧で充填される際、金型が押し開こうとする力に抵抗して金型を閉じ続けるために必要な力のことです。この力が不足すると、金型の合わせ面(PL面)からわずかな隙間が生じてしまいます。たった0.02mm程度の隙間でも樹脂は漏れ出します。


必要型締め力(F)の基本計算式は次のとおりです。


F(tf)= 投影面積(cm²)× キャビティ内圧力(kgf/cm²)÷ 1,000


単位はtf(重量トン)で表され、「射出成形機の○○ton」という表記はそのまま最大型締め力を示しています。たとえば、投影面積が100cm²(ほぼ名刺1枚分の面積)でキャビティ内圧力が300kgf/cm²の場合、必要型締め力は30tfとなります。


キャビティ内圧力の単位はkgf/cm²が多用されますが、MPa表記の場合は「1MPa ≒ 10.2 kgf/cm²」として換算してください。これはよく混乱しやすい点です。換算を忘れずに行いましょう。


樹脂材料 キャビティ内圧力の目安(kgf/cm²)
PP(ポリプロピレン) 300〜350
ABS 400〜500
PC(ポリカーボネート 500〜600
PBT(ガラス30%入り) 300程度(条件依存)


流動性が高い樹脂(PPなど)は低い圧力で充填できるため内圧が低く、流動性の低い樹脂(PC、ガラス繊維入りなど)はより大きな圧力が必要です。これが数値の幅の理由です。


なお、同じ樹脂でも用途によって数値は変わります。ABSの一般機能部品では450kgf/cm²程度ですが、塗装を行う意匠部品では1,000kgf/cm²に達することがあります。つまり用途まで考慮が条件です。


参考:型締め力の計算基礎と樹脂ごとのキャビティ内圧力の目安
必要型締力の基礎知識|ミスミ技術情報


型締め圧力の計算で必要な投影面積の求め方と注意点

投影面積とは、射出方向(型締め方向)から見たときの、キャビティとランナーを合わせた断面積の合計です。多数個取り金型の場合は、すべてのキャビティ面積とランナー面積を足し合わせた値を使います。これが基本です。


たとえば、1個のキャビティ投影面積が15.3cm²の製品を4個取りで成形し、ランナーの投影面積が5.5cm²の場合、投影面積の合計は次のようになります。


A=(15.3 × 4)+ 5.5 = 66.7 cm²


注意が必要なのは「穴や開口部が多い製品」です。投影面積を正確に求める際、製品の外寸から穴抜き形状を引いた実際の閉断面で計算するのが原則です。しかし、外寸だけで概算すると実際より大きな面積になり、必要型締め力を過剰に見積もってしまいます。過大評価した場合、不必要に大きな成形機を選定することになり、時間工賃が上がってしまいます。痛いですね。


一方で注意すべき逆のケースもあります。外寸が大きくても投影面積は小さい細長い製品の場合、型締め力の計算上は小さな成形機でよいように見えますが、成形機の「ダイプレート(金型取付板)」の最大サイズに金型が収まらないことがあります。たとえば、長さ1,000mm・幅120mmのPP製部品の必要型締め力は432tf程度でも、450ton機ではダイプレートに収まらずに成形不能になるケースがあります。型締め力の数字だけでなく、金型の外寸を確認するのが条件です。


また、ランナーが長くなる多数個取り設計では、ランナー部の投影面積が無視できないほど大きくなることもあります。ランナーの面積を省略して計算すると、計算結果が低く出て、成形機選定時に不足が生じるリスクがあります。ランナーは必ず含めましょう。


参考:投影面積の概念と多数個取り設計の考え方
射出成形金型の必須基本知識を速習|engineer-education.com


型締め圧力の計算で「余力」を設定しないと起きる不良とコスト損失

現場で見落とされやすいのが「余力」の設定です。計算式どおりの型締め力で成形機を選ぶと、バリ不良が多発して損失が出ます。これは意外ですね。


射出成形では、計算式はあくまで理論値です。実際の現場では成形条件のばらつき・樹脂ロット差・金型の経年劣化・温度変化など、多くの変動要因が存在します。そのため、計算で求めた型締め力に対して1.2〜1.3倍の余力を見込むことが一般的な推奨値とされています。


具体的な例で確認します。幅500mm・奥行300mm・高さ70mm・板厚2mmのPP製トレイの場合、投影面積は1,500cm²です。


余力なし:1,500 × 300 ÷ 1,000 = 450tf → 450ton機を選定

余力あり(1.3倍):450 × 1.3 = 585tf → 650ton機を選定


余力を見込まずに450ton機を選定すると、少しでも条件が変わったときに型締め力が不足し、PL面からバリが発生します。バリが出た製品は後工程での手作業バリ取りが必要になり、作業コストが跳ね上がります。年間で計算すると、バリ取りの追加工数と不良品廃棄コストの合計が想定外の損失につながった事例は珍しくありません。


反対に、「念のため大きな成形機を使えばよい」という判断も問題です。成形機のサイズが上がると時間工賃が上がります。300ton機と100ton機では時間当たりのランニングコストに明確な差があり、必要以上に大きな成形機を使い続けることは見積もり原価を圧迫します。余力の数値の設定次第で成形機サイズが変わるため、金型メーカーによって相見積もり時の成形機サイズが違うことがあるのはこれが理由です。余力に注意すれば大丈夫です。


余力の設定 リスク
余力なし(計算値のまま) バリ発生・成形不良・バリ取り追加コスト
余力1.2〜1.3倍(推奨) 適正なバッファで不良リスクを低減
余力過大(2倍以上など) 不要なサイズアップで時間工賃・原価が上昇


参考:余力と成形機サイズ選定の関係性について
射出成形における必要型締め力の計算方法|MFG HACK


型締め圧力の計算で見落とされる「保圧とキャビティ内圧の違い」

多くの現場技術者が計算時に保圧をキャビティ内圧力と同一視しています。しかし、この2つは厳密には異なります。これが型締め力の計算精度を下げる原因のひとつです。


保圧とは、成形機のノズル先端付近にかかっている圧力です。溶融樹脂はそこからスプルー→ランナー→ゲートを通ってキャビティに達しますが、この経路を通る間に必ず「圧力ロス」が発生します。圧力ロスが起きる主な要因は次の3つです。


  • 🔹 スプルー・ランナーの長さ:流路が長いほど圧力が落ちる
  • 🔹 スプルー・ランナーの断面積(太さ):細いほど流抵抗が大きくなる
  • 🔹 ゲートの開口面積:小さいゲートほど圧力ロスが大きい


流動解析の実例では、ゲートを絞った条件でロス率が50%に達したケースも報告されています。保圧を10%上げてもキャビティ内圧が10%上がるわけではなく、実際には10%以上上昇するという非線形の挙動も確認されています。


つまり、保圧をそのままキャビティ内圧として計算すると、実際のキャビティ内圧を過大または過小に見積もるリスクがあります。設計段階でCAE流動解析ソフトが利用できる環境であれば、保圧変化時のキャビティ内圧の変化を実際に解析して確認するのが最も確実です。解析できない場合は、既存品の成形データからゲートシール時間と保圧の関係を記録しておき、新規製品の設計に活用する方法が現実的です。


なお、簡易計算として保圧をキャビティ内圧の代替値に使う場合は、単位換算(MPa→kgf/cm²)だけは必ず行いましょう。換算が基本です。


参考:保圧とキャビティ内圧の違いと圧力ロスの考え方
【樹脂の射出成形】必要型締め力の計算の基本とその欠点から|zinbloger


型締め圧力の計算を現場で精度よく使うための実践的な補正ポイント

計算式の理解だけでは不十分です。現場で精度を上げるためには、形状・深さ・重量・取り数といった補正要素を総合的に考慮する必要があります。


まず「成形品の深さ」は成形機選定に直接影響します。深い製品では金型厚みが厚くなるため、成形機の「デーライト(最大型開き量)」と「最大型厚」の仕様を確認することが必須です。確認すべき条件は次のとおりです。


成形品の深さ < デーライト − 型厚 を必ず満たすこと


この条件を見落とすと、型締め力の計算上は問題なくても、物理的に金型が成形機に収まらないという事態が起きます。


次に「製品重量(射出容量)」の確認も重要です。量産工程では、射出容量の最大60%以内で成形することが推奨されています。これは、スクリュー内で100%の樹脂を均一に溶融することが難しいためです。たとえば射出容量1,730gの成形機では、量産での最大射出量は1,730 × 0.6 = 1,038gが目安となります。重量の重い製品を狙いの成形機に乗せてみたら容量オーバーだった、というケースは設計段階でげます。


また、「多数個取り設計」では取り数を増やすほど投影面積が増え、必要型締め力が増加します。同時に、ランナーが長くなることで前述の圧力ロスも大きくなる点を忘れてはいけません。つまり多数個取りでは「圧力ロスが増える→キャビティ内圧が下がる→ヒケが出やすくなる」という連鎖リスクも存在します。


補正要素 確認内容 影響するトラブル
成形品の深さ デーライト・最大型厚のチェック 成形機への搭載不可
製品重量 射出容量の60%以内か 充填不足・ショートショット
多数個取り ランナー含む投影面積の合計 型締め力不足・ヒケ
ゲート形状 圧力ロス率の確認 ヒケ・ボイド・キャビ残り


これらの補正ポイントを設計段階でチェックリスト化しておくと、成形機の再選定やトラブル対応にかかるコストと時間を大幅に削減できます。これは使えそうです。CAE流動解析ソフト(Moldflowなど)を利用すると、保圧・内圧・流動バランスを事前にシミュレーションできるため、特に新規金型設計時の精度向上に役立ちます。型締め圧力の計算に不安がある場合は、ツールの活用を検討してみてください。


参考:成形機サイズの総合的な選定方法
成形機サイズの決め方:製品重量・投影面積・型寸法から総合判断|injection-fuchu.com