アルミtig溶接の設定を板厚・電流・周波数で完全解説

アルミtig溶接の設定は鉄やステンレスとは根本的に違います。電流値・交流周波数・バランス設定・タングステン選びまで、現場で失敗しないための具体的な数値と手順を解説。あなたの溶接設定は本当に正しいですか?

アルミtig溶接の設定を板厚・電流・周波数ごとに解説

ステンレスでうまくいったから、アルミも同じ設定でいける」は大きな誤りで、その設定ミスが溶け落ちや大量のブローホールを引き起こし、再製作コストが1案件あたり数万円以上になることもあります。


🔧 この記事でわかること
交流(AC)設定の基本

アルミTIG溶接は必ずAC(交流)で行う。周波数・バランス・電流の3つを板厚に合わせて設定する。

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タングステン電極と溶接棒の選び方

純タングステン(純タン)がAC溶接向きの基本。溶接棒はA4043とA5356を用途で使い分ける。

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下処理・シールドガス・失敗ゼロのコツ

酸化皮膜の除去、アルゴンガス流量の適正管理、ブローホール対策まで現場で即使える手順を解説。


アルミTIG溶接に必須の交流(AC)設定と電流の基本


アルミTIG溶接で最初に押さえるべき大前提は、「交流(AC)モードで溶接する」という点です。鉄やステンレスは直流(DC)が基本ですが、アルミには「酸化皮膜クリーニング作用」が必要なため、必ず交流に切り替えます。これが原則です。


アルミ表面には融点が約2,000℃と非常に高い酸化アルミニウム(Al₂O₃)が自然に形成されています。一方、アルミ母材本体の融点はわずか約660℃。この「皮膜は溶けない、母材は溶ける」という二重構造が、アルミ溶接を難しくしている最大の理由です。交流TIGのEP(電極プラス)半波が、この酸化皮膜を叩き砕く「クリーニング作用」を発生させます。


次に電流値の設定です。現場でよく使われる目安は「板厚1mmにつき約40A」。ただしアルミは鉄と比べて熱伝導率が約3倍と高いため、鉄と同じ感覚で電流を上げると熱がすぐ全体に広がり、母材が穴あきや変形を起こします。


| 板厚 | 目安電流(AC) | 備考 |
|---|---|---|
| 1.0mm | 40〜60A | 極薄板。パルス推奨 |
| 2.0mm | 70〜100A | 薄板の標準 |
| 3.0mm | 100〜130A | 構造材の多くがこの範囲 |
| 5.0mm | 150〜200A | 中厚板。予熱検討を |
| 10mm以上 | 200〜240A前後 | 必ず予熱(150〜200℃)|


板厚10mm以上の厚物を溶接する際、「高電流で一気に溶かせばいい」と考えがちですが、それは間違いです。溶接管理技術者の実績によると、厚物アルミ(例:A5052、T=30mm)は235Aで交流周波数200Hz、さらに200℃予熱を加えることで品質を確保しています。厚物こそ低電流+予熱が原則です。


また、空冷トーチは200A以下が適正使用範囲とされています。200Aを超える作業では水冷トーチへの切り替えを検討すべきです。高温状態でキャップの締め緩めを繰り返すとネジ山が磨耗し、タングステンの固定不良を引き起こします。これは使えそうな知識ですね。


溶接開始・終了時はアップスロープ/ダウンスロープ機能を活用しましょう。開始時に設定電流の1/3程度から立ち上げることで始端の溶け落ちをぎ、終了時のクレータ割れや収縮孔の発生を大幅に減らせます。


参考:交流TIG設定とシーケンス機能の解説(モノタロウ 溶接の基礎講座)
https://www.monotaro.com/note/readingseries/yousetsukiso/0203/


アルミTIG溶接の交流周波数とACバランスの具体的な設定方法

多くの溶接作業者が「電流さえ合えば大丈夫」と思いがちですが、アルミTIG溶接では「交流周波数」と「ACバランス(EN比率)」の設定も仕上がりを左右する重要な要素です。意外ですね。


**交流周波数の影響と目安**


交流周波数とはAC電流の1秒あたりの切り替え回数(Hz)のことです。この設定がビードの幅と溶け込みの深さを大きく変えます。


| 周波数 | 特性 | 適した用途 |
|---|---|---|
| 50〜80Hz(低め) | アーク幅広・溶け込み浅め | 広い面積の溶接、厚板 |
| 100〜150Hz(中程度) | バランス型・汎用 | 一般的な構造材(2〜5mm) |
| 200Hz以上(高め) | アーク集中・溶け込み深く細いビード | 薄板、狭い個所、精密溶接 |


現場で多く使われているのは80〜100Hz前後で、「多少高めに設定した方がやりやすい」という声も多いです。これが基本です。厚物の場合は200HzでAr+Heガス混合を使い、狭いビードで深く溶け込ませる手法もあります。


**ACバランス(EN比率)とは何か**


交流TIG溶接では、電流の半波ごとに「電極マイナス(EN)」と「電極プラス(EP)」が切り替わります。ENはタングステンを冷やして溶け込みを深くする側で、EPはクリーニング作用を発揮して酸化皮膜を除去する側です。


ACバランスの設定でこのEN/EPの比率を調整できます。クリーニング幅を広くしたい(EP比率を上げる)とタングステンへの熱入力が増えて電極先端が過熱しやすくなります。逆にEN比率を上げると(75% EN/25% EP以上)、電極への熱負荷を減らしつつ溶け込みを確保できます。通常の設定は「ほぼ中間の標準位置」で問題ありません。


**高周波周波数の思わぬ落とし穴**


交流周波数を高くするとアーク集中性が増すメリットがある一方、ビード幅が狭くなりすぎてクリーニング幅が不足するリスクがあります。特に酸化皮膜が濃い材料では、下処理なしに高周波だけに頼ることはできません。高周波はあくまで「補助」です。


参考:交流周波数と溶接結果の関係(日本溶接協会 Q&A)
https://www-it.jwes.or.jp/qa/details.jsp?pg_no=0070010190


アルミTIG溶接でのタングステン電極・溶接棒の正しい選び方

電流や周波数の設定がバッチリでも、タングステン電極や溶接棒の選択を間違えると、アーク不安定・電極溶損・ビード不良といったトラブルが発生します。これは見落とされがちなポイントです。


**タングステン電極の種類と選択**


TIG溶接用タングステン電極には主に4種類あります。


🟢 **純タングステン(純タン)**
交流TIG溶接(アルミ溶接)の標準電極です。EP半波の熱でタングステンが丸くなる(ボール状になる)性質を持ち、これがアルミのAC溶接では安定したアークを生み出します。消耗が激しいのが欠点ですが、アルミには純タン一択という現場も多いです。


⚪ **セリア入りタングステン(セリタン)**
交流・直流どちらでも使用可能で、アークスタート性が優れています。近年は「アルミも含めて万能に使いたい」というユーザーに支持されています。純タンよりアーク集中性が高い傾向があり、薄板の細いビードにも対応しやすいです。


🔴 **トリア入りタングステン(トリタン)**
直流専用として最もポピュラーですが、交流で使用した場合は電極先端が激しく変形するため、アルミのAC溶接には不向きです。誤って使用しているケースも散見されます。注意が必要ですね。


**タングステン径と電流の適合**


| 電極径 | 適用電流(AC) |
|---|---|
| φ1.6mm | 〜100A |
| φ2.4mm | 80〜220A |
| φ3.2mm | 160〜300A |


電流に対して細すぎる電極を使うと先端溶損が激しくなり、タングステンの粒が溶接部に混入する「タングステン介在物」という欠陥を引き起こします。電極径を適正に合わせることが条件です。


**溶接棒(溶加材)の選択:A4043 vs A5356**


| 溶加材 | 系統 | 主な用途 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| A4043-BY | Al-Si系 | 6000系合金、鋳物の溶接 | 耐高温割れ性◎、流動性高い |
| A5356-BY | Al-Mg系 | 二輪車、車両、5000系合金 | 強度・靭性高い、延性あり |


A4043は6000系(A6061など)の溶接で発生しやすい「高温割れ」を抑えるのに有効です。A5356は強度が必要な構造部材や車両フレームに多用されます。母材の合金番号を確認して選ぶことが基本です。


参考:アルミ溶接材料の選び方(軽金属溶接協会 対応の上村製作所 解説ページ)
https://www.kamimura.co.jp/faq/arumizairyou-jis-z-3604/


アルミTIG溶接の下処理・シールドガス設定と失敗を防ぐ手順

設定値が完璧でも、下処理とシールドガス管理がずさんなら溶接品質は確実に落ちます。これは数字では見えにくい部分ですが、現場でのトラブルの多くはここに起因しています。


**酸化皮膜除去の正しい手順**


溶接前の下処理は「アセトン脱脂→ステンレスブラシで酸化皮膜除去→即溶接」が基本の流れです。ここで絶対に守るべきポイントが2つあります。


まず使うブラシは「アルミ専用のステンレスブラシ」に限ること。鉄用のブラシを流用すると鉄粒子がアルミ表面に付着し、溶接部に不純物が混入します。これが意外にも現場でよくある失敗です。


次に「清掃したら即溶接」を徹底すること。アルミは大気中の酸素と反応するのが非常に速く、清掃後わずか数時間で酸化皮膜が再形成されます。段取りを整えてから清掃し、時間を置かずに溶接を始めましょう。


**シールドガスの設定:流量と純度が命**


アルミTIG溶接のシールドガスはアルゴン(Ar)100%が基本です。厚物溶接ではAr+He(ヘリウム混合)を使って入熱効率を高めることもあります。


流量の目安は**ノズル内径(mm)×0.5〜1(L/min)**が一般的です。例えばノズル径13mm(1/2インチ相当)ならば、流量は8〜12L/min程度が適正範囲です。風が当たる環境では流量を1〜2L/min増やし、ノズル径を広いものに変えてシールド面積を確保します。


| シールドガス流量不足の症状 | 原因 |
|---|---|
| ビードが黒ずむ・くすむ | 酸化の進行 |
| 表面に白い粉状の付着 | 酸化アルミの残留 |
| アークが不安定 | シールド不足によるアーク乱れ |


プリフロー(溶接前にガスを流す時間)とアフターフロー(溶接後もガスを流す時間)の設定も忘れずに行います。プリフローは「溶接開始位置の黒い酸化物がなくなるまで」、アフターフローは「電極先端が銀白色を保つまで」が設定の目安です。これだけ覚えておけばOKです。


**ブローホール(気孔)を防ぐ3つの対策**


アルミ溶接でのブローホールは主に「水素」が原因です。水分・油分・湿気が溶融池に混入し、凝固時に水素ガスが閉じ込められて内部空洞になります。外観ではわかりにくく、強度不足として後から発覚するのが厄介な点です。


✅ 対策①:溶接前にアセトンまたはアルコールで母材と溶接棒を脱脂
✅ 対策②:湿度の高い日は作業前に母材を50〜80℃程度で予熱して水分を飛ばす
✅ 対策③:シールドガスホース内の水分を排出するため、溶接前に数秒ガスを流してから作業を始める


参考:アルミ溶接のブローホール対策まとめ(株式会社上村製作所)
https://www.kamimura.co.jp/aluminum-welding-defects/


鉄・ステンレス熟練者がアルミTIG溶接でやりがちな設定ミス5選

「鉄でバリバリやってきたから、アルミも問題ない」という感覚は危険です。実際に熟練の溶接者でもアルミに切り替えた途端に品質トラブルを起こすケースが後を絶ちません。現場で繰り返される設定ミスを具体的に確認しておきましょう。


**ミス① DCのまま溶接を開始する**


最も多い初歩的ミスです。鉄・ステンレスと同じ直流(DC)モードで溶接を始めると、アークは出るものの酸化皮膜のクリーニングが一切行われず、溶接部がくっつかないか、強度の著しく低い溶接になります。アルミはACに切り替えることが絶対条件です。


**ミス② 電流を高くすれば厚板でも溶け込む、と思っている**


鉄溶接では「入熱を上げれば溶け込む」という経験則が通用しますが、アルミは違います。熱伝導率が鉄の約3倍あるため、電流を過大にすると溶接部より周辺が先に加熱され、母材がどろどろに溶け落ちます。厚板ほど予熱+低電流が正解です。つまり「高電流は厚板に有効」という常識がアルミでは逆転します。


**ミス③ 直前に使った鉄用ワイヤーブラシでアルミを磨く**


前述のとおり、鉄用ブラシを使うと鉄粒子がアルミ表面に残ります。これが溶接中に溶融池に混入し、ビードの汚れや強度低下を引き起こします。ブラシはアルミ専用を必ず用意することが条件です。


**ミス④ トリタン(赤)電極をそのまま使う**


鉄・ステンレスで主力のトリタンをアルミのAC溶接に使用すると、EP半波の強い熱でタングステン先端が急激に変形し、アークが乱れます。最終的にタングステンが溶融して溶接部に混入する「タングステン介在物」という重大欠陥を引き起こすリスクがあります。電極の付け替えは必須です。


**ミス⑤ アフターフローを設定せず、溶接直後にガスを止める**


溶接が終わった直後のタングステン電極はまだ高温状態にあります。ガスを即座に止めると大気中の酸素と反応し、電極先端が黒く酸化します。酸化した電極は次のアークスタートが悪くなるうえ、電極の消耗を早めます。アフターフロー時間は5〜15秒を目安に設定しましょう。電極の銀白色が維持できているかどうかで確認できます。


これらは「知っていれば防げるミス」ばかりです。鉄やステンレスで培ってきた技術はアルミでも活きますが、「アルミ固有のルール」を上乗せして覚えることが、安定した品質への近道です。


参考:TIG溶接電極の種類と選定(商工商事)
https://shokoshoji.com/tungsten/


十分な情報が集まりました。これで記事を作成します。




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