集光型太陽熱発電(CSP)の最大の特徴は、溶融塩を使用した蓄熱システムによって24時間継続的な発電が可能な点です 。従来の太陽光発電とは異なり、昼間に蓄積した熱エネルギーを夜間に利用して発電できるため、安定的な電力供給を実現します 。
参考)https://www.jepoc.or.jp/tecinfo/library.php?_w=Libraryamp;_x=detailamp;library_id=262
蓄熱システムは溶融塩(Solar salt)を用いた熱貯蔵技術で、昼間に約565℃まで加熱された高温の溶融塩が高温タンクに蓄えられます 。夜間の発電時には、この高温の溶融塩を使用して蒸気を製造し、温度が約290℃まで下がった後に低温タンクに移されます 。このシステムにより、Gemasolar発電所では15時間の蓄熱能力を有し、年間稼働率が約75%という高い数値を達成しています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaesjb/54/12/54_810/_pdf
パラボリックトラフ型の場合は7〜8時間の蓄熱が標準的で、これにより収益性の鍵となる50%以上の稼働率を実現します 。発電タワー方式ではより効率的で、10〜15時間の蓄熱が可能となっています 。
参考)https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2022/FR/CRDS-FY2022-FR-03/CRDS-FY2022-FR-03_20108.pdf
集光型太陽熱発電システムの発電効率は、従来の太陽光発電システムと比較して大幅に向上しています 。タワー集光型では発電端効率が2倍以上となり、太陽電池の単位面積当たりでは約1,400倍の発電量を得ることができます 。
参考)https://www.jfe-eng.co.jp/news/pdf/20110804.pdf
パラボリックトラフ型では、放物面鏡で反射した光を集熱管で約96%を熱エネルギーに変換し、システム効率は15%程度を達成します 。タワー型はトラフ型よりも高温の蒸気を作り出すことができるため、タービン効率を上げてより多くの電力を得ることが可能で、システム効率は20〜35%になると見られています 。
参考)https://www.nedo.go.jp/content/100544820.pdf
高度な集光技術により、パラボラ・ディッシュ型では数千℃の高温が得られるため、金属加工分野での応用においても大きな可能性を秘めています 。集光集熱の仕組みにより、太陽光を効率的に熱エネルギーに変換し、従来の発電方式と同様の蒸気タービンシステムを活用できます 。
参考)太陽熱発電 - Wikipedia
集光型太陽熱発電のコスト競争力は近年著しく向上しており、MENA地域では0.073 USD/kWhという水準の24時間CSP発電が実現されています 。チリの競売では0.05 USD/kWh以下の競売価格が提示され、地域によってはさらに低い販売価格が可能と考えられています 。
日中の発電コストが安いPVと組み合わせることで、発電コストは平均0.04〜0.06 €/kWhまで下がると試算されています 。国立再生可能エネルギー研究所(NREL)の報告では、2030年にはCSP単独でもLCOE(平準化電力コスト)として0.04〜0.055 USD/kWhが達成されるシナリオが示されています 。
パラボリックトラフ型は高度な集光技術が不要で構造が単純であるため、他の太陽熱発電技術と比較してシステム価格が安価であるという特長があります 。1980年代からアメリカのカリフォルニア州で商用運転の実績があり、技術が確立していて信頼性が高いことから、現在このタイプが主流となっています 。
参考)1字違いでも、大きな違い! 太陽熱発電と太陽光発電 href="https://shizen-hatch.net/2019/10/18/solar-thermal-power-generation-and-solar-power-generation/" target="_blank">https://shizen-hatch.net/2019/10/18/solar-thermal-power-generation-and-solar-power-generation/amp;#82…
集光型太陽熱発電技術は、金属加工業界において革新的な応用が期待されています。フランスの太陽炉プロジェクトでは、太陽熱エネルギーのみを使用して鋼鉄を溶解・リサイクルする世界初の工業プロジェクトが進められています 。このソーラー炉は2枚の巨大な鏡(平面と凹面)で太陽光を集光し、炉内で約2,000℃に達する熱エネルギーを生み出します 。
参考)“エネルギー効率50%以上!”太陽炉技術の現状【2025年版…
鋼鉄の融点は約1,400〜1,700℃ですが、このシステムは十分それを上回る温度に到達し、年間最大400トンのリサイクル鋼を太陽エネルギーのみで溶解処理できる見込みです 。2021年末にはフランス・オーディオ太陽炉で初の鋼塊溶解試験に成功し、2023年から本格稼働を開始する計画が実現されています 。
集光型太陽熱発電プラントの受光部であるレシーバの伝熱管には、高温強度と耐高温腐食性が求められるため、ニッケル基合金管や日本製鉄開発鋼であるボイラ用ステンレス鋼管SUPER304H®が使用されています 。これらの金属材料技術により、高温環境下での安定的な運転が可能となります 。
参考)https://www.nipponsteel.com/common/secure/company/publications/quarterly-nipponsteel/pdf/2022_11_08-13.pdf
集光型太陽熱発電は、再生可能エネルギーの中でも特に環境負荷の低減に大きく貢献する技術です。太陽熱は利用しても減少しないため、太陽光や風力、地熱、バイオマスと同様に再生可能エネルギーの一つであり、地球温暖化対策として注目されています 。
参考)太陽熱発電とは?メリットや仕組みを解説!太陽光発電との違いも…
世界中で二酸化炭素の排出を抑制するために、再生可能エネルギーによる発電の需要が大幅に増加しており、太陽熱発電は安価でエネルギーコストを削減できることから、再生可能エネルギーの中でも主流の発電源となっています 。燃料や電力を使わず太陽光だけで金属加工を行う画期的な取り組みにより、エネルギーコストと環境負荷の大幅低減が期待されています 。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002047.000071640.html
CSP市場は2015年から2020年にかけて力強い成長を示し、2021年から2026年の間に11.3%のCAGRで成長すると予想されています 。各国の政府機関は、税額控除や設置費用の補助を行うことで、再生可能技術の普及を推進しており、CSP発電所は稼働率が高くLCOE(平準化電力コスト)が低いことから、持続可能なエネルギーインフラとしての価値が高く評価されています 。