ボルトメッキ種類と選び方

建築・自動車・電子機器など様々な用途で使用されるボルトメッキ。その種類ごとの特徴や耐食性、用途別の選択基準について知っていますか?

ボルト用メッキ種類と選択

ボルトメッキ種類の基礎知識
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電気亜鉛系メッキ

ボルトの防錆性として最も一般的。ユニクロ・クロメート・三価クロメートなど複数の処理方法あり

装飾・特殊用途系メッキ

ニッケル・クローム・本金など美観性や特殊機能を要求される用途向け

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高耐食性処理

溶融亜鉛・ダクロ・ジオメットなど極めて厳しい環境向けの処理方法

ボルトメッキのユニクロとクロメートの違い

 

電気亜鉛メッキの後に、クロメート処理を施したボルト表面処理は、金属加工・建築業界で最も一般的な選択です。ユニクロメッキとクロメートメッキは、同じ亜鉛メッキをベースとしながらも、処理方法と性能特性が異なります。

 

ユニクロメッキは、電気亜鉛メッキの上に光沢クロメート処理を行ったもので、色味は青みがかったシルバーになります。塩水噴霧試験での白発生までの時間は約24時間程度です。一方、クロメートメッキは有色クロメート処理を施すことで、やや緑がかった金色系の色合いとなり、白錆発生までの時間は48時間程度と耐食性がやや優れています。建築系金具やボルトに使用されることが多く、コスト面でも優れた選択肢です。

 

ただし、従来のユニクロとクロメートには六価クロムが含まれるため、RoHS指令に対応していません。これに対応するために開発されたのが三価クロメートメッキで、六価クロムを三価クロムに置き換えて環境規制に対応しています。三価クロメートの耐食性はユニクロと同等レベルですが、六価クロムが持つ自己修復性がないため、わずかに耐食性が低下する傾向があります。

 

ボルト用ニッケルメッキの構造と用途

ニッケルメッキはボルトの装飾性を大幅に向上させる表面処理で、光沢のあるキレイな外観が得られます。電気ニッケルメッキでは、密着性を高めるために下地に銅メッキを施すことが一般的です。耐食性については、亜鉛メッキにクロメート処理を施したものよりも明らかに低いという特性があります。

 

ニッケルメッキの表面には微小なピンホール(穴)が存在するため、耐食性を確保するために2重ニッケル(ダブルニッケル)に処理されることが多いです。この場合、下層に厚めのワットニッケルを施し、上層に薄いワットニッケルまたは高速ニッケルを施すことで、美観性と耐食性の両立を実現しています。

 

電子機器や装飾品用ボルトなど、美しい外観が要求される用途では、ニッケルメッキは優れた選択肢です。一方、工業用途で耐食性が重要な場合には、亜鉛系メッキが推奨されます。無電解ニッケルメッキは、電流の通らない樹脂にも処理できる利点があり、複雑な形状のボルトにも均一な膜厚が得られます。

 

ボルトメッキの強度と水素脆性の関係

ボルトに電気メッキを施す際に注意すべき重要な問題が水素脆性です。メッキ処理中にボルト表面から水素が吸収され、鋼の結晶中に入り込むことで、ボルトが脆くなり割れやすくなる現象を水素脆性と呼びます。特に高強度のボルトほどこのリスクが高まります。

 

強度区分12.9のボルトには電気メッキを絶対に施してはいけません。ベーキング処理を行ったとしても遅れ破壊の危険性が残存します。強度区分10.9のボルトにメッキを施す場合は、必ずベーキング処理を行う必要があります。ベーキング処理は、メッキ後できるだけ早く200℃前後で2~4時間程度、ボルトを加熱して水素を放出させる処理です。強度区分8.8以下のボルトでは、一般的にベーキング処理は行われないことが多いです。

 

水素脆性の問題を回避するための代替処理法として、ダクロダイズド処理やジオメット処理(ノンクロムダクロ)があります。これらの処理は、酸処理工程を含まないため水素脆性による遅れ破壊の危険がなく、強度区分12.9のボルトにも対応可能です。

 

参考:強度別ボルト選択とメッキ対応性
三笠・鋲螺の技術Q&A - ボルト強度とメッキ処理の関係性について詳しく解説されています

ボルトの高耐食性メッキ処理と施工環境

屋外での長期使用や海塩環境、化学薬品が存在する環境では、通常の亜鉛系メッキでは十分な耐食性が得られません。そうした極めて厳しい条件下でのボルト使用には、高耐食性処理が必要となります。

 

溶融亜鉛メッキ(ドブメッキ)は、溶融した亜鉛浴内にボルトを漬ける処理で、溶融亜鉛メッキや天ぷらメッキとも呼ばれます。アルミとの電蝕を抑制する効果があり、耐食性に優れています。ただし、メッキが非常に厚くなるため、雌ねじにこの処理を施す場合はねじ山がつぶれるリスクがあり、オーバータップが必要になります。

 

ダクロタイズド処理は、被処理物を処理液に浸漬した後、300℃の炉で加熱する表面処理です。金属亜鉛層、化成皮膜層、表面焼成層の三層構造となり、高い耐食性を発揮します。塩水噴霧試験では480時間以上の耐性を示します。一方、ジオメット処理はダクロタイズドのクロムフリー版で、RoHS指令に対応しており、ケイ素無機バインダーで層状に重なった金属フレークが結合されています。

 

ボルト選択時の環境規制とクロムフリー対応

現代のボルト選択に大きな影響を与える要因の一つが、環境規制とクロムフリー対応です。従来のメッキ処理の多くが六価クロムを含んでいたため、RoHS指令をはじめとした国際的な環境規制への対応が急務となっています。

 

六価クロムは自己修復性を持ち、傷が付いても化成皮膜が自動的に修復される優れた特性があります。しかし環境汚染と健康被害のリスクから、全世界で規制の動きが進んでいます。これに対応するメッキとして、三価クロメート、DISGO、ジオメット、ラフレなどが開発されました。

 

DISGO処理はクロムフリーの高耐食表面処理で、燐片状亜鉛を主成分とするベース塗料と、有機または無機の樹脂を主成分とするトップ塗料の二層構造です。ラフレは亜鉛、錫、アルミニウムの3種類の金属を含有する無機系被膜で、高耐食性と水素脆性の危険が無いという特徴を持ちます。今後、欧州への製品輸出やグローバル対応が必要な企業にとって、クロムフリー対応のメッキ選択は重要な経営課題となっています。

 

参考:ボルト・ナットの最新メッキ技術
三和めっき - ボルト・ナット用メッキの最新情報と技術選択ガイド

 

 


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