フランジ規格と種類の基本と選び方ガイド:材質と接合の重要性

フランジの規格や種類、形状や材質の選定方法について詳しく解説します。JIS・ANSI・JPIなどの主要規格の違いや、各フランジタイプの特性を理解し、適切な選択をするためのポイントとは何でしょうか?

フランジ規格と種類の基本と選び方

フランジ規格と種類の基本と選び方

フランジ選択の重要ポイント
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規格の適合性

使用環境や目的に合わせた規格(JIS・ANSI・JPI)の選択が重要です

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材質と形状

流体特性や圧力・温度条件に適した材質と形状の選定が必要です

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接続方法と密閉性

パッキンの種類や厚みも考慮した信頼性の高い接続方法の検討が不可欠です

フランジ規格の種類とJIS・ANSI・JPI規格の違い

 

フランジ規格は、配管や設備の互換性と安全性を確保するための重要な基準です。主な規格としては、JIS(日本工業規格)、ANSI(アメリカ国家規格協会)、JPI(日本石油学会)の3つがあります。それぞれの特徴と違いを理解することで、適切なフランジを選択することができます。

 

① JIS規格(Japanese Industrial Standards)
JIS規格は日本国内で広く採用されている規格で、主に以下の4種類があります。

  • JIS B 2220:鋼製フランジ(SS400, SUS304など)
  • JIS B 2239:鋳鉄フランジ(FC250, FCD450)
  • JIS B 2240:銅合金フランジ(CAC406)
  • JIS B 2241:アルミニウムフランジ(A5083)

JIS規格フランジは「呼び圧力」によって分類され、5K、10K、16K、20K、30K、40K、65Kなどがあります。これらは「〇〇キロフランジ」と呼ばれ、数字が大きいほど耐圧性が高くなります。

 

② ANSI規格(American National Standards Institute)
ANSI規格は、アメリカを中心に国際的に広く使用されている規格です。正式には「ANSI/ASME B16.5」として知られており、ASMEはアメリカ機械学会を指します。ANSI規格フランジの特徴は以下の通りです。

  • 圧力クラス:150lb、300lb、600lb、900lb、1500lb、2500lbなど
  • セレーション(同心円状の溝加工)が施されている
  • 国際的なプロジェクトでよく使用される

ANSIフランジの特徴として、ガスケット面にセレーションと呼ばれる凹凸面(細かい同心円溝加工)が付いていることが挙げられます。

 

③ JPI規格(Japan Petroleum Institute)
JPI規格は、ANSIフランジを参考にして日本向けに制定された規格です。主に石油産業で使用されており、以下のような規格があります。

  • JPI-7S-15-2011:石油工業用フランジ
  • JPI-7S-43-2008:石油工業用大口径フランジ
  • JPI-7S-73-2017:石油工業用オリフィスフランジ
  • JPI-7S-74-2002:石油工業用アルミニウム合金製フランジ

JPIフランジはANSIフランジと多くの仕様が同等ですが、ANSIフランジと異なり、ガスケット面にセレーションがありません。この違いにより、使用できるガスケットの種類も異なるため、注意が必要です。

 

規格選定のポイント
フランジの規格を選定する際には、以下のポイントを考慮することが重要です。

  • 使用する国や地域の標準規格
  • 接続する設備や機器の規格
  • 必要な圧力クラスと温度条件
  • 互換性の確保(同一規格のフランジを使用する)
  • 使用環境や流体の特性

正しい規格を選ぶことで、安全性の確保とメンテナンスの効率化につながります。

 

フランジの形状と構造による分類と特徴

 

フランジは形状や構造によって様々な種類に分類され、それぞれに特徴があります。使用目的や環境に応じて適切な形状を選ぶことが重要です。

 

① スリップオンフランジ(Slip-On Flange・SO)
スリップオンフランジは、配管の端部にスライドさせて装着し、溶接して固定するタイプのフランジです。以下の2種類があります。

  • SOP型:ハブなし
  • SOH型:ハブあり

特徴:

  • 溶接が容易
  • 汎用品として流通しており、コストが比較的安価
  • 配管との接続が簡単
  • 圧力耐性は他のタイプに比べてやや低い

② ウェルドネックフランジ(Weld Neck Flange・WN)
ウェルドネックフランジは、長いネック部分が特徴で、そのネック部分を配管に突合せ溶接して固定します。

 

特徴:

  • 高い強度と耐久性
  • 応力集中を分散させる設計
  • 高温・高圧環境に適している
  • 均一な熱膨張特性
  • コストは比較的高い

③ ソケット溶接フランジ(Socket Weld Flange・SW)
ソケット溶接フランジは、ソケット(穴)部分に配管を挿入して溶接するタイプです。

 

特徴:

  • 小口径配管に適している
  • 高圧環境での使用に適している
  • 漏れに対する高い耐性
  • 施工が比較的容易

④ ラップジョイントフランジ(Lap Joint Flange・LJ)
ラップジョイントフランジは、配管の端部にあるラップジョイントスタブエンドと組み合わせて使用される遊合型フランジです。

 

特徴:

  • フランジの回転が可能(ボルト穴の位置調整が容易)
  • 配管の取り外しが容易
  • メンテナンス性に優れている
  • 腐食環境での使用に適している

⑤ ブラインドフランジ(Blind Flange・BL)
ブラインドフランジは、配管や容器の端部を塞ぐために使用される板状のフランジです。

 

特徴:

  • 配管や容器の完全な封止が可能
  • 高い密閉性
  • 将来的な配管延長に備えて使用される
  • メンテナンス時の一時的な封止にも使用

形状選定のポイント
フランジの形状を選定する際には、以下のポイントを考慮する必要があります。

  • 使用圧力と温度条件
  • 配管サイズと材質
  • 施工方法と難易度
  • メンテナンス頻度と方法
  • コスト制約
  • 安全性要件

適切な形状を選ぶことで、安全性の向上とコスト削減を両立することができます。

 

フランジの材質と厚み選定の重要ポイント

 

フランジの材質と厚みは、その性能と耐久性に直接影響する重要な要素です。適切な選択をすることで、設備の安全性と寿命を大幅に向上させることができます。

 

① 主なフランジ材質と特性
フランジには様々な材質が使用されており、使用環境や要求特性に応じて選択します。

材質 特性 主な用途
炭素鋼(SS400など) - 強度が高い
- コストが低い
- 耐食性は低い
一般的な配管、低圧・低温環境
ステンレス鋼(SUS304, SUS316など) - 耐食性に優れる
- 高温環境に適している
- 強度が高い
化学プラント、食品工場、医薬品工場
鋳鉄(FC250, FCD450など) - 耐摩耗性が高い
- 振動吸収性がある
- 脆性がある
低圧環境、振動がある環境
アルミニウム合金(A5083など) - 軽量
- 耐食性がある
- 強度はやや低い
軽量化が必要な場所、低圧環境
銅合金(CAC406など) - 熱伝導性が高い
- 耐食性がある
- 加工性に優れる
熱交換器、海水環境

② 厚みの選定基準
フランジの厚みは、使用圧力や温度、フランジの直径などによって決定されます。厚みは以下の要素に影響します。

  • 圧力耐性:厚みが増すほど高圧に耐えられますが、重量とコストも増加します
  • 変形抵抗:適切な厚みにより、使用中の変形を防止できます
  • 密閉性能:適切な厚みにより、ガスケットとの良好な接触が実現できます
  • 熱膨張への対応:温度変化がある環境では、適切な厚みが熱応力を緩和します

厚みが薄すぎると圧力に耐えられず、逆に厚すぎるとパッキンが硬くなりすぎて、密閉性が低下する可能性があります。

 

③ 材質と厚みの選定ポイント
以下の条件を考慮して、最適な材質と厚みを選定することが重要です。

  • 使用環境:温度、圧力、腐食性物質の有無
  • 流体の種類:化学的特性、毒性、可燃性
  • 設備の寿命:長期間使用する場合は耐久性の高い材質を選択
  • コスト制約:初期コストだけでなく、メンテナンスや交換頻度も考慮
  • 安全基準:業界や国の規制に適合する材質と厚みを選択
  • 接続する配管や機器電気化学的腐食を防ぐため、適合する材質を選択

適切な材質と厚みの選定は、設備の安全性とコストパフォーマンスの両面で重要な要素です。

 

フランジパッキンの選び方と密閉性能の確保

 

フランジの密閉性能を確保するためには、適切なフランジパッキンの選択が不可欠です。パッキンはフランジ同士の間に挟み込んで使用し、流体の漏れを防ぐ重要な役割を果たします。

 

① フランジパッキンの主な種類
フランジパッキンには様々な種類があり、使用環境や要求特性に応じて選択します。

  • ゴムパッキン:NBR、EPDM、フッ素ゴムなど
  • 柔軟性があり、低圧環境に適している
  • 化学的耐性は材質によって異なる
  • 比較的安価で取り扱いが容易
  • 金属パッキン:銅、アルミニウム、ステンレスなど
  • 高温・高圧環境に適している
  • 耐久性に優れている
  • 変形しにくく、締め付け管理が重要
  • セミメタリックパッキン:スパイラルワウンド、金属被覆など
  • 金属とノンメタルの複合構造
  • 幅広い温度・圧力範囲で使用可能
  • 良好な復元性と密閉性能
  • ノンアスベストパッキン:繊維強化、グラファイトなど
  • 環境に配慮した材質
  • 様々な流体との適合性がある
  • 耐熱性と耐薬品性のバランスが良い

② パッキンの厚みと規格の選び方
パッキンの厚みは、フランジ面の状態や使用条件によって選択します。

  • 標準厚みのパッキン:一般的な用途では1.5mm〜3.0mmが多く使用されます。フランジ面の状態が良好な場合に適しています。
  • 厚手のパッキン:フランジ面に傷や凹凸がある場合や、振動が多い環境では、3.0mm〜5.0mmのものが適しています。ただし、厚すぎると内部応力が大きくなり、漏れのリスクが高まることがあります。

パッキンの規格は、使用するフランジの規格(JIS、ANSI、JPIなど)に合わせる必要があります。特にANSIフランジではセレーション(凹凸面)があるため、それに適したパッキンを選択することが重要です。

 

③ 密閉性能を確保するためのポイント
フランジ接続の密閉性能を確保するためには、以下のポイントに注意が必要です。

  • 適切な材質選択:流体の種類、温度、圧力に適した材質を選ぶ
  • 正確なサイズ:フランジの内径・外径に合ったパッキンを使用する
  • 均一な締め付け:ボルトを対角線順に均等トルクで締め付ける
  • 適切な表面処理:フランジ面の清掃と適切な表面仕上げの確保
  • 再使用の禁止:一度使用したパッキンは再利用せず、新品を使用する
  • 温度変化への対応:熱膨張・収縮を考慮したパッキン選択と締め付け管理

適切なパッキンの選択と正しい施工により、信頼性の高いフランジ接続を実現することができます。

 

フランジ選定時のコストパフォーマンスと寿命延長のテクニック

 

フランジを選定する際、初期コストだけでなく、長期的なコストパフォーマンスも考慮することが重要です。適切な選択と維持管理により、設備のライフサイクルコストを最適化することができます。

 

① コストパフォーマンスを考慮したフランジ選定
フランジのコストパフォーマンスを高めるためには、以下の要素を総合的に検討する必要があります。

  • 初期コストと耐用年数のバランス
  • 安価な炭素鋼フランジは初期コストが低いが、腐食環境では頻繁な交換が必要になる場合がある
  • 高価なステンレス鋼フランジは初期コストが高いが、長期的には交換頻度が少なく経済的になる場合がある
  • メンテナンス頻度とコスト
  • 定期的な点検やメンテナンスが容易な構造のフランジを選ぶ
  • アクセスが困難な場所では、耐久性の高いフランジを選択する
  • 故障リスクとその影響
  • 重要な配管系統では、多少コストが高くても信頼性の高いフランジを選択する
  • 故障時の影響が大きい場所では、安全率を高めに設定する

② フランジの寿命を延ばすテクニック
フランジの寿命を延ばし、交換頻度を減らすためのテクニックには以下のものがあります。

  • 適切な表面処理
  • 炭素鋼フランジには適切な防錆処理(亜鉛めっき、エポキシコーティングなど)を施す
  • フランジ面の適切な仕上げ加工により、ガスケットとの密着性を向上させる
  • 定期的な点検と予防保全
  • ボルトの締め付け状態を定期的に確認し、必要に応じて増し締めを行う
  • 腐食や損傷の兆候を早期に発見し、対処する
  • 適切な施工と管理
  • フランジ接続時の適切な手順と工具の使用
  • トルク管理による適切な締め付け
  • 配管のアライメント(芯出し)の確保
  • 環境対策
  • 屋外設置の場合は適切な保護カバーの使用
  • 湿度や温度変化が激しい環境では、それに適した対策を講じる

③ 最新技術の活用
フランジ技術は常に進化しており、最新の技術を活用することでコストパフォーマンスを向上させることができます。

  • 高性能シール材の採用
  • 新世代のPTFE(テフロン)ガスケットや膨張黒鉛ガスケットなど
  • 長寿命で様々な環境に対応できるシール材
  • スマートモニタリング
  • ボルトの締め付け状態をモニタリングするセンサー技術
  • 漏れを早期に検知するシステム
  • 最適化設計ツール
  • 計算ソフトウェアによる最適なフランジとボルトの選定
  • シミュレーションによる漏れリスクの事前評価

フランジの選定と管理において、初期コストだけでなく長期的な視点でのコストパフォーマンスを考慮することで、設備の総合的なコスト削減と信頼性向上を実現することができます。