電源を切っても位置がわかると思っているなら、バッテリー切れで加工ラインが止まる前に読んでください。

アブソリュートエンコーダは、回転軸の角度に応じて「ここは○番地」と一意のデジタルコードを直接出力する位置検出デバイスです。仕組みを理解するには、インクリメンタル方式との違いから入るのが最も早い道です。
インクリメンタルエンコーダは、回転するたびにパルスを積み上げて位置を計算します。地図で言えば「ここから100m進んで左に曲がれ」という相対的な案内です。電源を切るとパルスの積算値がリセットされるため、再起動時には必ず原点まで軸を戻す「原点復帰」が必要になります。CNC旋盤やマシニングセンタで朝一番に原点復帰をしているのは、まさにこの特性によるものです。
一方、アブソリュートエンコーダは「東京都千代田区○丁目○番地」という絶対住所を直接出力します。電源を入れた瞬間に現在位置のコードが読み取れるため、原点復帰動作が原理的に不要です。これが「アブソリュート(絶対値)」という名称の由来です。
内部構造を見ると、回転スリット板に同心円状の複数のトラック(帯)が刻まれています。例えば4本のトラックがあれば2進数4ビットで16通り、8本あれば8ビットで256通りの絶対角度を識別できます。外周のトラックほど細かい角度を担当し、内周のトラックが大きな桁を担当するという構造です。近年のサーボモーター用エンコーダでは20ビット以上(100万分割超)の分解能を持つものも珍しくありません。
つまり、分解能はビット数で決まります。
| ビット数 | 分割数 | 1分割あたりの角度 |
|---|---|---|
| 10 bit | 1,024 | 約0.35° |
| 13 bit | 8,192 | 約0.044° |
| 17 bit | 131,072 | 約0.003° |
| 20 bit | 1,048,576 | 約0.00034° |
17ビットの分解能は、1回転を約13万分割することになります。時計の秒針が1秒で動く角度(6°)を約2,000段階に分けて検出できるイメージです。これは意外ですね。
オムロン制御機器|ロータリエンコーダ編(原理と構造):スリット円板の構造、グレイコードとバイナリコードの比較など基礎原理を詳しく解説
アブソリュートエンコーダのスリット板には、通常の2進数ではなく「グレイコード(交番二進符号)」と呼ばれる特殊なコード体系が採用されています。これはなぜでしょうか?
通常の2進数では、「0111」(7)から「1000」(8)に切り替わるとき、4つのビットが同時に変化します。もし読み取りのタイミングが0.1ミリ秒でもずれると、一瞬「0000」(0)や「1111」(15)などの全く誤った値を出力してしまうリスクがあります。金属加工の現場で工具補正値が急に誤った値を拾ったら、想像するだけで背筋が寒くなります。
グレイコードはこの問題を構造的に解決しています。どの数値から次の数値に移っても、必ず1ビットしか変化しません。仮に読み取りタイミングがわずかにずれても、「今の値か、次の値か」の2択にしかならず、大きく外れた誤値を出す可能性が排除されます。
以下は4ビットの場合の比較です。
| 10進数 | 2進数 | グレイコード |
|---|---|---|
| 6 | 0110 | 0101 |
| 7 | 0111 | 0100 |
| 8 | 1000(4ビット変化) | 1100(1ビットのみ変化) |
| 9 | 1001 | 1101 |
グレイコードが基本です。
ただし、グレイコードは演算には向かないため、コントローラ側でXOR(排他的論理和)を用いてバイナリコードに変換して使います。変換ルール自体はシンプルで、最上位ビットをそのまま流用し、2ビット目以降はひとつ上のバイナリビットとグレイコードのビットをXOR演算するだけです。この変換はFPGAやマイコン内部で瞬時に行われるため、ユーザーが意識する必要はありません。
旭化成マイクロシステムズ(AKM)|インクリメンタル方式とアブソリュート方式の技術解説:相対角度・絶対角度の違い、パラレル出力とシリアル出力の比較など
アブソリュートエンコーダには、検出範囲によって「シングルターン」と「マルチターン」の2種類があります。金属加工の現場では用途に応じた使い分けが重要で、ここを誤ると装置設計のやり直しになります。
シングルターン(単回転)アブソリュートエンコーダは、1回転(0〜360度)の範囲内での絶対位置を検出します。360度を超えると値は再び0に戻ります。高い分解能(最大16ビット=65,536分割)が得られ、ロータリーテーブルの割り出し、スピンドルの回転角管理など「1回転以内の制御で完結する用途」に最適です。構造が比較的シンプルなため、コンパクトで安価な傾向があります。
マルチターン(多回転)アブソリュートエンコーダは、1回転以内の角度データに加えて、累積の回転数もカウントして保持します。ボールねじやラックのような「何回転もする機構の絶対位置」を管理する場合に不可欠です。
マルチターンで回転数を記憶する方式は主に3種類あります。
金属加工工場のように、切削油や粉塵・振動が多い環境では、バッテリー交換忘れによる停止リスクを避けるためにウィーガンド式が注目されています。これは使えそうです。
ケーメックス・オートメーション|アブソリュート方式ロータリーエンコーダの基礎知識と選定ガイド:シングルターン・マルチターンの詳細比較、ウィーガンド式の原理説明など
アブソリュートエンコーダの検出原理には、大きく「光学式」と「磁気式」の2種類があり、それぞれ得意な環境が異なります。金属加工の現場で選定を誤ると、短期間での故障や誤動作につながります。
光学式アブソリュートエンコーダは、スリット板(ガラスまたは金属製)に光を透過させてコードを読み取ります。スリット加工に写真製版技術を使えるため、1枚の円板に多数のトラックを精度よく刻むことができ、高分解能・高精度に優れます。サーボモーターや半導体製造装置など、清潔でクリーンな環境では非常に優秀な性能を発揮します。
ただし、光学系には弱点があります。切削油のミスト、金属粉塵、振動・衝撃が日常的に発生する金属加工の現場では、ガラス製スリット板が割れたり、光学素子が汚れて信号不良が発生するトラブルが報告されています。IP65〜IP67の防塵防水対応モデルを選ぶことが最低条件です。
磁気式アブソリュートエンコーダは、着磁されたドラムや磁気ターゲットと、ホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサで回転角を検出します。光学系がないため油や粉塵に強く、振動・衝撃にも高い耐性があります。耐環境性が基本です。
かつては磁気式の分解能は光学式に劣るとされていましたが、近年は4素子の差動演算アルゴリズム(QuattroMag®など)を採用することで光学式に匹敵する16ビット精度を磁気式で実現するモデルも登場しています。金属加工設備のような過酷な環境であれば、磁気式が原則です。
以下に選定の目安を整理します。
| 比較項目 | 光学式 | 磁気式 |
|---|---|---|
| 最大分解能 | 非常に高い(20bit以上も) | 高い(最大16〜17bit) |
| 耐油・耐塵性 | 弱い(IP対策モデル要) | 強い(構造的に有利) |
| 耐振動・衝撃性 | やや弱い(ガラス破損リスク) | 強い(非接触) |
| 適した環境 | 清潔なクリーン環境 | 金属加工・屋外・重機 |
| コスト傾向 | 比較的高い | 中〜高(堅牢性分) |
機械制御の基礎:エンコーダー|光学式・磁気式の構造、A相B相・Z相、シリアル通信方式など機械エンジニア向けの詳細技術解説
アブソリュートエンコーダが内部で生成した絶対位置データを、PLCやサーボアンプへどのように伝送するか。この出力インターフェースの選択が、金属加工設備への組み込みを成功させる上で重要な要素です。原理は同じでも、インターフェースの違いで配線工数と応答速度が大きく変わります。
パラレル出力(BCD/バイナリ/グレイコード直出力)は、各ビットを個別の信号線で同時に出力する方式です。構造が単純でコントローラ側の処理も容易ですが、たとえば12ビットのエンコーダなら12本の信号線が必要になります。分解能が上がるほど配線が増えるため、現在では比較的低分解能の用途に限定されつつあります。
SSI(同期シリアルインターフェース)は、クロック信号に同期してシリアルデータを伝送する方式です。信号線が少なく(クロック2本+データ2本の計4本が基本)、長距離配線でもノイズに強い差動伝送が可能です。CNC工作機械やサーボドライバとの組み合わせで広く使われています。
EnDat / BiSSは、双方向通信が可能な高機能シリアルインターフェースです。位置データの取得だけでなく、エンコーダの内部パラメータ設定や診断情報の読み出しも1本のシリアルラインで実現できます。予防保全(エンコーダの状態監視)を行いたい工場にとって有用です。
産業用イーサネット(EtherCAT / PROFINET / EtherNet/IP)は、ネットワーク通信プロトコルを使いマイクロ秒単位の同期制御を実現します。最新モデルではファームウェアの切り替えで1台のエンコーダを複数のプロトコルに対応させる「ユニバーサル産業イーサネット」対応製品も登場しており、国内外の設備仕様の違いに柔軟に対応できます。
IO-Linkは、非シールドの標準ケーブル3本で双方向通信が可能な方式です。エンコーダのパラメータをコントローラから書き換えたり、アラーム情報を収集したりできるため、インダストリー4.0やスマートファクトリー化の流れに乗った活用が進んでいます。食品機械や医療機器のように高頻度で設備を洗浄する環境でも採用が増えています。
金属加工設備への組み込みでは、既存のサーボアンプやPLCのインターフェース仕様を必ず先に確認しましょう。サーボドライバ側がSSI対応であれば、EnDat対応のエンコーダをそのまま接続することはできません。インターフェースの不一致はトラブルの第一位です。

アイリスオーヤマ リンサークリーナー コンパクトモデル 【テレビ放映商品】 染み抜き 布洗浄機 カーペットクリーナー 染み抜き 布洗浄機 温水対応 RNS-300