圧延機械とは何か基本知識から種類まで詳解

圧延機械の基本から各種機械の特徴、熱間・冷間圧延の違いまで金属加工従事者が知るべき知識を解説。効率的な金属加工を実現するためのポイントとは?

圧延機械とは基礎から実践まで

圧延機械の基礎知識
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基本構造と原理

ロール間に金属を通し圧力で延伸成形する装置

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産業での役割

大量生産を可能にする連続的な金属加工技術

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多様な種類

2段から多段まで用途に応じた構成選択

圧延機械の基本原理と構造

圧延機械とは、回転するロール間に金属材料を通し、圧縮塑性変形を与えながら各種形状に延伸成形する装置です。基本的な構造は、材料に直接接触する「ワークロール」と、ワークロールを支持する「バックアップロール」から構成されています。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/metal-machining/30701/

 

この機械の原理は極めてシンプルで、金属の塑性(外力によって変形する性質)を利用し、回転するロールとの摩擦抵抗によって材料をロール間に引き込み、所定の厚みまで圧延します。パスタマシーンや昔の洗濯機の絞り器を想像すると理解しやすいでしょう。
参考)圧延とは?圧延加工でつくられる鋼材と圧延工程・機械の種類

 

圧延機械の設計思想は1486年にLeonardo da Vinciによって構想されており、長い歴史を持つ加工技術です。現代では、インゴット(鋳塊)やスラブ(鋼片)から板・棒・形・管状などの多様な金属材料を量産できる重要な設備となっています。
参考)https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=04%3A1000146

 

機械加工と比較して大量生産が可能であり、同じ断面形状を持つ連続した部材を高速で加工できるのが最大の特徴です。

圧延機械の主要な種類と特徴

圧延機械は、ロールの配置や本数によって複数の種類に分類されます。最もシンプルな構造から高機能な多段圧延機まで、用途に応じて選択されています。
参考)圧延機

 

2段圧延機(二重圧延機)
2本のワークロールのみで構成される最も基本的な圧延機です。分塊圧延、線材、棒材、形材の熱間圧延用に広く用いられています。インゴットからスラブを作る分塊圧延機や、ストリップミルの粗圧延機としても使用されます。直径1m以上のワークロールが使用される場合もあります。
参考)https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=04%3A1009473

 

4段圧延機(四重圧延機)
2本のワークロールと2本のバックアップロールを持つ圧延機です。ワークロールのたわみをバックアップロールで支持することで、より精密な加工が可能になります。鋼・銅・アルミなどの圧延加工に使われ、ストリップミルの仕上げ圧延機としても使用されます。
参考)4段圧延機とは?薄物精密金属加工 - Kintek Solu…

 

クラスターミル(多段圧延機)
2本のワークロールと複数のバックアップロールを持つ高機能圧延機です。20段のロールを用いる場合もあり、ワークロールのたわみを最大限に抑えることで高い圧力を発揮します。ゼンジミア圧延機やローン圧延機などの種類があり、ステンレス鋼板や銅箔などの極薄材料の冷間圧延に使用されます。

圧延機械による熱間圧延と冷間圧延

圧延加工は温度によって熱間圧延と冷間圧延に大別され、それぞれ異なる特性と用途を持ちます。温度差により得られる製品の性質が大きく変わるため、目的に応じた使い分けが重要です。
熱間圧延
高温状態で圧延を行う方法で、薄板では複数の粗圧延機と仕上圧延機を一直線上に並べたホット・ストリップミルが使用されます。材料は全ての圧延機を通過後、終点で巨大なコイル状(ホットコイル/熱延コイル)に巻き取られます。
熱間圧延品は表面に黒いスケール(酸化膜)が生成するため「黒皮材」とも呼ばれます。主に自動車のボディーや家電製品に使用される帯鋼(おびこう)の製造に適用されます。
冷間圧延
常温で圧延を行う方法で、金属は冷間加工によって機械的な性質が変化します。弾性限界、降伏点、抗張力硬さ等は加工度とともに上昇し、引張試験における伸びおよび絞りは加工度の増加とともに低下します。
参考)レーザー誘起衝撃波による金属の表層加工

 

冷間圧延品は表面がキレイで光沢があり「みがき帯鋼」や「ミガキ材」と呼ばれます。精密な寸法精度と優れた表面仕上げが要求される用途に使用されます。

圧延機械の生産性と効率化技術

現代の圧延機械は、連続的・高速・高精度という3つの特徴により、金属加工業界で不可欠な存在となっています。これらの特徴が相互に作用することで、従来の加工方法では実現できない生産性を実現しています。
連続製造システム
ストリップ・ミルの登場により、1km以上に及ぶシート状製品の連続製造が可能になりました。これにより断続的な製造から脱却し、大幅な生産効率向上を実現しています。自動車産業の大量生産需要に対応するため開発されたこの技術は、現在では様々な産業で活用されています。
高速加工能力
圧延加工では、プレス加工機や手作業と比較して圧倒的なスピードで金属鋼材を製造できます。現代の圧延機は精密な機械制御により、顧客の要求仕様に沿った金属鋼材を高速で製造することが可能です。
コスト効率
大量生産に向いている圧延加工は、生産コストを大幅に削減できます。板形状のような比較的単純な形状であれば、鍛造など他の加工方法よりも能率的で、特に自動車の板金部品など大量の鋼材が必要な場合には必須の技術です。

圧延機械の安全性と保守管理

圧延機械は金属に強い圧力をかけるため、機械自体に高い剛性が求められ、適切な安全管理と定期的な保守が不可欠です。現代の工場では、作業者の安全確保と設備の長期安定稼働を両立させる管理システムが重要となっています。
安全性の確保
厚生労働省の機械安全化改善事例では、圧延機を含む機械設備のリスクアセスメントの重要性が指摘されています。特に高圧力を扱う圧延機では、危険性・有害性等の調査と対策が法的に求められています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei14/dl/kaizenjirei.pdf

 

作業者が危険区域に立ち入る必要がない自動化システムの導入により、エネルギー消費の削減と同時に安全性の向上が図られています。
参考)http://thescipub.com/pdf/10.3844/ajassp.2017.60.80

 

保守管理システム
圧延機の長期安定稼働には、予防保全とタイムリーな修理が重要です。ロールの摩耗、軸受の劣化、油圧システムの不具合など、様々な要因による故障を未然に防ぐため、定期的な点検と部品交換が実施されています。

 

現代の工場では、センサーによる振動監視や温度管理により、設備の状態を常時モニタリングし、計画的な保守作業を実施する予知保全システムが導入されています。これにより、突発的な設備停止を最小限に抑え、生産効率の最大化を図っています。

 

圧延機械は金属加工業界の基盤技術として、今後も技術革新が続けられ、より高効率で安全な生産システムの実現が期待されています。