亜鉛メッキ塗装におけるプライマー選定と下地処理

金属加工従事者の皆様へ。新設無処理の溶融亜鉛メッキ面への塗装は従来の方法では密着性が得られませんでした。最新のプライマー技術と下地処理方法を習得することで、工期短縮と高品質な塗膜品質を実現できます。あなたの現場では、どのプライマーを選択していますか?

亜鉛メッキ塗装とプライマーの役割

亜鉛メッキ塗装における3つの重要ポイント
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プライマーが必要な理由

新設の溶融亜鉛メッキ面は表面が滑らかで、通常の塗料では密着しづらい特性があります。プライマーは下地とトップコートの橋渡し役を担当します。

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防錆顔料の働き

プライマーに配合される防錆顔料は、亜鉛メッキの保護被膜をさらに強化し、塩害環境での耐食性を大幅に向上させます。

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下地処理の短縮効果

従来は酸洗い、ブラスト処理、化成皮膜処理が不可欠でしたが、最新プライマーは多くの前処理を不要にします。

亜鉛メッキ面の塗装における密着性の課題

 

溶融亜鉛メッキは優れた防食性を持つ一方で、表面が均一で緻密なため、塗料との密着性が低いという課題を抱えています。従来の塗装方法では、この表面に対して以下のような複雑な前処理が必要でした:酸洗い処理によるメッキ表面の損傷リスク、化成皮膜処理による工期延長、ブラスト処理による環境負荷の増加などです。これらの問題を解決するため、金属加工業界では新たなプライマー技術の開発が進められてきました。

 

亜鉛メッキ専用プライマーの種類と特性

亜鉛メッキ向けプライマーは、大別して三つのタイプが存在します。第一は変性エポキシ樹脂系プライマーで、特殊な樹脂分子構造により亜鉛メッキ面への浸透性と付着性を飛躍的に高めています。第二はウォッシュプライマー系で、塗膜厚が薄く作業性に優れたタイプです。第三はハイポンアクチブプライマーなど、業界標準として採用されている高性能タイプで、前処理なしで施工可能な特性を持ちます。各タイプは溶剤性、乾燥時間、上塗り適性において異なる特徴を持つため、現場の要求仕様に応じた選定が重要になります。

 

変性エポキシ樹脂プライマーは、通常のエポキシ樹脂に特殊な化学修飾を施したもので、その結果、亜鉛メッキのような難付着性素材への密着力が格段に向上します。このプライマーは環境配慮型のクロムフリー設計が主流となっており、塗装作業員の安全性と環境保全の両面で利点があります。さらに、2液型の変性エポキシプライマーは3時間程度で硬化し、同日中の上塗り施工を実現するため、工期短縮に直結します。

 

亜鉛メッキ塗装前の下地処理における実務的コツ

亜鉛メッキ面への効果的な下地処理は、プライマーの種類によって大きく異なります。新設無処理の溶融亜鉛メッキ面に対しては、最新の高性能プライマーを使用する場合、基本的に以下の処理のみで十分です:油類を溶剤拭きで除去、表面の汚れやほこりをワイヤーブラシで軽く除去、必要に応じて研磨紙P240~320番で目荒らしを実施。これは従来の酸洗いやブラスト処理を経由する方法に比べ、素材へのダメージが少なく、メッキ厚さの保全も実現します。

 

一方、屋外で6ヶ月以上暴露されたメッキ面には白さび処理が必要になります。白さびは見た目の問題から除去される傾向にありますが、実はメッキの耐食性を損なわない性質があります。ただし、塗装の密着性向上のため、軽くワイヤーブラシで除去し、その後に高性能プライマーを施工することが推奨されています。あらかじめクロメート処理が施されたメッキ面に対しては、この保護被膜の上から直接プライマーを塗装できるため、追加の前処理は不要です。

 

亜鉛メッキにおける塗装の密着性を左右する要因

亜鉛メッキ面への塗装密着性に影響を及ぼす主要因は、メッキ厚さ、表面処理の種類、およびプライマーの性能の三点です。目付量がHDZ45(450g/m²)までの一般的な溶融亜鉛メッキであれば、目荒らし後に2液型エポキシプライマーで施工可能という業界的な基準があります。これより厚いメッキ面、特に厚付けメッキの場合は、メッキ結晶の凹凸が大きくなるため、プライマーの流動性と密着力に差が生じます。クロメート処理がすでに施されたメッキ面は、化学的な結合力が増す一方で、プライマーの浸透性が減少するため、異なるプライマー選定が必要になります。

 

さらに、ウレタン系、シリコン系、ふっ素系などの上塗り塗料の種類によって、プライマーとの相性が異なります。2液型変性エポキシプライマーは、これらほぼすべての上塗り塗料に対応できる多用途性を持つことが特徴です。このため、複数の金属素材が混在する現場では、統一したプライマー選定により工程管理を簡素化できる利点があります。亜鉛メッキ、電気亜鉛メッキ、ステンレス、アルミニウムなど異なる基材が同一構造物に使用される場合、1液タイプの変性エポキシプライマーを採用することで、素材ごとの処理方法の違いを最小限に抑えられます。

 

亜鉛メッキ塗装での環境対応と今後の動向

かつて亜鉛メッキのプライマーとしてはジンククロメート(亜鉛クロメート)やクロムフリー未対応の塗料が主流でしたが、現在は環境規制の強化に伴い、クロムフリー、鉛フリー設計の高性能プライマーへの転換が進んでいます。これらの新世代プライマーは、従来のクロム系防顔料に代わり、無公害防錆顔料を配合することで、環境への負荷を大幅に削減しながらも、同等以上の防錆性能を実現しています。さらに、最新の変性エポキシプライマーには、ホルムアルデヒド放散等級F☆☆☆☆認定品も増え、建築物や工業構造物での採用がより容易になっています。

 

亜鉛メッキへのプライマー選定は、単なる塗装工程ではなく、材料の耐久性、環境対応、工期短縮、作業安全性を総合的に勘案する重要な判断が求められます。弱溶剤系変性エポキシプライマーのように、強溶剤の使用を避けながら高性能を維持する製品も登場し、住宅地での施工環境にも対応する柔軟性が広がっています。現場の基材状態、気象条件、求められる耐久性、上塗り仕様に応じた最適なプライマー選定により、品質と効率を両立させる塗装工程の実現が今後さらに重要になるでしょう。

 

参考情報:ハイポンアクチブプライマーは、新設無処理の溶融亜鉛めっき面に対して高い付着性を維持し、従来必要だった酸洗い、化成皮膜処理、ブラスト処理を不要にする技術情報
https://www.nipponpaint.co.jp/products/building/236/
参考情報:溶融亜鉛メッキ面への塗装方法について、屋外暴露後の白さび除去やプライマー選定の実務的指針
https://www.paint-city.com/faq/detail/1583/
参考情報:亜鉛メッキへの塗装前に検討すべき前処理工程と目付量による施工方法の選定基準
http://mko-kikaku.com/koukyoukouji/kaisyuu/2019/siyou/8setu/aen.htm

 

 


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