フランジ規格は、配管や設備の互換性と安全性を確保するための重要な基準です。主な規格としては、JIS(日本工業規格)、ANSI(アメリカ国家規格協会)、JPI(日本石油学会)の3つがあります。それぞれの特徴と違いを理解することで、適切なフランジを選択することができます。
① JIS規格(Japanese Industrial Standards)
JIS規格は日本国内で広く採用されている規格で、主に以下の4種類があります。
JIS規格フランジは「呼び圧力」によって分類され、5K、10K、16K、20K、30K、40K、65Kなどがあります。これらは「〇〇キロフランジ」と呼ばれ、数字が大きいほど耐圧性が高くなります。
② ANSI規格(American National Standards Institute)
ANSI規格は、アメリカを中心に国際的に広く使用されている規格です。正式には「ANSI/ASME B16.5」として知られており、ASMEはアメリカ機械学会を指します。ANSI規格フランジの特徴は以下の通りです。
ANSIフランジの特徴として、ガスケット面にセレーションと呼ばれる凹凸面(細かい同心円溝加工)が付いていることが挙げられます。
③ JPI規格(Japan Petroleum Institute)
JPI規格は、ANSIフランジを参考にして日本向けに制定された規格です。主に石油産業で使用されており、以下のような規格があります。
JPIフランジはANSIフランジと多くの仕様が同等ですが、ANSIフランジと異なり、ガスケット面にセレーションがありません。この違いにより、使用できるガスケットの種類も異なるため、注意が必要です。
規格選定のポイント
フランジの規格を選定する際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
正しい規格を選ぶことで、安全性の確保とメンテナンスの効率化につながります。
フランジは形状や構造によって様々な種類に分類され、それぞれに特徴があります。使用目的や環境に応じて適切な形状を選ぶことが重要です。
① スリップオンフランジ(Slip-On Flange・SO)
スリップオンフランジは、配管の端部にスライドさせて装着し、溶接して固定するタイプのフランジです。以下の2種類があります。
特徴:
② ウェルドネックフランジ(Weld Neck Flange・WN)
ウェルドネックフランジは、長いネック部分が特徴で、そのネック部分を配管に突合せ溶接して固定します。
特徴:
③ ソケット溶接フランジ(Socket Weld Flange・SW)
ソケット溶接フランジは、ソケット(穴)部分に配管を挿入して溶接するタイプです。
特徴:
④ ラップジョイントフランジ(Lap Joint Flange・LJ)
ラップジョイントフランジは、配管の端部にあるラップジョイントスタブエンドと組み合わせて使用される遊合型フランジです。
特徴:
⑤ ブラインドフランジ(Blind Flange・BL)
ブラインドフランジは、配管や容器の端部を塞ぐために使用される板状のフランジです。
特徴:
形状選定のポイント
フランジの形状を選定する際には、以下のポイントを考慮する必要があります。
適切な形状を選ぶことで、安全性の向上とコスト削減を両立することができます。
フランジの材質と厚みは、その性能と耐久性に直接影響する重要な要素です。適切な選択をすることで、設備の安全性と寿命を大幅に向上させることができます。
① 主なフランジ材質と特性
フランジには様々な材質が使用されており、使用環境や要求特性に応じて選択します。
材質 | 特性 | 主な用途 |
---|---|---|
炭素鋼(SS400など) | - 強度が高い - コストが低い - 耐食性は低い |
一般的な配管、低圧・低温環境 |
ステンレス鋼(SUS304, SUS316など) | - 耐食性に優れる - 高温環境に適している - 強度が高い |
化学プラント、食品工場、医薬品工場 |
鋳鉄(FC250, FCD450など) | - 耐摩耗性が高い - 振動吸収性がある - 脆性がある |
低圧環境、振動がある環境 |
アルミニウム合金(A5083など) | - 軽量 - 耐食性がある - 強度はやや低い |
軽量化が必要な場所、低圧環境 |
銅合金(CAC406など) | - 熱伝導性が高い - 耐食性がある - 加工性に優れる |
熱交換器、海水環境 |
② 厚みの選定基準
フランジの厚みは、使用圧力や温度、フランジの直径などによって決定されます。厚みは以下の要素に影響します。
厚みが薄すぎると圧力に耐えられず、逆に厚すぎるとパッキンが硬くなりすぎて、密閉性が低下する可能性があります。
③ 材質と厚みの選定ポイント
以下の条件を考慮して、最適な材質と厚みを選定することが重要です。
適切な材質と厚みの選定は、設備の安全性とコストパフォーマンスの両面で重要な要素です。
フランジの密閉性能を確保するためには、適切なフランジパッキンの選択が不可欠です。パッキンはフランジ同士の間に挟み込んで使用し、流体の漏れを防ぐ重要な役割を果たします。
① フランジパッキンの主な種類
フランジパッキンには様々な種類があり、使用環境や要求特性に応じて選択します。
② パッキンの厚みと規格の選び方
パッキンの厚みは、フランジ面の状態や使用条件によって選択します。
パッキンの規格は、使用するフランジの規格(JIS、ANSI、JPIなど)に合わせる必要があります。特にANSIフランジではセレーション(凹凸面)があるため、それに適したパッキンを選択することが重要です。
③ 密閉性能を確保するためのポイント
フランジ接続の密閉性能を確保するためには、以下のポイントに注意が必要です。
適切なパッキンの選択と正しい施工により、信頼性の高いフランジ接続を実現することができます。
フランジを選定する際、初期コストだけでなく、長期的なコストパフォーマンスも考慮することが重要です。適切な選択と維持管理により、設備のライフサイクルコストを最適化することができます。
① コストパフォーマンスを考慮したフランジ選定
フランジのコストパフォーマンスを高めるためには、以下の要素を総合的に検討する必要があります。
② フランジの寿命を延ばすテクニック
フランジの寿命を延ばし、交換頻度を減らすためのテクニックには以下のものがあります。
③ 最新技術の活用
フランジ技術は常に進化しており、最新の技術を活用することでコストパフォーマンスを向上させることができます。
フランジの選定と管理において、初期コストだけでなく長期的な視点でのコストパフォーマンスを考慮することで、設備の総合的なコスト削減と信頼性向上を実現することができます。