強溶剤エポキシをそのまま上塗りした塩化ゴム系塗膜が、翌日チヂミを起こして全面やり直しになることがあります。

関西ペイントの重防食ラインナップにおいて、塩化ゴム系塗料は独立した塗料系統として体系化されています。同社の塗料系統表では、ジンクリッチペイント・エポキシ樹脂塗料・フタル酸樹脂塗料・フェノール樹脂塗料・ウレタン・フッ素系などと並列に「塩化ゴム樹脂塗料」が位置づけられており、「一次プライマー→さび止め→塩化ゴム系中塗・上塗」が標準的な構成です。
塩化ゴム系塗料の基体樹脂は塩化ゴム(クロロプレンを塩素化したもの)であり、溶剤が揮発することで硬化するタイプ(ラッカー系)に分類されます。つまり化学反応で硬化するエポキシとは根本的に硬化機構が異なります。
この違いが現場の塗り重ね判断に直結します。速乾性があるため1日に複数回塗れる半面、溶剤攻撃に対して本質的に弱い面も持ちます。「速乾で厚塗りしやすい系統」という点が、金属加工現場やプラントの塗装工事で長く支持されてきた理由です。
フタル酸樹脂系と比べると、耐候性・耐水性・耐塩水性のいずれも塩化ゴム系が上回りますが、近年はVOC規制や環境対応の観点から、エポキシ・ウレタンなど他系統への代替も増えています。塩化ゴム系が今も選ばれるのは主に「既存塗膜との親和性」と「速乾性による工期短縮」の2点です。
参考情報として、関西ペイントの重防食塗料系統と塩化ゴム系の位置づけを公式カタログで確認することができます。
関西ペイントの代表的な塩化ゴム系製品が「ラバテクトN 上塗」「ラバテクトN 中塗」です。製品説明書には次のような特長が明記されています。
| 特長項目 | 内容 |
|---|---|
| 耐候性 | フタル酸・フェノール・アクリル系一般品より優れる |
| 耐塩水性・耐水性 | 海塩粒子・腐食性ガス環境で良好な耐久性 |
| 乾燥速度 | 指触乾燥:20℃で約1時間。1日に複数回塗装が可能 |
| 付着性 | フタル酸・フェノール系旧塗膜への付着性が良好 |
| 膜厚(1回) | 標準30μm(WET膜厚で75μm相当) |
一方、カタログに明記された「使用上の注意事項」が重要です。ラバテクトN 上塗の説明書には「主に大気曝露部用であり、没水される場合は使用できません」と記載されています。没水部ということです。
さらに耐熱温度は「長時間80℃耐用・短時間120℃耐用(大気曝露環境)」と定義されており、常時80℃以上になる金属配管やプラント装置の外面にはそのまま適用できません。プラント塗装を担当する金属加工従事者がこの2つを見落とすと、早期劣化や塗膜の軟化・ブロッキングが起きるリスクがあります。
もう一つ見落とされがちなのが「熱可塑性」です。ラバテクトNは温度が高くなると塗膜が軟化する性質があります。仕上がった塗装面を積み重ねた場合に塗膜同士がくっついてしまう「ブロッキング」が起きます。
乾燥時間については5℃環境での最短塗装間隔が24時間と20℃時(16時間)より長くなります。冬場の現場で「前日と同じペースで塗れる」と思い込むと膜厚不足や密着不良につながるので要注意です。
関西ペイント「ラバテクトN 上塗」の製品説明書(膜厚・乾燥時間・使用条件の詳細)
関西ペイント ラバテクトN 上塗 製品説明書(PDF)
塩化ゴム系塗料が防食性能を発揮するかどうかは、塗料選びよりも「素地調整の精度」と「膜厚の確保」に大きく依存します。ここは現場の経験則で判断しがちな部分ですが、数字で管理することが不具合防止の基本です。
関西ペイントの新設仕様(PN05)では、素地調整として「ブラストによりSSPC SP-10(ISO Sa2 1/2)まで除錆」が指定されています。SSPC SP-10はブラスト後に目視で残さびが1%未満になる水準であり、これはA4用紙1枚(約600㎠)の中に残さびが6㎠未満に収まるイメージです。
ケレンが不十分だと塗膜が初期付着は得られても、湿気や塩分が塗膜下に入り込んでフクレや早期剥離が起きます。塗料がどれだけ高性能でも、下地が悪ければその性能はほぼ無効化されます。素地調整が命です。
膜厚管理について、PN05仕様の標準構成は次のとおりです。
1回あたりの膜厚が薄い塩化ゴム系では、ウェットフィルムゲージを使ってWET膜厚を随時確認しながら塗装することが必須です。目標Dry膜厚30μmを確保するには、WET膜厚で約75μm(SVR=41.3%のとき)を確認する計算になります。
エッジ(角部)は平面より膜厚が薄くなりやすい部位です。仕様書には「エッジはあらかじめ拾い塗りしてから全面塗装に移る手順が好ましい」と明記されています。エッジの膜厚不足が初期劣化の起点になることが多いです。
また、所定の塗装間隔を過ぎてから塗り重ねると付着不良が起きます。やむを得ず間隔を超える場合は、ワイヤーブラシやサンドペーパーで目荒らし処理を行ってから塗り重ねることが必要です。
関西ペイント「塩化ゴム系(新設)」仕様書(PN05:素地調整・膜厚・塗装工程の詳細)
関西ペイント 塩化ゴム系新設仕様書(PDF)
現場でよく起きる誤りの一つが「既存の塩化ゴム系塗膜の上に、手元にある強溶剤エポキシをそのまま塗り重ねる」という判断です。結論から言うと、これは高確率でチヂミ(リフティング)不具合を引き起こします。
なぜそうなるのか、仕組みを整理します。塩化ゴム系塗料は溶剤が揮発するだけで硬化するラッカー系です。塗膜が乾燥していても、強い溶剤にさらされると再溶解する性質があります。強溶剤エポキシに含まれるキシレン・トルエンなどが旧塗膜を攻撃し、硬化途中の塗膜がめくれ上がるチヂミが発生します。
関西ペイントの公式FAQページでも明確に記述されています。「強溶剤タイプのエポキシ樹脂塗料では塩化ゴム塗膜を軟化させ硬化の過程でチヂミの不具合がでる可能性がありますので、塩化ゴム系塗料にエポキシを塗り重ねる場合は、弱溶剤形の塗料で塗り重ねることが一般的です」とあります。
弱溶剤形エポキシの代表例として関西ペイントでは「エスコNBマイルドK」が紹介されています。同製品は弱溶剤厚膜変性エポキシ樹脂系さび止め塗料として位置づけられており、旧塗膜への溶剤ダメージを最小化しながら防食性能を確保するための製品です。
これは使えそうです。
具体的な施工フローとしては以下の確認手順が推奨されます。
塗料の溶剤種別は製品説明書の「使用シンナー」欄や「労安法上の表示有害物」欄で判断できます。現場の経験だけで判断せず、製品説明書を必ず参照する習慣が手戻りコストを減らす最短ルートです。
関西ペイント 防食用塗料よくあるご質問(塩化ゴム系へのエポキシ塗り重ね不具合に関する公式見解)
関西ペイント 防食用塗料 よくあるご質問
金属加工や鉄骨・橋梁・プラント設備に長く携わってきた方であれば、PCB含有塗膜の問題は避けて通れないテーマです。知らないと損する、という以上に「知らないと法的リスクを背負う」情報です。
PCB(ポリ塩化ビフェニル)はかつて塗料の可塑剤として使われていました。環境省・経済産業省の資料によると、PCBを可塑剤として使用した塗料は塩化ゴム系塗料のみとされており、その代表例として関西ペイントの「ラバマリンプライマー」などの製品名が資料中に記載されています。
問題になるのは製造年代です。1966年(昭和41年)から1972年(昭和47年)までの間に製造・塗装された鋼構造物はPCB含有塗料が使われている可能性があります。この時期に施工されたタンク・橋梁・プラント・水門などの外面鉄部が対象です。
見た目では判別できません。古い塗膜でも通常の劣化と区別がつかないため、気づかないうちに解体や補修作業でPCBを含む塗膜くずを飛散させてしまうリスクがあります。
重要なのが処理期限です。低濃度PCB廃棄物に分類される塗膜については2027年3月31日が適正処理の期限として定められています。この期限を過ぎると、処理可能な施設が大幅に限られ、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
| 区分 | PCB濃度 | 処理期限 |
|---|---|---|
| 高濃度PCB廃棄物 | 5,000mg/kg以上 | 処理期限終了 |
| 低濃度PCB廃棄物 | 0.5〜5,000mg/kg未満 | 2027年3月31日 |
対応の流れは「事前調査(設計図書・施工記録の確認)→塗膜サンプリング→専門機関での分析→専門業者による除去・処分」となります。自社設備や管理施設が1960〜70年代施工に該当する場合は、早めに着手することが得策です。
PCB含有塗膜の判別方法・処理の流れ・保管基準(低濃度PCB廃棄物の処理期限と手続きの詳細)
環境省 PCB含有塗膜調査の公式情報ページ
環境省 PCB含有塗膜調査について

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