あなたが選んでる溶接棒、実は強度を20%落としてるかもしれません。
TIG溶接棒と母材の組み合わせを誤ると、外観はきれいでも内部が脆くなることがあります。実際に、SUS316L母材に308L棒を使った現場では、半年以内に全面粒界腐食が発生した事例が報告されています。これは「溶接後の酸洗い条件」が304系と異なるためです。つまり材質で選定表をそのまま信じるのは危険です。
一つの目安として、ステンレス系では「耐食性>強度」を重視するのが原則です。熱に強いからといってCr-Ni比が高すぎる棒を選ぶと、後処理費が余計にかかる場合もあります。数字で見れば、1ロットあたり約2万円の薬品費差になることも。経済的にも注意が必要ですね。
実は同じ品番でもメーカーごとにマンガンや珪素の含有が違い、ビード形状が変わることが知られています。特に中国系OEM製品の中には、AWS規格を満たしていてもフラックス残留が基準超過しているケースが3割ほどあります。つまりロット確認が条件です。
現場では、仕上げ検査の前に目視試験と引張検査の簡易チェックをセットで行うとよいでしょう。コストは1回あたり100円以下で済み、後のトラブル防止になります。品質管理のひと工夫ですね。
TIG棒の選定表では、姿勢(下向き・横向き・立向き)を考慮していないものもあります。たとえば横向きで2.4mm棒を使うと溶落ちリスクが約25%上昇します。棒径を1.6mmにし、電流を10A下げるだけで安定性が大幅に改善します。つまり姿勢対応で見直すことが重要です。
同条件でER5356系(アルミ用)でも試すと違いが顕著です。下向き溶接では太径が有利ですが、横向き以上では細径が扱いやすく、仕上がりが滑らかになります。経験則より数値で選ぶほうが確実ですね。
「昔からの選定表」で決めている現場もありますが、実は2023〜2024年で各メーカーカタログの成分指定が変わっています。古い表のまま使うと、酸化被膜の厚さや冷却時間の違いで、溶接後のクラックが発生する確率が約1.8倍になると言われています。更新チェックは必須です。
更新の目安は2年おき。特にステンレス・チタン系では、溶材メーカー(例:神戸製鋼・日鉄溶接工業)のWebで最新版を確認する習慣をつけましょう。公式PDFをダウンロードして保管しておくことが条件です。
材料費だけを見て棒を選ぶと、実は人件費を損している場合もあります。硬化しやすい棒を使うと研磨作業が増え、1日あたり15分程度の追加作業が必要になります。月間で考えると5時間のロス。これは現場3名体制なら時給換算で約1万円の損失です。痛いですね。
この問題の対策は、 TIG溶接棒の「後処理性」も選定条件に加えること。たとえばER5356よりER4043のほうが機械仕上げが容易で、削り時間が40%短縮された事例もあります。短時間で確実に仕上げたい現場では、その差が直接コスト削減につながります。つまり現場効率も選定基準にすべきです。
信頼できる最新規格情報として、神戸製鋼の公式技術資料『TIG溶接棒 製品ガイド』(https://www.kobelco-welding.jp/welding/products.html)では、各材質に対応する棒材の機械的特性・溶融挙動が詳しく掲載されています。溶接効率評価にも有用です。