CADデータが設計部門にあれば、CAMは別ソフトで一からやり直す必要はありません。
CATIA V5のCAM機能は「マニュファクチャリングワークベンチ」と呼ばれる複数のモジュールで構成されています。加工形態によって使うモジュールが異なるため、まずどの構成を選ぶかが現場の効率に直結します。
代表的なモジュールは以下のとおりです。
つまり、自社の加工形態に合ったモジュール選びが基本です。
金型中心の現場であればSMGとPMGの組み合わせが標準的です。一方、航空機部品のような複雑形状を5軸で削る現場ではAMGの一択になります。モジュールを見誤ると必要な機能がなかったり、逆に過剰なライセンスコストがかかったりするため、導入前に加工ワークの種類を整理しておく必要があります。
なお、すべてのNCワークベンチに共通して「NCG(NCマニュファクチャリング・レビュー2)」が必要です。これは必須モジュールです。3軸構成であれば「NCG+PMG+SMG」、5軸加工まで対応するならば「NCG+AMG」という組み合わせが基本になります。
CATIA V5 基本構成+業務別オプションの組み合わせ(アイコクアルファ)
CATIA V5のCAM機能でNCデータを作るまでには、いくつかの明確なステップがあります。手順を理解しておくと、トラブルが起きたときにどこに原因があるかを素早く特定できます。
まず①CATIAの3Dモデリング機能で製品形状・素材・治具などを作成します。次に②NCモジュールを使って工具の動きを定義します。ここで工作機械の種類・工具径・回転数・送り速度といった加工条件を設定します。この段階で生成されるのはAPTSOURCE(またはCLデータ)と呼ばれる「工具の軌跡情報」であり、まだNCデータではありません。重要なポイントです。
③次にポストプロセッサを使ってCLデータをNCデータへ変換します。ポストプロセッサとは「各工作機械の言語(GコードやMコード)に翻訳するソフト」のことで、使用する機械ごとに設定が必要です。たとえばDMGのコントローラはHEIDENHAINを使うなど、メーカーや機種によって仕様が異なります。これは有料です。
④最後にNCシミュレータで工具と素材・治具の干渉チェックを行い、問題がなければDNC装置経由でNCデータを工作機械に転送して切削を開始します。5軸加工機では特にシミュレーションが必須です。
これはCATIA V5のCAMを使う上での基本の流れです。他の外部CAMソフトと大きく異なる点として、CATIA V5の場合は設計データをデータ変換なしにそのままCAMで読み込めるため、ファイル変換によるデータ欠損リスクをゼロにできます。設計変更が発生した際も、CAMのワークベンチで再計算をかけるだけで工具経路を更新できる点は、現場での手戻りを大幅に減らします。
金属加工の現場で最も多いのが、金型のNC加工プログラミングです。CATIA V5のSMG(サーフェス・マシニング2)は、この用途に特化した機能が充実しています。
粗加工では、トロコイド加工・マルチパス・らせんパスなど、高負荷切削による加工時間短縮と低負荷切削による無人運転の両方に対応できるパスを自動生成できます。また工具へのダメージを軽減するために、ランピングを極力使わず外部からのアプローチを優先する機能も備わっています。これは工具寿命の延長にも直結します。
リワーク加工では、削り残し箇所への自動アプローチが可能です。領域指定も柔軟に行えるため、複雑な入り組んだ金型形状でも効率よく再加工をかけることができます。
仕上げ加工では「シフト制御」という独自機能が際立ちます。通常の3軸加工では、パスの計算制御点が特定の軸に沿って並んでしまい、加工後に面に筋目が残ることがあります。CATIAのシフト制御はこの制御点の並びを意図的に分散させ、鏡面に近い仕上げ面を機械加工のみで実現します。手仕上げ工程の工数を削減できることが、実際の現場でも確認されています。
あるユーザーのベンチマークでは、現有のCAMシステムと同一加工条件で比較した結果、CATIA V5(SMG)導入後に計算時間・加工時間が現状比で約50%短縮されたというデータも出ています(アイコクアルファ株式会社調べ)。これは使えそうです。
CATIA V5 CAM評価機能ベンチマークの取り組み(アイコクアルファ)
5軸加工の導入を検討する現場では、CATIA V5のAMG(アドバンス・マシニング2)モジュールが選択肢になります。ただし5軸加工では3軸と比べて注意すべきポイントが増えます。
まず知っておくべきなのが「CATIAでのシミュレーション結果と工作機械の実動作は一致しない場合がある」という点です。3軸加工ではCATIAのシミュレーション精度が高いため問題になりにくいのですが、5軸では機械のキネマティクス構造(テーブル回転型・ヘッド回転型など)や制御装置の補間方式によって、CATIAが計算した経路と実機の動作がわずかにずれることがあります。そのため、5軸加工に関してはNCシミュレータで最終確認を必ず行う必要があります。これは必須です。
工具軸の制御設定についても整理しておきましょう。MMGやAMGには「法線方向制御」「複数の基準方向を補間する制御」「4軸曲線スイープ加工」「多軸側面輪郭加工」など多様な工具軸制御モードがあります。ワークの形状によって最適な制御モードが異なるため、加工形状に合わせて選択することが加工品質に直接影響します。
実際の導入事例として、航空機部品メーカーの加治金属工業株式会社(栃木県宇都宮市)は、CATIA V5のAMGを導入して約20ヶ月の間に200アイテムを超えるNCプログラムを作成しました。従来のCATIA V4+手書きスケッチによる手法と比べると工数が3分の1に削減され、部品形状の複雑化も考慮すると生産性が約4倍に向上した実績があります。ボーイング社の認定工場として要求される高品質を保ちながら、このスピードアップを実現しています。
5軸加工の現場では、CAMシステム導入コストと生産性向上の費用対効果を正確に計算することが重要です。同社の事例のように複雑形状を扱う工場ほど、CATIA V5 CAMへの投資回収は早くなる傾向があります。
加治金属工業のCATIA V5 AMG導入事例:5軸NCデータ作成で生産性約4倍(ダッソー・システムズ)
CATIA V5 CAMの導入効果を最大化するうえで、実は見落とされがちな機能があります。それが「テンプレート化」と「パワーコピー」による加工工程の自動化です。
多くの現場では熟練作業者がCAM操作を担当しており、その人が異動・退職するとノウハウが失われる問題があります。これは時間リスクです。CATIA V5には「パワーコピー」機能があり、繰り返し行う加工工程をテンプレートとして保存・再利用することができます。標準的な穴あけ加工・ポケット加工・仕上げ経路などをあらかじめテンプレート化しておけば、次回からはワンクリックで同様の工程を呼び出せます。
さらにCATIA V5では「ナレッジウエア機能」を活用し、加工条件の選定ルールをプログラム化することもできます。たとえば「素材がアルミの場合は送り速度を自動でXに設定する」といったルールを埋め込めば、経験の浅いオペレーターでも一定の品質のNCデータを生成できます。つまり属人化を防ぐ仕組みが標準機能として用意されているということです。
また、Microsoft Officeとの連動も実用的です。穴あけ加工入力データ作成マクロや部品表作成マクロを利用することで、CAMの工程設計と図面作成を連動させることができます。現場のバックオフィス作業時間の削減につながります。
加工プログラムのテンプレート化を進める際は、最初にどの工程を標準化するか整理することが重要です。全工程を一度にテンプレート化しようとすると工数がかかりすぎるため、まず「繰り返し頻度が高い加工工程」から着手するのが現実的なアプローチです。確認するべき一つのアクションです。
CATIA V5を使用したカスタマイズ事例:3次元加工テンプレートによる自動化(NTTデータエンジニアリングシステムズ)