耐食性試験JISの種類と判定基準を金属加工で活かす方法

耐食性試験のJIS規格には、塩水噴霧・めっき・ステンレス向けなど複数の種類があります。判定基準や試験時間の目安、現場でよくある誤解まで解説。あなたの現場では正しく活用できていますか?

耐食性試験JISの種類と現場での正しい活用法

塩水噴霧試験240時間をクリアしても、実際の屋外では1年も持たないケースがあります。


耐食性試験JIS:3つのポイント
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代表規格はJIS Z 2371

塩水噴霧試験の基本規格。中性・酢酸酸性・キャス試験の3種類を規定し、めっきや表面処理品の耐食性評価に広く使われます。

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240時間=屋外1年換算の落とし穴

「240時間合格=1年耐久」は目安にすぎません。海岸近くの環境では腐食速度が大幅に変わり、試験結果と実環境が一致しないことがあります。

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JIS規格は1本じゃない

めっき向けはJIS H 8502、ステンレス向けはJIS G 0572~G 0591など用途別に規格が分かれており、現場で使う規格を間違えると評価自体が無効になります。


耐食性試験JISの主な種類と対象材料

耐食性試験のJIS規格は、対象とする材料や試験目的によって細かく分類されています。金属加工の現場でよく登場する規格を整理すると、大きく3系統に分かれます。


まず最も広く使われるのがJIS Z 2371「塩水噴霧試験方法」です。 これはISO 9227を基に作成された規格で、金属材料・めっき・無機皮膜・有機皮膜を施した金属材料すべてに適用されます。中性塩水噴霧試験(NSS)、酢酸酸性塩水噴霧試験(ASS)、キャス試験(CASS)の3種類の連続噴霧試験方法を規定しています。 kmtl.co(https://www.kmtl.co.jp/service/tests/salt-spray-test)


次に、めっき専用として存在するのがJIS H 8502「めっきの耐食性試験方法」です。 電気めっき・無電解めっき・気相めっき・溶融めっきなど、あらゆるめっきを対象としています。塩水噴霧だけでなく、二酸化硫黄ガス試験・硫化水素ガス試験・塩素ガス試験など、ガス腐食試験も包含している点が特徴です。 jp.misumi-ec(https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/surface_treatment_technology/st01/c1663.html)


ステンレス鋼を扱う現場では、さらに専用規格が存在します。


JIS規格番号 試験名称 主な対象
JIS G 0572 硫酸・硫酸第二鉄腐食試験 ステンレス鋼全般
JIS G 0573 65%硝酸腐食試験 ステンレス鋼全般
JIS G 0575 硫酸・硫酸銅腐食試験 ステンレス鋼全般
JIS G 0576 応力腐食割れ試験 ステンレス鋼全般
JIS G 0578 塩化第二鉄腐食試験 ステンレス鋼全般
JIS G 0591 硫酸腐食試験 ステンレス鋼全般(非酸化性酸評価)

kmtl.co(https://www.kmtl.co.jp/service/tests/corrosion)


どの規格を選ぶかは材料と目的次第です。ステンレス鋼に対してJIS Z 2371だけを実施し「合格」と判断するのは、規格選定そのものが不適切な場合があります。これは知らないと検査コストを無駄にするリスクに直結します。つまり、材料に合った規格を選ぶことが原則です。


参考:腐食試験の種類とJIS規格一覧(神戸工業試験場)
https://www.kmtl.co.jp/service/tests/corrosion


耐食性試験JISの試験時間と判定基準の読み方

試験時間についての誤解が現場で多く見られます。JIS Z 2371では推奨試験時間として、2時間・6時間・24時間・48時間・96時間・168時間・240時間・480時間・720時間・1,000時間が定められています。 ただし「この時間で試験すれば合格」という意味ではありません。 evoltech-shiken(https://evoltech-shiken.com/column/353/)


試験時間はあくまで製品規格や当事者間の取り決めで決まります。JIS Z 2371自体は試験方法の規格であり、合否の判定基準は規定していません。 判定基準は別途、各製品規格(JIS H 8617ニッケルめっきなど)や顧客仕様書に記載されています。これは重要なポイントです。 kikakurui(https://kikakurui.com/z2/Z2371-2015-01.html)


めっきの場合、合否は「レイティングナンバー(RN)」で評価されます。 JIS H 8617のニッケルめっきでは「素地金属の腐食欠陥がレイティングナンバー9以上」が合格条件です。RNは10段階で、10が完全無欠陥、8以下は錆発生面積が1%超を意味します。つまり1%でも錆が出たら不合格になりえます。 sanwa-p.co(https://www.sanwa-p.co.jp/faq/detail3949.php)


- RN 10:欠陥なし(面積0%)
- RN 9:欠陥面積0.1%以下
- RN 8:欠陥面積0.1〜0.25%
- RN 7以下:欠陥面積0.25%超


厳しいですね。視覚で「ほとんど錆びていない」と感じても、RN 8で不合格になる可能性があります。現場判断と規格判定のズレは、顧客クレームや納品トラブルに直結するリスクです。判定はRNの数値で行うことが条件です。


参考:塩水噴霧試験の判定基準と評価項目(エヴォルテック)
https://evoltech-shiken.com/column/353/


塩水噴霧試験240時間と屋外暴露の相関:現場が信じやすい誤解

「塩水噴霧試験240時間=屋外1年の耐久性」という換算式を、そのまま品質保証に使っている現場は少なくありません。これは大きな誤解です。


この換算の根拠は、日本ウエザリングテストセンターの「促進暴露試験ハンドブック」です。 千葉県銚子と新潟県直江津での屋外大気暴露1年間の腐食量と、塩水噴霧試験240時間の腐食量がほぼ同等だったというデータに基づいています。ただし「腐食形状が異なる」という但し書きがあり、厳密には同一の結果ではありません。 evoltech-shiken(https://evoltech-shiken.com/column/353/)


実際の環境では条件が大きく異なります。 cabinet-box(https://www.cabinet-box.jp/userfiles/2021.11.12ensui%20bakuro.pdf)


- 海岸から300m以内の環境:暴露1ヶ月で一般屋外の数年分の腐食が進むことがある
- 工場内の化学物質雰囲気:塩水噴霧では再現できない腐食形態が発生する
- 結露が繰り返す屋内環境:連続噴霧試験よりサイクル試験(CCT)の方が実態に近い


特にCCT(複合サイクル試験)は、塩水噴霧と乾燥・湿潤のサイクルを組み合わせた試験方法で、実際の腐食機構に近いとされています。 連続噴霧のJIS Z 2371だけを根拠に「10年保証」などの品質説明をすると、後で大きなクレームリスクになります。これは使えそうな知識ですね。 jfe-tec.co(https://www.jfe-tec.co.jp/tech-consul/main08.html)


参考:長期暴露試験と促進試験の相関(J-Stage・表面技術)


耐食性試験JISでの試験片の作り方と見落とされがちな前処理条件

試験結果の信頼性は、試験片の作り方で大きく変わります。この点は検索上位の記事でほとんど触れられていない盲点です。


JIS Z 2371では、試験片の前処理について「試験前に適切な方法で洗浄する」と規定していますが、具体的な洗浄方法は試験当事者に委ねられています。 この「適切な方法」の解釈次第で、同じ材料でも試験結果が変わることがあります。たとえば指紋の皮脂が付着したままの試験片は、皮脂が一時的な保護皮膜となり、耐食性が実態より高く評価されるケースがあります。 kmtl.co(https://www.kmtl.co.jp/service/tests/salt-spray-test)


試験片の切断端面(カット部)も見落とされやすいポイントです。 切断による加工変質層は腐食の起点になりやすく、塗装品では端面から優先的に錆が進行します。端面を評価対象に含めるかどうかを、試験前に明確にしておく必要があります。 cabinet-box(https://www.cabinet-box.jp/userfiles/2021.11.12ensui%20bakuro.pdf)


試験片の置き方も規格で定められています。


- 傾斜角度:試験槽内で垂直から15〜30度の傾きで配置
- 間隔:試験片同士の塩水滴の干渉をぐため、適切な間隔を確保
- 試験片面積:試験槽の有効面積の50%を超えないようにする


これらの条件を守らないと、試験結果の再現性が低下します。試験機関に依頼する場合でも、試験片の前処理状態を依頼者側で管理することが原則です。試験片の状態管理が条件です。


耐食性試験JISの結果を取引先への品質証明に活用する実務ポイント

試験結果を取引先への品質証明書として活用する際、記載すべき情報が決まっています。知っておくと、クレーム対応や受注時の交渉で大きく役立ちます。


品質証明書に最低限記載すべき事項は以下の通りです。 kmtl.co(https://www.kmtl.co.jp/service/tests/salt-spray-test)


- 試験規格番号(例:JIS Z 2371:2015)
- 試験の種類(中性塩水噴霧試験、キャス試験など)
- 試験時間(例:240時間)
- 試験槽温度・塩水濃度・pH値
- 判定基準(レイティングナンバーや評価面積)
- 判定結果(合否)
- 試験実施機関名と試験日


規格番号だけ書いて「合格」と記載する証明書は不十分です。特に自動車部品・電機部品・建材向けでは、顧客側の受け入れ基準が製品規格に上乗せされていることが多く、事前確認が必要です。意外ですね。


試験を外部機関に依頼する場合、埼玉県産業技術総合センターなど公設試験機関を活用すると、コストを抑えながら公的な試験成績書を取得できます。 民間試験機関と比べて費用が低く設定されていることが多く、中小の金属加工業者にとってメリットが大きいです。試験成績書の取得先を選ぶ際の比較検討先として、公設試験機関は必須です。 pref.saitama.lg(https://www.pref.saitama.lg.jp/saitec/iraishiken/komokuichiran/hyomenshori/funmu240.html)


参考:中性塩水噴霧試験の依頼先(埼玉県産業技術総合センター)
https://www.pref.saitama.lg.jp/saitec/iraishiken/komokuichiran/hyomenshori/funmu240.html


参考:めっきの耐食性試験方法(ミスミ・JIS H 8502解説)
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/surface_treatment_technology/st01/c1663.html