C重油を使っていれば、耐熱鋼でも500℃台で溶けた腐食物に内側から食い破られます。

バナジウムアタックとは、C重油などの重質燃料を燃焼した際に発生する、溶融したバナジウム化合物による高温腐食現象のことです。「油灰腐食」や「バナジウム腐食」とも呼ばれ、溶融塩腐食の代表例に位置づけられています。
腐食の引き金は、C重油に含まれるバナジウム(V)という金属元素です。燃焼の過程でVはV₂O₃からV₂O₄へ、さらにV₂O₅(五酸化バナジウム)へと酸化されます。このV₂O₅の融点は約690℃ですが、燃焼ガス中に共存するナトリウム(Na)や硫黄(S)と結合することで話が大きく変わります。
Na₂O・V₂O₅系の化合物群が生成されると、融点は一気に約500~535℃まで低下します。これは「ナトリウム塩との共晶」によるものです。下表のようにNaとVの複合化合物には、融点が535℃前後のものが複数存在します。
| 化合物 | 融点(℃) | 化合物 | 融点(℃) |
|---|---|---|---|
| V₂O₅ | 690 | Na₂O・V₂O₅ | 630 |
| 5Na₂O・V₂O₄(系) | 535 | Na₂O・6V₂O₅ | 652 |
| 2Na₂O・3V₂O₅ | 565 | NaVO₃ | 630 |
| 5Na₂O・V₂O₄・11V₂O₅ | 535 | Na₂O・V₂O₄・5V₂O₅ | 625 |
つまり、「過熱器・再熱器の管表面温度が500℃程度を超えていれば、腐食物が液体として存在できる」ということです。腐食が液体で進む点が原則です。
溶融したV化合物は金属表面に付着すると、フラックス(溶剤)として機能します。通常、金属の表面はCr₂O₃などの酸化保護皮膜で覆われており、これが腐食の進行を防いでいます。ところが溶融したV化合物はこの保護皮膜を化学的に溶解・剥離させてしまうため、ムキ出しになった金属が直接酸化され、腐食が急激に加速します。これがバナジウムアタックのコアにあるメカニズムです。
さらに、硫黄酸化物(SOₓ)の存在下ではV₂O₅の実効的な融点はさらに低下し、550~580℃帯でも液体として振る舞うことが報告されています。高硫黄分の燃料を使うほど、腐食の発生温度帯が広がる点は見落としやすいポイントです。意外ですね。
参考情報:バナジウム腐食メカニズムの基礎(J-STAGE 掲載、鉄と鋼・腐食論文)
バナジウムアタックが発生する代表的な場所は、ボイラーの過熱器(SH)・再熱器(RH)の伝熱管です。これらの管は燃焼ガスに直接さらされており、管の外表面温度は500℃を軽く超えます。まさに低融点バナジウム化合物が「溶融状態」で存在できる温度域です。
ガスタービンも危険な設備です。重油燃焼式のガスタービンでは、燃焼ガスが直接タービン翼を通過します。翼表面はボイラー管以上の高温にさらされるため、V含有量の多い燃料を使用した場合の腐食リスクは非常に高くなります。腐食が進むと翼の強度低下・破損に直結するため、重油燃焼ガスタービンの設計では高温腐食対策が最重要課題の一つとして扱われています。
一方、燃料中のバナジウム濃度も腐食の深刻さを左右します。C重油の場合、バナジウム含有量は概ね10 ppm前後とされていますが、高V分の劣質重油では桁違いに濃度が高いものもあります。オリマルジョン®(ビチューメンを水に乳化させた重質燃料)はC重油の約4倍のバナジウムを含むとされており、腐食のリスクが格段に高いことが研究で示されています。
また、ナトリウム含有量も腐食を大きく左右します。Na/V比が高いほど、より低融点の共晶化合物が生成されやすくなります。これが原則です。Na濃度は使用する燃料の産地・精製度によって大きく変わるため、燃料の成分証明書(ミルシート)を事前に確認することが不可欠です。
日本国内の火力発電用では、低S分・低V分重油の普及によってバナジウムアタックによる腐食事例はかつてより大幅に減少したと言われています。しかし今後、エネルギーコスト削減目的で高V・高Na分の劣質燃料の使用が増える動きも報告されており、改めて注意が必要です。ここは要注意です。
参考情報:燃焼灰による高温腐食の試験法・腐食性評価(IIC Review 技術紹介)
燃焼灰の高温腐食試験法と腐食性評価の紹介(IIC株式会社 技術紹介、PDF)
「耐熱鋼やステンレス鋼を使えばバナジウムアタックは大丈夫」と思っている現

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