鋳造公差等級CTの基礎と図面指示の正しい選び方

鋳造公差等級CTとは何か、CT1〜CT16の読み方・選び方・図面への正しい指示方法を解説。肉厚への適用ルールや鋳造工法ごとの目安など、現場で迷いやすいポイントも網羅。あなたは本当にCT等級を正しく使えていますか?

鋳造公差等級CTの基礎と図面指示の正しい選び方

CT等級を正しく指示しないと、機械加工費が30%以上余計にかかることがあります。


🔩 この記事の3つのポイント
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CT等級とは何か?

JIS B 0403:1995で定められた鋳放し鋳造品の寸法公差規格。CT1〜CT16の16段階で、数字が大きいほど許容誤差も大きくなります。

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工法ごとの目安等級

砂型鋳造はCT9〜12、ダイカストはCT5〜6、ロストワックスはCT6〜7が一般的な目安。工法選定がコストと精度を大きく左右します。

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図面指示の落とし穴

肉厚には必ず1等級大きいCTを適用するルールがあります。この規定を見落とすと、検査で不合格になるリスクがあります。


鋳造公差等級CTとは何か:JIS B 0403の基本構造

鋳造公差等級CT(Casting Tolerance)は、JIS B 0403:1995(鋳造品−寸法公差方式及び削り代方式)によって規定された、鋳放し状態(機械加工を施していない状態)の鋳造品に適用される寸法公差の体系です。この規格はISO 8062:1994を基に作成されており、国際的に通用する基準でもあります。


公差等級はCT1からCT16まで全16段階で構成されています。数字が小さいほど許容誤差が厳しく(精度が高く)、数字が大きいほど許容誤差が広くなります。たとえばCT5とCT10では、同じ基準寸法100mmに対して公差の幅がおよそ4倍以上異なります。CT5では公差0.56mm、CT10では3.2mmという具合です。ものさしで言えば、CT5は紙一枚(約0.5mm)以下の精度管理、CT10は鉛筆2本分(約3mm)程度の誤差を許容するイメージです。


つまり、CT等級とは「どこまでのズレなら合格か」を示す基準です。


この規格が適用されるのは「鋳放し鋳造品」、すなわち鋳型から取り出したままで後加工をしていない状態の製品です。切削加工後の製品には別の公差規格(JIS B 0405など)が適用されます。この区別を理解しておくことは、図面作成や品質管理の現場で非常に重要です。


CT等級を正しく理解することで、発注仕様の明確化、不要な精度要求の排除、そして無駄な加工コストの削減につながります。基本が条件です。


参考:JIS B 0403:1995の全文規定と公差数値表

JISB0403:1995 鋳造品−寸法公差方式及び削り代方式(kikakurui.com)


鋳造公差等級CTの数値表の読み方:基準寸法と公差の関係

CT等級の数値を実際の現場で使いこなすには、公差表の読み方を正確に理解する必要があります。JIS B 0403の表1に示された数値は「基準寸法の区分」と「CT等級」の二軸で構成されており、対応するセルの数値が「全鋳造公差(単位mm)」です。この公差は基準寸法を中心に±半分ずつ(対称配置)が原則です。


具体的な読み方の例を示します。







































基準寸法(mm) CT6 CT8 CT10 CT12
〜10 ±0.26 ±0.5 ±1.0 ±2.1
100〜160 ±0.44 ±0.9 ±1.8 ±3.5
250〜400 ±0.55 ±1.1 ±2.2 ±4.5
630〜1000 ±1.0 ±2.0 ±4.0 ±8.0


※全鋳造公差を±1/2で分割した参考値。実際の公差値はJIS B 0403表1を確認してください。


注目したいのは「基準寸法が大きくなると、同じCT等級でも許容誤差が広がる」という点です。CT8でも、基準寸法が10mm以下なら±0.5mmですが、630mmを超えると±2.0mmになります。これはカーボン1本の太さが0.5mmだとすると、大型鋳物では鉛筆4本分の誤差が許容されるイメージです。


また、CT13〜CT16については、基準寸法が16mm以下の場合に普通公差として適用できません。この範囲には個別公差の指示が必要になります。意外ですね。


実務上よく見落とされがちなのが、「普通公差の適用範囲外の寸法には個別公差が必要」という点です。図面に一括でCT等級を記入しただけでは管理できない寸法が存在する場合があります。注意すれば大丈夫です。


参考:公差数値表と各工法の推奨CT等級


鋳造工法ごとのCT等級の目安:砂型・ダイカスト・ロストワックスの違い

CT等級は鋳造工法と材料によって達成できる範囲が大きく異なります。どの工法が適切かを判断するうえで、CT等級の目安を把握しておくことは発注者・設計者・品質管理担当者いずれにとっても欠かせない知識です。


代表的な工法と材料ごとのCT等級の目安は以下のとおりです。

































鋳造工法 JIS規定の目安(軽金属) 実際の現場での指示値
砂型鋳造(機械込め・シェルモールド) CT7〜9 CT9〜12が多い
砂型鋳造(手込め) CT9〜12 CT11〜14(試作品・単品)
ダイカスト(アルミ合金) CT5〜7 CT5〜6が主流
ロストワックス(インベストメント鋳造 CT4〜6 CT6〜7程度
金型鋳造(グラビティ・低圧) CT6〜8


ここで現場の実情として重要な点があります。アルミ合金の砂型鋳造はJISの規定上CT7〜9を達成できるとされていますが、実際の製造指示ではCT9〜12程度で管理されることが多い、という現実があります。JISの規定と現場の実力値に差があるということです。


これはなぜかというと、JIS規定は「長期間・大量生産かつ設備・工程管理が十分に行われた場合」の達成可能な上限を示しているためです。試作品や単品、または生型を使った砂型の場合はCT11〜15まで緩くなります。厳しいところですね。


高精度が求められる部品にダイカストを選ぶとCT5〜6の精度が期待できますが、金型の初期費用が高額になるという別のコスト問題が生じます。一方でロストワックスはCT4〜6と精度が高く、金型レスで製作できるため、少量・複雑形状・高精度のケースで有効です。ただし大量生産には向きません。


工法選定はCT等級だけでなく、ロット数・コスト・形状複雑度を総合的に判断するのが原則です。


参考:各工法の精度比較と特徴について

砂型鋳造、ダイカスト、ロストワックスの精度の違い(太陽パーツ)


肉厚への特別ルール:CT等級を1段階上げる規定の落とし穴

CT等級の適用において、多くの現場担当者が見落としやすい規定があります。それが「肉厚に対するCT等級は、他の部位より1等級大きい等級を適用する」という規則です。


JIS B 0403の第7条には次のように明記されています。「CT1〜CT15における肉厚の寸法公差は、他の部分に適用する公差等級よりも1等級大きい公差とする。」たとえば、図面の普通公差としてCT8を指示した場合、肉厚部分の公差はCT9として管理しなければなりません。CT7なら肉厚はCT8です。


なぜ肉厚だけが別扱いになるのでしょうか? 肉厚は鋳型の「上型と下型の合わせ面」や「中子の位置精度」に影響を受けやすく、他の部位と比べて寸法変動が生じやすいからです。鋳型合わせ面のずれ(型ずれ)が直接肉厚寸法に反映されてしまう構造上の理由があります。


現場での注意点を整理すると、以下のようになります。



  • 🔖 図面に「普通公差 JIS B 0403-CT10」と記載した場合、肉厚の公差はCT11が自動的に適用される

  • 🔖 CT15が指示された鋳造品の肉厚には、CT16が適用される唯一のケースとなる

  • 🔖 肉厚公差を特別に厳しくしたい場合は、個別公差として図面に別途記入する必要がある

  • 🔖 この規則はCT1〜CT15に適用され、CT16の肉厚には上限等級として機能する


この1等級の差は、基準寸法が大きくなるほど実際の公差幅として無視できない差になります。基準寸法400〜630mmの範囲では、CT9とCT10の差が7mmと10mmになります。これはボールペンの直径(約1cm)ほどの差です。


仮に「全部位CT10で管理するつもり」で発注・受入検査を行っていたのに、実は肉厚部にはCT11が適用されていた、というケースでは、認識のズレが検査トラブルや手戻りに直結します。事前に受発注双方で確認するのが条件です。


参考:肉厚への公差適用と個別公差の指示方法

偏肉や肉厚に関する公差はCTで指示してもよいか(アルミ鋳物課題解決センター)


図面へのCT等級の正しい指示方法:普通公差と個別公差の使い分け

CT等級を理解したうえで、次に重要なのは「図面にどう記入するか」という実務的な問題です。JIS B 0403では、図面上のCT指示方法として大きく2つの方法が定められています。


① 普通公差として一括指示する方法


図面の表題欄またはその付近の注記欄に以下のように記載します。



  • 📋 記載例:普通公差 JIS B 0403-CT12

  • 📋 型ずれ制限を加える場合:普通公差 JIS B 0403-CT12 型ずれ 1.5

  • 📋 削り代も指示する場合:JIS B 0403-CT12-RMA 6 (H)


この方法は、図面上の全寸法に同一のCT等級を一括適用できるため、記載が簡潔になります。ただし、一部の寸法だけに別の公差が必要な場合は、その寸法のそばに個別公差を追記する必要があります。


② 個別公差として寸法直後に指示する方法


特定の寸法に対して個別にCT等級や公差値を指定する方法です。記載例としては「95±3」または「200 +5 −3」のように公差値を直接寸法に付記します。この方法は、精度要求が部位ごとに異なる複雑形状の鋳物に有効です。これは使えそうです。


実務上よく発生するトラブルとして、「全部位に同じCT等級を指定したため、公差の緩い部分には無駄なコストが発生し、厳しい部分には現実的でない精度要求が生じる」というケースがあります。全部位に均一なCT等級を適用するのはダメ、という認識を持っておきましょう。


部位ごとの機能要求を整理したうえで、許容できる部位はゆるいCT等級、機能面となる部位には個別公差や機械加工を組み合わせる、というアプローチが合理的です。精度が求められる寸法には切削加工を後工程として組み合わせることで、鋳放しで無理な精度を追うよりもコスト・リードタイムを大幅に改善できるケースもあります。


たとえば基準寸法300mmの部品でCT6に相当する±0.55mmを鋳放しで実現しようとすると、ダイカストまたは特殊な精密砂型が必要になります。しかし同じ部品を砂型鋳造(CT11程度)で製作し、その後切削加工で±0.1mmに仕上げる方が、量産コストでは有利になるケースが多いです。コストと精度のバランスが原則です。


参考:鋳造品の図面指示と二次加工の考え方について

鋳物の寸法公差と公差等級(アルミ鋳物課題解決センター)


CT等級の「過剰指定」が招くコスト増:現場目線で見直すべき設計習慣

CT等級の運用で最も見落とされやすい問題が「過剰な精度指定」です。これは機能上は不要な高精度CT等級を図面に指示してしまい、鋳造コストや後加工コストが不必要に膨らんでしまう現象です。


たとえば、慣習的に「CT7を指定しておけば安心」という感覚で砂型鋳造に高精度CT等級を指示した場合、次のような問題が連鎖します。



  • ⚠️ 砂型鋳造の通常ロット品でCT7を実現するためには、精密砂型・特殊工程・入念な型管理が必要になり、製造単価が上昇する

  • ⚠️ 公差を満たせない場合、手直しや再加工が発生し、リードタイムが延びる

  • ⚠️ 全寸法に同一のCT等級を指示すると、機能上ゆるい公差でよい部位にも高精度管理が強制される

  • ⚠️ 受入検査の合否判定で混乱が生じ、ロット不合格による廃却ロスにつながることもある


逆に、CT等級を実態に合わせて適切に設定すると、コスト面での恩恵は大きいです。たとえばある砂型鋳造品で全寸法をCT10からCT12へ見直した場合、工程管理の簡素化と歩留まり改善によって製造コストを10〜20%削減できたという事例も報告されています。


これはお金の問題に直結します。


CT等級の見直しは、製品の機能設計と製造方法の両面からアプローチするのが効果的です。具体的には、以下のような視点で設計図面を再点検することが有効です。



  • ✅ 後工程で切削加工する部位は、鋳放し段階のCT等級を緩めて削り代(RMA)を確保する方が合理的

  • ✅ 嵌合・摺動・シール面など機能上重要な部位には個別公差を指定し、他部位は普通公差に委ねる

  • ✅ 試作・単品製作では量産時よりもCT等級が1〜2等級分緩くなることを設計段階で織り込む

  • ✅ 受渡当事者間でCT等級と削り代の適用範囲を協議・明確化してから発注する


JIS B 0403自体も、「鋳造品の設計や注文の最終決定前に、計画している鋳造品の設計と要求する寸法精度、鋳造方法、鋳造品の数量などについて受渡当事者間で協議することが望ましい」と明記しています。CT等級は発注者と鋳造メーカーが事前に合意して決めるもの、というのが原則です。


参考:砂型鋳造の精度改善とコストダウンの考え方

鋳物「寸法公差」最適化ナビ(アルミ鋳物課題解決センター)