有色クロメートの色調は処理条件に大きく影響されます。処理液の濃度、pH値、浸漬時間、処理温度といった複数のパラメータが相互に作用し、最終的な外観を決定します。処理液の濃度が高いほどクロメート皮膜は厚くなり、色が濃くなります。一方、濃度が低い場合には皮膜が薄く、色が淡くなる傾向があります。
浸漬時間は一般的に数秒から数十秒の範囲で設定されます。短すぎると皮膜が不十分になり色が淡くなり、長すぎるとクロメート皮膜が厚くなりすぎて色むらが発生しやすくなります。処理温度は室温で行われることが基本ですが、30~40℃の範囲で施工することで光沢性と着色性の両面で品質向上が期待できます。高い温度を採用すると色の濃さや光沢が向上する一方、乾燥時の脱水反応によって自己修復機能が低下する可能性があります。
pH値の管理は特に重要です。pHが上昇すると皮膜形成反応が鈍化し、結果的に色が淡くなります。逆にpHが低下しすぎると過剰反応が生じ、皮膜が脆化したり基材の亜鉛が過度に溶解して外観不良が発生するリスクが高まります。日々の測定と酸またはアルカリによる微調整が欠かせません。
有色クロメート処理には、六価クロムを使用する方法と三価クロムを使用する方法の2つが存在します。六価クロメートは従来から広く使用されている方法で、強い毒性と発がん性が指摘されているため、RoHS指令やELV規制の対象となっています。六価クロメートは黄色系の鮮やかな色調を呈し、耐食性に特に優れた特性があります。一方、三価クロメートは弱毒性で発がん性がなく、環境規制への対応として近年普及が進んでいます。三価クロメートの外観は青みがかった透明から薄い黄色を示し、六価クロメートに比べて色調の均一性が高いという利点があります。
ただし、三価クロムは熱に弱く、80℃以上の環境では耐食性が著しく劣化するため、使用用途に注意が必要です。さらに、pHが低い環境下では三価クロムが酸化して六価クロムに変化することがあり、三価クロメート製品であっても時間経過とともに六価クロムが検出される現象が報告されています。この変化は保管環境や温度、湿度の影響を大きく受けるため、適切な管理が求められます。
有色クロメート皮膜の最大の特徴は、損傷時に自動的に修復する自己修復機能です。この機能は、クロメート皮膜に微量に含まれた六価クロムの酸化力に由来しています。物理的な損傷やキズが皮膜に生じても、皮膜内に存在する水溶性の六価クロムが溶け出し、下地の亜鉛と化学反応を起こします。この反応により新たなクロメート皮膜が自動的に形成され、腐食の進行を防止するメカニズムが働きます。
自己修復作用の効率は処理条件に大きく依存します。特に乾燥温度が高い場合、脱水反応によってクロメート皮膜中の水分が失われ、六価クロムの可動性が低下して不溶性になります。その結果、自己修復作用は大幅に低減してしまいます。また、皮膜厚さが厚いほど自己修復機能が長期間維持される傾向が見られ、緑色クロメートのような厚い皮膜は優れた長期的な防錆性能を発揮します。六価クロメートに比べて三価クロメートは皮膜内の六価クロム含有量が少ないため、自己修復機能の効果が限定的という課題があります。
六価クロムの毒性と発がん性の懸念から、欧州を中心に環境規制が急速に強化されています。RoHS指令では均質材料中の六価クロム含有率を0.1%以下に制限し、さらに2025年にはEU全域での追加規制案が提案されています。日本でも同様の規制動向が進み、特に自動車部品や電子機器関連の業界では六価クロムフリー対応が急務となっています。
このような背景から、三価クロメートへの切り替えが急速に進んでいます。三価クロメートは六価クロムを含まないため、環境規制への適合性が高く、人体への影響も最小限に抑えられます。しかし、三価クロメートは耐食性や耐熱性が六価クロメートに劣るという課題が残されており、用途によって適切な選択が必要です。業界では三価クロメートの性能向上に関する研究が活発に進められ、六価クロメート並みの性能を持つ三価製品の開発が期待されています。
有色クロメートの外観色調が異なる場合、主な原因は処理液の濃度差、pH値の変動、浸漬時間や処理温度の違いです。同じ条件で処理しても、皮膜厚さのばらつきや光干渉の影響により、色調が微妙に変化することがあります。さらに問題なのは、処理後の乾燥工程や保管環境による色の変化です。乾燥温度が高すぎたり、保管時に高温多湿環境に放置されたりすると、クロメート皮膜の化学組成が変化し、色調のズレや白錆の発生につながります。
品質管理の観点からは、処理液の日々の濃度測定、pH測定、比重測定が必須です。定期的な塩水噴霧試験(JIS Z 2371)により耐食性を確認し、色調の統一性を保つための管理基準を設定します。加えて、処理後の水洗工程の管理も重要で、残留塩素の除去が不十分だと後日のクロメート皮膜の劣化につながります。電子機器や自動車部品といった高品質が要求される用途では、光学的な色調測定機器の導入により、より厳密な色調管理が実施されています。
亜鉛めっきのクロメート処理の現状と将来に関する技術資料(PDF)では、六価クロメート皮膜と三価クロメート皮膜の詳細な比較、処理液組成、自己修復メカニズムについて専門的な解説が記載されています。
三価クロメート処理の基本と応用では、浸漬時間やpH管理、処理条件と色調の関係について実践的な情報が提供されています。

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