あなたのゴールドコートは3ヶ月で劣化しているかもしれません。
PVDコーティングと一口に言っても、実際にはTiN(チタンナイトライド)、ZrN(ジルコニウムナイトライド)、TiAlNなど数種類があります。見た目のゴールド色は似ていますが、ZrNの方がやや明るい黄色味を帯び、TiNは深みのある金色です。
硬度はTiNで約2300HV、ZrNで約2800HV。つまり見た目よりZrNの方が強いです。ですが、コストは1.7〜2.3倍。つまりコスト効率を見誤りがちです。
これは現場で「金色=TiN」と思い込む人が多く、実際に試験片で測るとZrNが使われていた、というケースが珍しくありません。つまり「金色でも別物」ということですね。
工具や金型のPVD再施工は平均で3~5万円/本。ですが、TiNコート品を再度焼き戻した際に母材硬度が5%以上低下する事例もあります。つまり寿命はコートだけでなく素材温度にも左右されるのです。
特に500℃以上で作業が続く現場では、TiN層が酸化しやすく、ゴールドが紫色や灰色に変色します。この見た目変化を「異常」と判断せずそのまま使うと、摩耗が5倍に跳ね上がることも。危険ですね。
再施工を前提にするなら、母材硬度がHRC60以上の超硬材を選ぶのが基本です。つまり熱の影響を最小に抑える設計が必要ということですね。
たとえば、TiNコートドリルが1本1,000円で販売されているとします。これに対してAlTiNコート(黒系)は同条件で約1,500円。短期的には高く思えますが、実際の耐摩耗寿命は2.3〜2.8倍。
つまり切削1回あたりのコストはむしろ安いということです。いいことですね。
ゴールド色の高級感に惹かれてTiNを選ぶよりも、被膜性能で判断した方が工数・コスト両面で有利になります。つまり、表面色に惑わされない選択が重要です。
「ゴールド=滑りが良い」と思っている人は多いですが、それは大きな誤解です。TiNの摩擦係数は0.4程度、ZrNで0.35程度。一方、DLCコートでは0.15以下。つまり滑り性能では黒系が圧勝です。
実際、DLC(Diamond-Like Carbon)はピカピカの黒色でも、TiNの倍以上の耐摩耗性を発揮します。外観では判断できません。
さらに、PVDゴールドは油膜維持性が低く、乾式潤滑では工具寿命が半減するデータもあります。つまり、見た目と機能の不一致に注意が必要です。
乾式切削にはTiAlNやDLC、湿式ではZrNが理想です。つまり用途で選ぶのが基本です。
近年、PVDゴールドは工具以外にも「デザイン+機能」両立素材として注目されています。特に医療機器や時計パーツで、耐腐食性と見た目を両立するために使われています。
しかしこの分野では物理的強度よりも「光沢保持率」が重視され、4年使用後でも色差ΔEが2以内に収まる事例も報告されています。つまり美観性能がメイン評価軸です。
加工業界にもこの発想を応用すべき時期かもしれません。つまり「長く美しく使える金属」こそ、顧客価値につながるというわけです。
この点における国内研究では、東北大学金属材料研究所が光学反射率と酸化防止膜の最適化条件を公表しています。参考になりますね。
東北大学金属材料研究所の「PVD膜の反射率特性と耐酸化過程」に関する論文: