フランジ面のセレーションが滑らかすぎると、ガスケットが圧縮破壊するリスクがあります。
「セレーション(serration)」とは、英語で「鋸歯状のもの」を意味します。フランジの文脈では、ガスケット座面(シール面)に細かい溝を連続して入れた仕上げ面のことを指し、この加工を「セレーション加工」と呼びます。加工された仕上げ面は「セレーテッドフィニッシュ(Serrated Finish)」とも表現されます。
セレーション加工には大きく2種類の形状があります。
- **スパイラル(渦巻き状)**:中心から外側に向かって連続する渦巻き溝。旋盤で一筆書きのように切削するため加工効率が高いのが特徴です。
- **コンセントリック(同心円状)**:同心円が等間隔に並んだ形状。スパイラルに比べてより均一な面圧分布が得られる場合があります。
フランジのセレーション加工は、目視では「ツヤのないざらついた面」に見えます。しかし実際には精密に管理された表面で、溝幅は約0.8mm、溝深さは約0.2〜0.25mm程度が標準的な寸法です。名刺の厚みが約0.2mmですので、溝の深さはほぼ名刺1枚分に相当します。一見すると些細な加工に思えますが、この溝がシール性能を大きく左右します。
加工方法としては、刃先のRが1.6mm以上のバイトを使用した旋盤加工が一般的です。ANSI規格に準拠する場合は1インチあたり45〜55本の溝を入れることが求められ、表面粗さは125〜250AARH(JIS規格における二つ山相当)に仕上げます。この「粗さ管理」が非常に重要で、単に溝が入っていればよいわけではありません。
セレーション加工の目的は主に2つです。1つ目は「面圧の向上によるシール性の改善」、2つ目は「フロー(流れ)によるガスケット切れの防止」です。これが基本です。
まず面圧向上のメカニズムを整理しましょう。フランジのシール面全体がツルツルの平滑面(スムースフィニッシュ)だと、ボルトの締付力がガスケット全面に分散されます。一方、細かい溝が刻まれたセレーテッドフィニッシュでは、ガスケット材が溝の山部分に集中して接触するため、同じ締付力でも単位面積あたりの接触圧(面圧)が高くなります。この局所的な高面圧がシール性を生み出す仕組みです。
次にガスケット切れの防止についてです。高圧配管では流体圧力によってガスケットが外周方向に押し出される力が働きます。セレーション溝はガスケット材の流動を抑制する「引っかかり」として機能します。これによりガスケットが内圧に負けて変形・切断するリスクが大幅に下がります。
また、セレーション加工はガスケットとフランジ面の間の摩擦を増やす役割も持っています。この点は裏を返すとリスクにもなりえます。膨張黒鉛シートガスケットやフッ素樹脂(PTFE)系ガスケットのように表面の摩擦係数が低い素材を使う場合、フランジ面が逆に滑らかすぎると圧縮破壊(圧壊)が発生しやすくなります。これは意外ですね。フランジ面の「粗さ」が適切でないと、シール性向上どころか、ガスケットを壊す原因になるという点は多くの現場技術者が見落としやすいポイントです。
(セレーション加工の目的として「面圧向上」と「ガスケット切れ防止」の2点が明記されている公式情報源です)
フランジ規格によってセレーション加工の有無が異なる点は、現場で非常に重要な知識です。特に「ANSIフランジはセレーションあり、JPIフランジは原則なし」というルールは、部品調達ミスにつながるため確実に覚えておく必要があります。
以下に主要3規格のセレーション加工に関する扱いをまとめます。
| 規格 | セレーション加工 | シール面仕上げ名称 | 主な使用分野 |
|---|---|---|---|
| **ANSI(ASME B16.5)** | ✅ 原則あり(スパイラルまたはコンセントリック) | セレーテッドフィニッシュ | 石油化学・プラント・発電所 |
| **JPI(JPI-7S-15)** | ❌ 原則なし | スムースフィニッシュ | 国内石油工業プラント |
| **JIS(JIS B 2220)** | ❌ 規定なし(用途によって異なる) | 仕様による | 国内一般配管・工場設備 |
ANSIフランジとJPIフランジは外観が非常に似ており、外見だけでは区別が難しいことがあります。JPIフランジはANSIフランジを参考に制定されているため寸法の多くが一致しますが、シール面の仕上げが根本的に異なります。この違いを無視してガスケットを選定すると、シール不足や圧壊が発生します。
さらに重要なのは、JISとANSI/JPI規格間では物理的な互換性がない点です。同じような圧力帯(例:JIS 10KとASME Class 150)でもフランジの外径やボルト穴のピッチ円直径(PCD)が異なるため、混在させると接続できません。規格の違いは「見た目の問題」ではなく、「接続できない・漏れる」という実害に直結します。
また、ASMEのセレーション仕様については、ASME B16.5セクション6.4.5.3に加工要件が規定されています。切削工具の半径は1.5mm(約0.06インチ)以上、溝数は1インチあたり45〜55本が標準です。現場でASMEフランジの再加工や修正を行う際には、この数値を必ず確認してください。
東洋ステンレス化工:ANSIフランジとJPIフランジの違いに関するFAQ
(ANSIはセレーションあり・JPIはなしという原則が明記されている、業界向けの信頼性の高い情報ページです)
フランジのセレーション加工において、溝を入れることと同じくらい重要なのが「表面粗さの管理」です。表面粗さは一般的にRa(算術平均粗さ)という単位で表されます。数値が小さいほど滑らかで、大きいほど粗くなります。
つまり「セレーションをいれれば粗くなる=シール性が上がる」という単純な話ではありません。
ガスケットの種類によって、最適なフランジ表面粗さの範囲が異なります。以下の目安が現場では広く使われています。
| ガスケットの種類 | 推奨表面粗さ(Ra)水・油系 | 推奨表面粗さ(Ra)ガス系 |
|---|---|---|
| ゴムシート・布入りゴム | 12.5 | 12.5 |
| ジョイントシート・PTFE系 | 6.3 | 3.2 |
| 膨張黒鉛シート・うず巻形 | 3.2 | 1.6 |
| リングジョイント | 1.6 | 1.6 |
特に注意すべきはフランジ面が「磨きすぎた」状態です。現場でメンテナンス時にフランジ面を過剰に磨いてしまうと、Raが小さくなりすぎ、ガスケットとの摩擦力が低下します。その結果、内圧によってガスケットが押し出されやすくなります。これは痛いですね。
PTFEガスケットや膨張黒鉛シートのように摩擦係数が低い素材は特にこのリスクが高く、フランジ面を「きれいに磨いた」つもりがガスケット圧壊の原因になっているケースが現場では散見されます。
また、うず巻形(スパイラル)ガスケットとリングジョイントは高温・高圧のプラント設備で使われることが多く、Raが1.6程度の精密な仕上げが求められます。これは表面粗さ計での確認が必須です。なんとなくヤスリがけした程度では管理できません。
施工前の確認として、フランジ面の表面粗さを粗さ計(接触式・非接触式)で実測する習慣をつけることが最も確実な対策です。
バルカー技術誌(No.31):ガスケットの締付けトラブルとその対策
(フランジ表面粗さとガスケット圧壊の関係、種類別推奨Ra値の一覧が詳しく掲載されています)
プラントにおけるガスケットのトラブルは多様ですが、施工不良によるものが全体の約3分の2を占めるという調査結果があります。これが原則です。セレーション加工が適切でも、締付け作業に問題があれば漏洩は防げません。
主な施工不良は次の3種類に分類できます。
**① 締付け不足**
ボルトの締付力が足りないと、ガスケットの面圧が不十分になり初期漏れが発生します。さらに厄介なのは「締付け直後は漏れていなかったのに、運転中に漏れ始める」ケースです。ガスケットにはクリープ緩和という特性があり、時間とともに締付面圧が徐々に低下します。気密限界面圧を下回った時点で漏洩が始まります。
対策としては、トルクレンチを使った定量的なトルク管理が基本です。またボルトに錆がある場合は著しく摩擦が増大してボルト軸力が正確に伝わらないため、錆の除去と潤滑剤の塗布が必要です。
**② 過剰締付け**
締めれば締めるほど良い、という考えは危険です。過剰な締付力はガスケットを圧縮破壊(圧壊)させます。圧壊したガスケットには多数の周方向亀裂が生じ、締付面圧が急激に低下して漏洩に至ります。
特にフッ素樹脂系ガスケットや膨張黒鉛シートなど、摩擦係数が低い素材では「少し余分に締めただけ」で圧壊が起きやすいため注意が必要です。さらにガスケットペーストを過剰に塗布するとフランジとガスケットの間の摩擦力が下がり、圧壊しやすくなります。ペーストの厚みは数十μm程度で十分です。
**③ 片締め**
対角方向のボルトを順番に段階的に締めず、一カ所から連続して締めていくと「片締め」が発生します。ガスケットの一部が過剰圧縮され、別の部分は締付不足になるため、両方のトラブルが混在した状態になります。
締付け手順はJIS B2251に準拠することで片締めを防止できます。ASME PCC-1では軸差最大1.5mm、直角度最大0.8mmの範囲でフランジのアライメントを是正することが推奨されています。
これらのトラブルは「世代交代で熟練技能者が減っている」現在の現場環境で特に増加しています。デジタルトルクレンチや油圧式ボルトテンショナーを導入している現場では、締付けのばらつきを大幅に抑制できています。
ダイコー:うず巻形ガスケットからの漏れを防ぐ施工管理の重要ポイント
(ガスケット種類別の推奨締付面圧・フランジ面の推奨Raなど、現場で即活用できる数値情報が掲載されています)
フランジのセレーション加工は「新品時に工場で施されるもの」と思われがちですが、実際の現場ではメンテナンス時に再加工・修正が必要になる場面も少なくありません。ここが意外と見落とされているポイントです。
長期間使用したフランジのシール面には腐食による点食(ピッティング)、傷、変形などが生じます。こうした損傷があると元のセレーションが機能しなくなります。この場合、フランジを交換するか、現地修正・機械加工による再仕上げを行うかの判断が求められます。
現地修正の目安として使えるのが、JPI-8R-15(フランジ・ボルト締付管理)の基準です。手仕上げで修正できる範囲が一覧化されており、たとえばジョイントシートガスケットやうず巻形ガスケット向けのフランジ面は「中目のヤスリ仕上げ」が基準となります。リングジョイント用は「細かいサンドペーパー+コンパウンド磨き」が必要です。
機械加工による再仕上げが必要なケースは以下の状況が目安になります。
- ピッティングの直径が3mm以上、または深さが0.5mm以上
- 隣接する複数の欠陥が近接して存在する
- フランジ面の平面度が著しく損なわれている
この判断を誤って、規格外の状態のフランジに新しいガスケットを装着すると、いくらガスケットが良品でも漏洩は防げません。ガスケットの不具合と思い込んで何度も交換しているのに漏れが止まらない、というトラブルの原因がフランジ面の損傷だったというケースは現場で実際に起きています。注意すれば大丈夫です。
また、特殊な事例としてアルミ製の真空フランジにセレーション加工を行う場合があります。真空システムでは1×10⁻³Pa以下という超高真空でのシールが求められることがあり、一般的な配管用フランジとは異なる仕様のセレーションが必要になります。この場合はJIS B 2290(真空装置用フランジ)の規定を参照し、使用するシール材(Oリング、メタルシールリングなど)に応じた加工仕様を選定することが重要です。
再加工の際に「前の加工と同じようにやればいい」という感覚で作業すると、表面粗さや溝ピッチが規格から外れてしまうことがあります。必ず使用するガスケットの種類と流体条件を確認してから加工仕様を決定してください。これだけ覚えておけばOKです。
Engineer Education:配管フランジの基礎知識(規格・接続方式・ガスケット座の種類)
(フランジの種類・規格・ガスケット座の形状まで体系的に解説されている技術教育サイトです)
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