耐溶剤性試験JISで塗膜品質と判定基準を正しく知る

耐溶剤性試験のJIS規格(JIS H8602・JIS K5600)を正しく理解できていますか?試験方法・合格基準・よくある失敗まで、金属加工に携わる方が知っておくべきポイントを詳しく解説します。

耐溶剤性試験JISの試験方法と判定基準を正しく理解する

キシレンで30回こするだけで、塗膜が鉛筆硬度1段階以上落ちると全ロット失格になります。


この記事のポイント3つ
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JIS規格の種類と使い分け

耐溶剤性試験に関するJIS規格は複数あり、JIS H8602(アルミ陽極酸化塗装)とJIS K5600(塗料一般試験)では試験方法と合格基準が異なります。

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試験の具体的な手順と判定条件

キシレン含浸の脱脂綿で30往復こすり、試験前後の鉛筆硬度を比較します。低下が1単位以内であれば合格です。

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現場で起きやすい失敗と対策

乾燥時間の不足、溶剤の選定ミス、試験片の養生条件の見落としなど、よくある失敗のポイントと回避策を紹介します。


耐溶剤性試験JISの概要と対象となるJIS規格の種類



耐溶剤性試験とは、塗膜や表面処理皮膜が特定の溶剤にさらされたとき、どの程度その性能を維持できるかを評価する試験です。金属加工の現場では、加工油・洗浄溶剤・塗装工程で使う各種シンナーなど、多種多様な溶剤が日常的に扱われます。そのため、塗膜の耐溶剤性を定量的に確認しておくことは、品質保証の根幹と言えます。


JIS規格における耐溶剤性試験の代表的な規格は2つです。



















規格番号 名称 主な対象
JIS H8602:2010 アルミニウム及びアルミニウム合金陽極酸化塗装複合皮膜 アルミ・アルマイト+塗装品
JIS K5600-6-1:2016 塗料一般試験方法 第6部 塗膜の化学的性質 第1節 耐液体性(一般的方法) 鋼・ブリキ・アルミ・ガラス等への塗装


JIS H8602は、アルミ製品にアルマイト(陽極酸化)処理を施し、その上に塗装した「複合皮膜」を対象としています。建築用アルミサッシや産業用アルミ部材など、見た目と耐久性の両方が求められる製品に多く適用されます。一方のJIS K5600は、鋼材を含む幅広い素材への塗膜を対象とした汎用規格で、自動車部品・産業機械・電気機器など、金属加工全般に関わる現場で参照されます。


重要なのは、規格ごとに試験方法と合格基準が明確に異なる点です。自社製品に適用すべき規格を混同すると、間違った試験条件で評価してしまうリスクがあります。まず対象規格の確認が原則です。


JIS H8602:2010 アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化塗装複合皮膜の全文(kikakurui.com)


耐溶剤性試験JIS H8602の具体的な試験手順と合格基準

JIS H8602で規定される塗膜の耐溶剤性試験(6.7項)は、次の手順で行います。



  1. 試験前に、JIS K5600-5-4(引っかき硬度・鉛筆法)に従って塗膜の鉛筆硬度を測定する。同一硬度の鉛筆で5回試験し、4回以上傷つかなかったときの硬度を採用する。

  2. JIS K8271に規定するキシレンを含ませた脱脂綿で、塗膜面を約1秒に1往復の速度で30回往復させて軽くこする。

  3. こすった後、30分間放置する。

  4. ふたたびJIS K5600-5-4に従って鉛筆硬度を測定し、試験前後の変化を比較する。


合格基準は「試験前後の鉛筆硬度の低下が、JIS K5600-5-4の6.2に規定する硬度スケールで1単位以下」です。


鉛筆硬度のスケールは、柔らかい順に「6B・5B・4B・3B・2B・B・HB・F・H・2H・3H・4H・5H・6H」の14段階で表されます。たとえば試験前の硬度が「H」であった場合、試験後に「F」または「HB」まで下がると「1段階低下」となり、これが許容限界です。試験後に「B」まで落ちてしまうと2段階低下となり、不合格になります。


ここで見落とされやすいのが試験前の養生時間です。JIS H8602の6.1(一般事項)には「試験片を採取する製品は、通常、塗装後24時間以上室内に放置する。ただし、常温乾燥形塗料を用いた製品は、塗装後48時間以上放置することが望ましい」と明記されています。乾燥が不十分なまま試験すると、通常は問題ない塗膜でも硬度低下が大きく出てしまい、不合格の誤判定につながります。乾燥時間の確保が条件です。


また、試験環境についても規格では「常温(5〜35℃)・常湿(45〜85%相対湿度)」が前提とされています。夏の高温多湿な工場内での試験や、冷え込む冬季の屋外倉庫での試験は、条件を外れる可能性があります。季節によって試験環境が変化する場合は、恒温恒湿室での実施、または環境計測の記録を残すことが推奨されます。


JIS K5600-5-4:1999 引っかき硬度(鉛筆法)の規格全文(kikakurui.com)


耐溶剤性試験JIS K5600-6-1の試験方法と4つの試験手順

JIS K5600-6-1は「耐液体性(一般的方法)」として、塗膜の耐溶剤性評価に広く使用されます。この規格には4種類の試験方法が規定されており、試験の目的や対象物の形状に応じて選択します。



  • 🧪 方法1(浸せき法):試験片を溶剤に完全または半分浸漬する方法。最も一般的で、塗膜への液体の浸透・膨潤・軟化を総合的に評価できる。

  • 🧲 方法2(吸収媒体法):溶剤を含ませた圧縮板紙などを塗膜に接触させる方法。特定の部位への局所的な影響を評価するのに向いている。

  • 💧 方法3(点滴法):塗膜面に溶剤を点滴し、一定時間後に外観変化を観察する方法。手軽に実施できるが、評価は主に外観に限られる。

  • 🌡️ 方法4(温度勾配加温法):温度を変化させながら塗膜への影響を見る方法。高温環境下での溶剤接触を想定した場合に使用する。


この規格での判定は、試験後の塗膜を観察し「膨れ」「変色」「軟化」「はがれ」などの外観変化および物性変化を評価します。試験終了後はJIS K5600-8-2に従って膨れの等級を判定し、必要に応じてさらに24時間の「回復期間」を置いてから再評価します。この24時間回復という手順は、特に溶剤が揮発性の高い液体である場合に重要で、溶剤が蒸発することで一時的に変化した外観が回復することがあるためです。


試験温度はほかに規定がなければ「23±2℃」が標準です。試験片の乾燥は、特に指定がなければ「温度23±2℃、相対湿度50±5%で少なくとも16時間の静置」が必要とされています。これは日常の製品検査で省略されがちなステップですが、養生不足のまま試験を行うと塗膜の本来の性能が発揮されず、正確な評価が得られません。養生時間は必須です。


どの試験方法を使うかは受渡当事者間の協定によることが多いですが、検収条件に明記されていない場合にトラブルになるケースがあります。発注仕様書や検査仕様書に「JIS K5600-6-1 方法○」と具体的な番号まで記載しておくことで、認識の齟齬をぐことができます。


JIS K5600-6-1:2016 耐液体性(一般的方法)の規格全文(kikakurui.com)


耐溶剤性試験JISで見落とされやすい落とし穴と対策

現場で耐溶剤性試験を実施するとき、規格の文面を読むだけでは気づきにくい落とし穴がいくつかあります。知らないと損します。


① キシレンの品質(試薬グレード)が試験結果に影響する


JIS H8602の6.7項では、使用するキシレンを「JIS K8271に規定するキシレン(試薬)」と明記しています。試薬グレードのキシレンとは、純度保証された分析用の試薬であり、工業用キシレンとは区別されます。工業用キシレンには不純物や添加物が含まれることがあり、塗膜への攻撃性が試薬グレードと異なる場合があります。手元にある工業用溶剤で代用すると、意図せず試験条件を外れてしまう可能性があります。試薬グレードのキシレンが条件です。


② こする速度・回数・圧力の再現性が意外に難しい


「約1秒間に1回の速度で30回往復」という動作は、手かき法で実施する場合に作業者によってバラつきが出やすいポイントです。試験機を使わない手かき法では、力の入れ具合・速度・ストロークの長さが一定にならないことがあります。JIS K5600-5-4には機械式の引っかき硬度試験機を使う方法も規定されており、再現性が求められる品質保証の場面では機械式の使用が推奨されます。


③ 試験片の寸法規定を守らないと評価部位がずれる


JIS H8602の6.2.2項では、試験片の寸法を「長さ150mm×幅70mm」と規定しています。これはほぼはがきのサイズ(100mm×148mm)より少し縦に細い形状です。製品から直接試験する場合は製品形状がこれに近いことが求められ、小さすぎる試験片では規定の評価領域が確保できず、端部効果の影響が出ます。製品から試験片を切り出せないときは、同じ材料・同じ処理条件で作成した試験片を使うことが認められています。


④ 判定を誤りやすい「1単位以下」の解釈


「1単位以下」というのは、「1段階の低下まで許容する」という意味です。変化なし(0段階)と1段階低下がともに合格で、2段階以上の低下が不合格です。この「以下」の解釈を「未満」と誤解し、「1段階でも落ちたら不合格」と判断してしまうと、本来は合格品を不合格扱いにしてしまいます。以下と未満の違いに注意すれば大丈夫です。


⑤ 塗装工程の変更後に再試験を行わないケース


塗料メーカー・塗料ロット・焼付条件(温度・時間)・下地処理が変わると、塗膜の耐溶剤性は変化することがあります。金属加工の現場ではコスト低減や調達先変更が頻繁に行われますが、そのたびに耐溶剤性試験を実施している企業は意外に少ないとされています。工程変更後の初期確認試験を習慣化しておくことで、後工程でのクレームや手直しコストの発生を防ぐことができます。


JFEテクノリサーチ:塗膜評価技術の一覧(耐溶剤性を含む受託試験の概要)


耐溶剤性試験JISと他の塗膜評価試験との組み合わせ活用法

耐溶剤性試験は単独で使うよりも、他の塗膜試験と組み合わせることで、より実態に近い品質評価ができます。これは意外ですね。


金属加工の現場で塗膜に要求される性能は「硬さだけ」「溶剤への耐性だけ」ではありません。実際の使用環境では、溶剤への接触・機械的な摩耗・衝撃・湿潤・腐食が複合的に作用します。JFEテクノリサーチが公開している塗膜評価技術の一覧では、耐溶剤性(JIS K5600)のほかに、付着性・耐衝撃性・耐水性・耐薬品性・耐食性などが並列的に列挙されており、これらを組み合わせて評価することが推奨されています。


以下に、耐溶剤性試験と組み合わせると効果的な評価試験を整理します。





























組み合わせる試験 JIS規格 評価内容
付着性試験(クロスカット法) JIS K5600-5-6 塗膜が素地に密着しているかを碁盤目パターンで確認
引っかき硬度試験(鉛筆法) JIS K5600-5-4 耐溶剤性試験の前後測定に直接使用する試験
塩水噴霧試験 JIS Z2371 腐食環境への耐性(防性)の確認
沸騰水碁盤目試験 JIS H8602 6.6.2 高温水への曝露後の付着性確認


特に注目したいのは「付着性試験と耐溶剤性試験のセット運用」です。塗膜が溶剤接触後に軟化しても、素地への密着性が高ければダメージが塗膜内部に留まりやすく、性能低下が最小限になるケースがあります。逆に、溶剤接触前から付着性が低い(クロスカット分類2〜3)塗膜は、溶剤が浸入してさらに剥離が進む複合的な劣化を起こすことがあります。


また、塗料メーカーのデータシートには耐溶剤性の評価結果が記載されていることが多いですが、それは特定の試験条件(たとえば浸漬法・23℃・24時間)での結果です。自社の使用環境が60℃以上の洗浄溶剤だったり、点滴ではなく長時間浸漬になる工程だったりする場合は、カタログ値をそのまま採用せず、実使用条件を再現した追加試験の実施が推奨されます。実使用条件が基準です。


試験を第三者機関に委託することも選択肢の一つです。JFEテクノリサーチやJCII(化学研究評価機構)などの受託試験機関では、JIS規格に準拠した耐溶剤性試験を含む塗膜評価を一括して依頼できます。自社に試験設備がない場合や、公的機関の試験成績書が取引先から求められる場合に活用できます。


一般財団法人 日本塗料検査協会:引っかき硬度(鉛筆法)試験の概要ページ






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