ジオメット処理ボルトの防錆性能と活用事例

金属加工現場でボルトの腐食防止は重大な課題です。ジオメット処理はクロムフリーで環境対応しながら、従来のめっき工法を超える防錆性能を実現する技術として注目されています。自動車から建機まで幅広く採用されるジオメット処理ボルトの性能と適用範囲とは何か、検討してみませんか?

ジオメット処理 ボルトの特性と優位性

ジオメット処理ボルトの基本特性
🔩
薄膜で高耐食性を実現

膜厚8~10μm程度の薄膜でありながら、塩水噴霧試験2000時間以上をクリア。厚膜による問題を解決し、ネジ山の埋没を防止

🌍
完全クロムフリー環境対応

六価クロムを含まず、RoHS指令およびREACH規制に完全適合。有害物質(鉛、ヒ素、カドミウム、水銀)を一切不含

水素脆性リスク無し

焼付工程のため酸洗浄が不要。高強度ボルトや小径ボルトの脆化リスク排除で信頼性向上

ジオメット処理ボルトの構造と防錆メカニズム

 

ジオメット処理ボルトの皮膜は、亜鉛フレークとアルミフレークを特殊無機バインダーで結合した積層構造となっています。この層状構造が複数の防メカニズムを生み出します。第一に、亜鉛フレークの犠牲防食作用により鋼素地を保護します。第二に、アルミフレークが防護皮膜として機能し、外部からの腐食因子の侵入を遮断します。この二重防御により、従来の電気亜鉛めっきよりも優れた長期防錆性能が実現されます。

 

膜厚が8μ程度と薄いため、ボルトやナットの嵌合精度が損なわれません。溶融亜鉛めっきは30~50μになるため、ネジ山が埋まる問題が発生しやすいのに対し、ジオメット処理ボルトは均一かつ薄く塗膜が形成されるため、製品の本来の寸法精度を保ちます。また、焼付工程が標準であるため、水素脆性の恐れがなく、高強度鋼材にも安全に適用できます。

 

ジオメット処理ボルトの異種金属接触腐食対策

ガルバニック腐食は、異なる腐食電位を持つ金属が接触する際に発生する電食現象です。亜鉛めっきボルトをアルミパネルに取り付けた場合、亜鉛金属が消費されると素地の鉄が露出し、電位差によってアルミニウムが侵食されます。ジオメット処理ボルトの場合、皮膜の腐食電位がアルミニウムに近く、かつコントロールされた亜鉛の犠牲保護作用を有するため、亜鉛金属の消耗が抑制され、アルミニウムに対する保護効果が長続きします。

 

さらに注目すべき点として、ステンレスボルトに施したジオメット処理は、アルミ材への孔食発生を防止する効果が確認されています。従来のステンレス締結部品では、電位差によってアルミに孔食が生じることがありましたが、ジオメット処理によって腐食電位を調整することで、この問題を根本的に解決できます。自動車の足まわりやハブボルト、塩害環境での使用が求められる部品において、このメリットが大きく評価されています。

 

ジオメット処理ボルトの耐熱性能と高温環境での活用

ジオメット処理ボルトは300℃で8時間の加熱試験をクリアする高い耐熱性を有しています。これは、皮膜に結晶水や有機樹脂を含まないため、熱による劣化が起こりにくいという構造的な特長に基づいています。従来の有機樹脂系塗装やクロメート処理では、100~150℃程度で劣化が始まるのに対し、ジオメット処理ボルトは長時間の高温環境に耐えられます。

 

自動車エンジン部品、排気系部品、工業炉周辺の締結部品など、高温環境での使用が求められる用途では、ジオメット処理が標準的に採用されています。塩害と高温の両方の環境ストレスを受ける部品でも、ジオメット処理ボルトは2000時間以上の塩水噴霧試験をクリアする性能を維持できます。加えて、焼付工程による強固な皮膜形成のため、温度変化による膜剥離や浮きなどの不具合も発生しにくく、長期信頼性が確保されます。

 

ジオメット処理ボルトの処理工程と品質管理

ジオメット処理ボルトの製造工程は、脱脂、ショットブラスト、ディッピング、振り切り、焼付、冷却という流れが基本となります。脱脂では油分や汚れを完全に除去し、皮膜の密着性を確保します。ショットブラストでは表面を粗化し、亜鉛フレークとアルミフレークの付着を最適化します。ディッピングでは処理液に浸漬し、遠心力で余滴を除去することで均一な膜厚を実現します。焼付工程では約300℃で加熱し、無機バインダーを硬化させて強固な皮膜を形成します。

 

膜厚の調整は、コート回数とベイク回数で制御されます。標準的な2コート2ベイク(2C2B)で膜厚8μが得られ、より厚い皮膜が必要な場合は2コート2ベイク1トップコートとすることで対応できます。品質管理の面では、塩水噴霧試験の実施により、規格要件を満たす防錆性能が確保されています。また、膜の均一性と密着性を検査することで、実装後の剥離や浮きなどのトラブルを未然に防ぎます。

 

ジオメット処理ボルトの活用事例と選択基準

ジオメット処理ボルトは自動車業界で最も広範に採用されている表面処理です。特に足まわり部品、ハブボルト、ブレーキ部品、サスペンション部品といった走行安全性に関わる重要部品に採用されています。塩化物による腐食環境でも高い耐食性を発揮し、また水素脆性がないため、高強度等級のボルト(10.9以上)の採用を可能にします。

 

建設機械やダンプトラックなどの重機の部品でも、塩害や泥汚れによる腐食環境でジオメット処理ボルトが活躍しています。さらに橋梁などの土木構造物の締結部品では、環境規制への適合と長期防錆性能の両立が求められるため、ジオメット処理が標準仕様となりつつあります。一方、装飾性が重視される用途や、極めて低コストが優先される場合には、ジオメット処理以外の選択肢も検討されます。用途ごとに防錆性能、耐熱性、環境対応、コストバランスを総合的に判断し、最適な表面処理を選択することが実装上の鍵となります。

 

【基礎中の基礎】ジオメット処理について - 三和鍍金:ジオメット処理の基本特性、処理工程、ダクロ処理との違いについて詳しく解説しており、産業現場での信頼度が高い情報源
GEOMET®(ジオメット)〔水系〕 - ネジめっき・コーティング.com:完全クロムフリーの水系処理液使用、焼付工程の詳細、各種材料への対応、および環境規格への適合について充実した記載

 

 


ウィルコ 国産 鉄 六角ボルト ジオメット M10xL35 2ヶ入 FBT-1035MT