ワッシャーなんのための役割と種類、効果的な選び方

ワッシャーは単なる座金だと思っていませんか?実は緩み止めや荷重分散など重要な役割を担っています。この記事では、ワッシャーの基本的な役割から専門的な種類、そして効果を最大化する選び方まで解説します。あなたの知らないワッシャーの世界を覗いてみませんか?

ワッシャーはなんのために使うのか

この記事でわかるワッシャーの全て
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基本的な役割

荷重分散や座面保護など、ワッシャーが果たす根本的な役割を学びます。

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種類と特徴

平ワッシャーから特殊なものまで、多種多様なワッシャーを徹底比較します。

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正しい選び方と使い方

材質やサイズ、緩み止め効果を最大化する最適な選定方法と使用法を解説します。

ワッシャーの基本的な役割とは?荷重分散と座面保護の重要性

 


ワッシャーと聞くと、多くの人がボルトやナットの下に敷く薄い金属の輪を思い浮かべるでしょう 。しかし、その小さな部品が締結においていかに重要か、正確に理解しているでしょうか。ワッシャーの最も基本的な役割は「荷重の分散」です 。ボルトやナットを締め付ける際、その力は一点に集中しがちです。特に木材やアルミニウム樹脂のような柔らかい素材母材)の場合、強い力で締め付けると座面が陥没したり、部材を傷つけたりする原因となります 。
ワッシャーを挟むことで、締結力が接触面積全体に均等に分散され、座面にかかる圧力(面圧)を大幅に下げることができます 。これにより、母材の陥没や損傷をぎ、安定した締結状態を長期間維持できるのです。これはまるで、重い荷物を背負うときに、肩に食い込まないように幅の広いベルトを使うのと同じ原理です。
もう一つの重要な役割は「座面の保護」です 。ボルトやナットを回転させて締め付ける際、その頭部やナットの角が直接母材に触れると、摩擦によって母材の表面を傷つけてしまいます。特に塗装された面やデリケートな仕上げが施された面では、この傷が錆や腐食の起点となり、製品全体の寿命を縮めることにもなりかねません。ワッシャーは、回転するボルト・ナットと固定された母材との間で「滑る」役割を担い、締結時の傷を防ぎます。
  • 荷重の分散: 締結力を広い面積に分散させ、母材の陥没や変形を防ぐ。
  • 🛡️ 座面の保護: 締結時の回転による傷や摩耗から母材表面を守る。
  • ⚖️ 締結力の安定化: 平ワッシャーは摩擦係数を安定させ、設計通りの軸力を得やすくする効果もある 。
  • 📏 高さ調整・隙間埋め: 「シム」や「スペーサー」のように、部品間の微細な高さ調整や隙間を埋めるためにも使われる 。

このように、ワッシャーは単なる「座金」ではなく、締結の品質と信頼性を根底から支える縁の下の力持ちなのです。

より詳細なワッシャーの役割については、以下の専門情報が参考になります。

 

鍋屋バイテック会社(NBK)の技術情報:ワッシャー(座金)の役割

ワッシャーの種類と特徴を解説!平ワッシャーとスプリングワッシャーの違い


ワッシャーには非常に多くの種類があり、それぞれ形状や材質、そして目的が異なります 。ここでは、最も代表的な「平ワッシャー」と「スプリングワッシャー」を中心に、その違いと特徴を掘り下げてみましょう。

平ワッシャー(平座金)


最も一般的で、ドーナツ状の形状をしたワッシャーです 。主な目的は前述の通り、「荷重分散」と「座面保護」です 。穴の径に対して外径が大きい「大ワッシャー(ワイドワッシャー)」もあり、特に柔らかい材料に対して接触面積を広く取りたい場合に使用されます 。材質は鋼鉄が一般的ですが、ステンレス真鍮、銅、アルミニウム、樹脂(ナイロン、POM)、ゴムなど多岐にわたります 。絶縁性が必要な場合は樹脂製、耐食性が求められるならステンレス製が選ばれます。

スプリングワッシャー(ばね座金)


輪の一部に切れ込みが入り、ねじれた形状をしているのが特徴です 。英語では "Spring Washer" と呼ばれ、その名の通り「ばねの力」を利用します 。ボルトとナットで締め付けられると、このねじれが押しつぶされて平らになろうとします。その際に生じる反発力(ばね性)が、ナットを常に母材側に押し付ける方向に働き、緩みを防ぐのです 。
さらに、切れ込みの角がボルトの座面と母材に食い込むことで、回転に対する物理的な抵抗(摩擦)を生み出し、緩み止め効果を発揮するとも言われています 。主に振動が発生する箇所での緩み止め対策として使用されます 。
以下の表で、両者の違いをまとめてみましょう。
項目 平ワッシャー スプリングワッシャー
形状 平らな円盤状 一部が切れ、ねじれた形状
主な役割 荷重分散、座面保護 緩み止め
原理 接触面積を増やして面圧を下げる ばねの反発力と食い込みによる摩擦抵抗
主な使用箇所 柔らかい母材、穴径が大きい場合、座面保護が必要な箇所 振動や衝撃がかかる箇所
併用の可否 単体で使用可能 平ワッシャーと併用することが多い(母材→平→ばね→ナットの順)

その他の特殊なワッシャー

  • 歯付座金(ロックワッシャー): 内側または外側に多数の歯があり、これが座面に食い込むことで強力な緩み止め効果を発揮します。ただし、座面を傷つける欠点もあります 。
  • 皿ばねワッシャー: お皿を重ねたような形状で、非常に強いばね反力を発生させることができます。大きな軸力を必要とする箇所に使われます。
  • シーリングワッシャー: 金属ワッシャーにゴム製のパッキンを組み合わせたもの。防水性や気密性を確保したい箇所で使用されます 。
  • リブドロックワッシャー: 放射状のリブ(溝)を持つ高性能ワッシャー。回転ゆるみと非回転ゆるみの両方に高い効果を発揮し、振動の激しい環境で特に有効です 。

これらのワッシャーを適切に使い分けることが、設計の品質を左右する重要なポイントとなります。

ワッシャーの正しい選び方!材質・サイズ・規格で最適な効果を


ワッシャーの効果を最大限に引き出すには、用途に適したものを正しく選ぶことが不可欠です 。選定ミスは、緩みや部品の破損、思わぬ事故につながる可能性もあります。ここでは、ワッシャーを選ぶ上で考慮すべき3つの重要な要素「材質」「サイズ」「規格」について解説します。

1. 材質の選び方


ワッシャーの材質は、使用環境や求める性能によって決まります 。
  • 🔩 鋼 (鉄): 最も一般的で安価。強度がありますが、錆びやすいため、メッキ(ユニクロ、クロメート、ニッケルなど)で表面処理されていることが多いです。屋内での使用が基本です。
  • 🔗 ステンレス (SUS304, SUS316など): 耐食性に優れ、錆びにくいのが最大の特徴です。屋外や水回り、薬品に触れる可能性がある場所で使用されます。SUS316は特に耐食性が高いです。
  • 💡 アルミニウム: 軽量で非磁性。電気伝導性も良いため、電気系統の部品に使われることもあります。
  • ⚙️ 銅: 電気伝導性と熱伝導性に優れています。アース接続部や熱が発生する箇所で利用されます。
  • 🛡️ 樹脂 (ナイロン, ポリアセタール/POM, PEEKなど): 絶縁性が必要な場合に最適です。軽量で、相手材を傷つけにくいメリットもあります。耐薬品性や耐熱性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチック製のものもあります 。
  • 🧱 ゴム (NBR, EPDM, シリコンなど): 防水、防振、気密保持の目的で使われます 。耐油性が必要ならNBR、耐候性ならEPDMといったように、使用環境に合わせてゴムの種類を選びます。

2. サイズの選び方


サイズは「呼び径」「外径」「厚さ」の3つの寸法で決まります。
  • 呼び径: 使用するねじの直径(M4, M6など)に合わせます。ワッシャーの内径は、ねじがスムーズに通るように、呼び径よりも少し大きく作られています。
  • 外径: 荷重を分散させたい面積によって選びます。柔らかい母材に使う場合は、外径の大きい「大ワッシャー(ワイドワッシャー)」を選定します。
  • 厚さ: 厚いほど強度が増し、荷重分散効果も高まります。また、高さ調整(シム)として使う場合は、必要な厚さを精密に選ぶ必要があります。

3. 規格の選び方


ワッシャーは、JIS(日本産業規格)によって寸法や材質が標準化されています。これにより、どのメーカーの製品でも互換性が保たれています。
  • JIS B 1256 (平座金): 最も一般的な平ワッシャーの規格です。並形、小形、大形などの種類があります。
  • JIS B 1251 (ばね座金): スプリングワッシャーの規格です。2号(一般的なもの)や3号(重荷重用)などがあります 。

設計や部品選定の際には、これらの規格番号を確認することで、意図した通りのワッシャーを確実に入手できます。母材の硬度よりワッシャーの硬度が高すぎると母材を傷つける可能性があるため、材質の強度バランスも考慮に入れることが重要です 。

意外と知らないワッシャーの語源と歴史!なぜ"washer"と呼ばれるのか?


毎日何気なく使っている「ワッシャー」という言葉ですが、その語源を考えたことはありますか?実は、この言葉の由来には面白い背景があります。ワッシャーは英語で "washer" と書きますが、これは "wash"(洗う)という動詞から来ています 。なぜ「洗うもの」が、あの金属の輪を指すようになったのでしょうか。
この語源には諸説ありますが、有力な説は「分離する」という機能に由来するというものです 。14世紀頃の英語で "washer" という言葉は、もともと洗濯をする人や洗濯機を指していました 。洗濯という行為は、汚れと衣服を「分離」し、また色の違う洗濯物同士を「分離」して洗うプロセスを含みます。
一方、締結部品としてのワッシャーも、ボルトやナットといった「締結部品」と、締め付けられる「母材」との間に挟み込まれ、両者が直接接触するのを防ぎます。つまり、2つの異なる要素を「分離する」バリアとしての役割を果たしているのです 。この機能的な類似性から、「分離するもの」という意味合いで "washer" という名前が定着したと考えられています。
別の視点では、水密性を保つために使われる革製のパッキンがワッシャーの原型であり、それが「水(water)」に関連することから来ているという説もあります。いずれにせよ、単なる金属の輪ではなく、そこには「何かと何かを隔てる」という重要な概念が込められているのです。
  • 🤔 語源: "wash"(洗う)から来ており、「分離する」という機能が語源という説が有力 。
  • 📖 歴史: ワッシャーの歴史はねじの歴史と共に古く、産業革命以降、機械生産が活発になるにつれて、締結の信頼性を高める部品として広く使われるようになりました。
  • 🌍 日本語では「座金」: 日本語では「座金(ざがね)」と呼ばれます 。これは、ボルトやナットの「座面」に当てる「金属」であることから来ており、その機能を非常に的確に表した言葉と言えるでしょう。

普段使っている部品の語源や歴史を知ることで、その役割への理解がさらに深まり、仕事への愛着も湧いてくるかもしれませんね。

ワッシャーの緩み止め効果を最大化する使い方と注意点


ワッシャー、特にスプリングワッシャーや歯付座金は、「緩み止め」を期待して使われることが多い部品です 。しかし、その効果を正しく理解し、適切に使わなければ、期待した性能を発揮できないばかりか、逆効果になることさえあります。ここでは、緩み止め効果を最大化するための使い方と、知っておくべき注意点を解説します。

スプリングワッシャーの正しい使い方


スプリングワッシャーは、そのばねの反発力で緩みを防ぎます 。この効果を確実に得るためのポイントは、適切な「締結順序」と「締付けトルク」です。
  • 正しい順序: 母材を傷つけないために、平ワッシャーと併用するのが一般的です。その際の順序は**「ボルト頭 → スプリングワッシャー → 平ワッシャー → 母材」**または**「母材 → 平ワッシャー → スプリングワッシャー → ナット」**となります 。平ワッシャーが母材を保護し、スプリングワッシャーがナット(またはボルト頭)に直接作用する形です。
  • 適切なトルク管理: スプリングワッシャーは、完全に押しつぶされるまで締め付けないと、ばねの反発力が十分に働きません。トルク不足は緩みの原因になります。逆に、過剰なトルクはボルトの破損につながるため、規定のトルクで締め付けることが重要です。

スプリングワッシャーの効果に関する議論と注意点


実は、スプリングワッシャーの緩み止め効果については、専門家の間でも議論があります。NASA(アメリカ航空宇宙局)の技術標準では、振動環境下での緩み止め効果は限定的であるとして、その使用を推奨していないという話は有名です。
  • ⚠️ 繰り返し使用の禁止: スプリングワッシャーは一度締め付けるとそのばね性が大きく低下します。分解・再組立を行う箇所で再利用すると、新品時のような緩み止め効果は期待できません 。必ず新品に交換しましょう。
  • ⚠️ 軸力低下の可能性: 締め付けた後、部材のなじみやへたり(座面陥没)によって軸力が低下すると、スプリングワッシャーの反発力も失われ、緩み止めの機能を果たせなくなることがあります。これを「非回転ゆるみ」と呼びます 。
  • ⚠️ 激しい振動下での効果: 非常に激しい振動や衝撃が加わる環境では、スプリングワッシャーだけでは緩みを完全に防ぎきれない場合があります。

より確実な緩み止め対策


絶対的な信頼性が求められる箇所では、スプリングワッシャーよりも高性能な緩み止め部品の採用を検討すべきです。
  • リブドロックワッシャー: ボルトの回転方向とは逆向きのカム(リブ)が強力なウェッジ(くさび)効果を生み出し、回転ゆるみを物理的にロックします。振動に非常に強く、回転ゆるみと非回転ゆるみの両方に効果的です 。
  • 歯付座金: 座面に食い込むことで高い摩擦抵抗を生みますが、座面を傷つけるため、外観が重視される箇所には向きません。
  • 緩み止めナット: ナイロンリングが挿入されたUナットや、ばね鋼プレートが付いたハードロックナットなど、ナット自体に緩み止め機能を持たせたものも非常に効果的です。
  • 嫌気性接着剤(ねじロック): ねじ部に塗布し、空気から遮断されることで硬化する液体。ねじの隙間を埋めて固着させ、緩みと錆びを同時に防止します。

以下のリンクでは、様々なワッシャーの緩み止め効果が比較検証されており、非常に参考になります。

 

Bossard Technical Information: ねじゆるみ止め


結論として、スプリングワッシャーは万能の緩み止めではありません。その特性と限界を理解し、使用環境や求められる信頼性レベルに応じて、より適切な緩み止め方法を選択することが、プロの金属加工技術者として非常に重要です。

 

 


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