日本の地球温暖化対策は、2025年2月18日に改定された地球温暖化対策計画を基軸として展開されています。この計画は、世界全体での1.5℃目標と整合的で、2050年ネット・ゼロの実現に向けた直線的な経路を示すものです。
参考)地球温暖化対策、世界の取り組み、日本の取り組み
政府が設定した具体的な削減目標は以下の通りです。
これらの目標は、中期的には2030年度において温室効果ガスを2013年度から46%削減、さらに50%の高みに向け挑戦を続けていくという方針に基づいています。金属加工業界にとっては、これらの削減目標が製造プロセスの効率化や設備投資の方向性を決定する重要な指標となります。
参考)世界と日本の地球温暖化対策とは?企業の取組事例までわかりやす…
地球温暖化対策計画は、単なる環境対策にとどまらず、排出削減と経済成長の同時実現を目指している点が特徴的です。これにより、金属加工業界でも新たなビジネスチャンスの創出が期待されます。
地球温暖化対策の推進において、法制度の整備は不可欠な要素です。地球温暖化対策推進法(温対法)は、国や地方自治体、事業者の責務を明確化し、温室効果ガス削減に向けた取り組みを制度面から支えています。
参考)https://www.env.go.jp/council/06earth/y060-135/900423368.pdf
改正温対法の主要なポイント。
参考)https://www.city.usuki.oita.jp/docs/2014012900027/file_contents/20240611kuikisisakuhenn.pdf
金属加工業界では、特に温室効果ガス排出量の算定と報告が重要になります。多量排出事業者(特定排出者)は、自らの温室効果ガス排出量を正確に把握し、国に報告することが法的に義務付けられています。
国の地球温暖化対策は国内での削減努力だけでなく、国際協力を通じた地球規模での貢献も重視しています。特に注目すべきは二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)です。
JCMの仕組みと効果。
この制度は、日本の金属加工業界が持つ高効率な製造技術や省エネ設備を海外に展開する際の重要な支援策となります。特に、エネルギー効率の高い金属加工技術や廃熱回収システムなどは、途上国での温室効果ガス削減に大きく貢献できる可能性があります。
国際協力の取り組みは、単なる環境貢献にとどまらず、日本企業の技術力向上と海外展開の機会創出にもつながる戦略的な側面を持っています。
国の地球温暖化対策の中核を成すのが、省エネルギー対策と再生可能エネルギーの最大限活用です。これらの政策は、金属加工業界の事業運営に直接的な影響を与える重要な要素となっています。
主要な省エネ・再エネ政策。
金属加工業界にとって特に重要なのは、製造プロセスでのエネルギー効率向上です。政府は2兆円基金により、水素・蓄電池等の重点分野の研究開発及び社会実装を支援しており、これらの技術革新は金属加工技術の進化を促進します。
再生可能エネルギーの導入拡大は、太陽光発電設備や風力発電設備の金属部品需要を創出する一方で、製造業のエネルギーコスト構造にも変化をもたらします。長期的には、再エネ由来の安価で安定した電力供給により、エネルギー集約的な金属加工プロセスの競争力向上が期待されます。
地球温暖化対策の推進は、金属加工業界に特有の課題と機会をもたらしています。従来の環境対策とは異なる視点から、業界への具体的な影響を分析することが重要です。
製造プロセスの脱炭素化要求
金属加工において、特に熱処理工程は大量のエネルギーを消費します。政府の温室効果ガス削減目標達成には、これらの工程の抜本的な見直しが不可欠です。
サプライチェーン全体での排出削減圧力
大手製造業からの要求により、金属加工業界でも「スコープ3」(間接的な温室効果ガス排出)の管理が求められています。これは、原材料調達から製品廃棄まで全工程での排出削減を意味します。
カーボンニュートラル鋼材の需要拡大
水素還元製鉄技術の普及により、CO2排出量の大幅に少ない鋼材が市場に供給され始めています。金属加工業界では、これらの新素材への対応技術習得が競争力の分かれ目となります。
政府の支援策として、中小企業向けの設備投資補助金や技術開発支援制度が拡充されており、金属加工業界も積極的な活用が可能です。特に、省エネ効果の高い設備導入に対する税制優遇措置は、設備更新のタイミングを検討する重要な要素となっています。