abs 材の加工と特徴、アクリルやポリカとの比較と注意点

ABS材の基本特性から切削や接着などの加工方法、アクリルやポリカとの違いまでを網羅。金属加工のプロも知っておきたい、樹脂加工のノウハウを深掘りします。あなたの知らないABS材の可能性とは?

abs 材の加工と特徴

この記事でわかるABS材のすべて
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優れた加工性と機械的特性

切削、接着、塗装、メッキまで。ABS材が持つバランスの取れた性質と、加工のしやすさの秘密を解説します。

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アクリル・ポリカとの徹底比較

強度、耐熱性、コストは?他の主要な樹脂と特性を比較し、最適な材料選びをサポートします。

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意外な用途と環境への配慮

家電や自動車部品だけじゃない、楽器や医療機器、さらにはリサイクル技術まで、ABS材の新たな一面に迫ります。

abs 材の切削加工における注意点とコツ

 

ABS材は、アクリロニトリル(A)、ブタジエン(B)、スチレン(S)の3つの成分からなる熱可塑性樹脂であり、そのバランスの取れた物性から「万能プラスチック」とも呼ばれています 。特に、金属加工に従事されている方々にとっては、その加工性の良さが注目されます 。しかし、樹脂特有の性質を理解せずに金属と同じ感覚で加工すると、思わぬ失敗につながる可能性があります 。
最も重要な注意点は「熱」の管理です 。ABS材は比較的融点が低いため、切削速度が速すぎると摩擦熱で材料が溶けてしまい、切りくず(チップ)が工具に絡みついたり、加工面が荒れたりする原因となります 。これを防ぐためには、以下の点がコツとなります。

  • 適切な切削条件の設定金属加工に比べて、切削速度と送り速度を落とすことが基本です 。高回転・高速送りは避け、材料が溶けない最適な条件を見つけることが重要です。
  • 工具の選定:樹脂専用の切れ味の良い刃物を使用することが望ましいです 。すくい角や逃げ角が大きい、シャープな刃先の超硬エンドミルなどが適しています。摩耗した工具は熱を発生させやすいため、こまめなチェックが必要です。
  • 冷却:エアブローで切りくずを kontinuierlichに除去しつつ、工具と加工点を冷却するのが非常に効果的です 。切削油クーラント)も有効ですが、加工後の洗浄が必要になる場合があります 。
  • 切り込み量:一度に大きく削ろうとせず、切り込み量を少なくして段階的に加工することで、発熱を抑え、安定した寸法精度を維持できます。

これらのコツを押さえることで、バリの発生を最小限に抑え、寸法精度が高く、美しい仕上げ面のABS部品を製作することが可能になります 。特に試作品など、一点ものの製作においては、慎重な加工が求められます。
以下の参考リンクは、プラスチック全般の切削加工における基礎知識を解説しており、ABS材加工にも通じるポイントが記載されています。

 

切削加工の基礎知識:種類、特徴、加工のポイントを解説! | meviy | ミスミ

abs 材の接着と塗装、メッキなど表面処理の方法

ABS材は、成形後の二次加工が非常にしやすいという大きなメリットを持っています 。そのままでも美しい光沢を持つ表面ですが、接着、塗装、メッキといった表面処理を施すことで、さらに付加価値を高め、多様な製品に姿を変えます 。

接着方法

ABS材同士、または他の樹脂と接着する際には、いくつかの選択肢があります。用途や求める強度に応じて使い分けることが重要です 。

接着剤の種類 特徴 注意点
ABS専用接着剤 溶剤がABS材の表面を溶かして強力に溶着させる。最も強度が高い 。 乾燥に時間がかかる。完全に固まるまで1日以上置くことが望ましい 。
瞬間接着剤 シアノアクリレート系。手軽で素早く接着できる。PS(ポリスチレン)など異種材料との接着にも有効 。 衝撃に弱い場合がある。接着面積が小さいと強度が不足しやすい。
エポキシ系接着剤 2液を混合して使用するタイプ。充填効果があり、隙間のある部分の接着にも向いている。強度も高い 。 混合の手間がかかる。硬化時間が長い。

塗装とメッキ

ABS材は塗料の乗りが良く、美しい塗装仕上げが可能です 。プラモデルなどで馴染み深い方も多いでしょう。しかし、塗料に含まれる溶剤がABS材を侵し、部品が割れたり脆くなったりする「ケミカルクラック」を引き起こすリスクがあります。これを防ぐためには、以下の手順が推奨されます。

  1. 下地処理(プライマー・サーフェイサー)塗装の前に、必ず模型用などのサーフェイサーを吹き付け、塗料の溶剤が直接ABS材に触れないように保護膜を作ります 。スプレーを離し気味に、薄く何度も重ね塗りするのがコツです 。
  2. 本塗装:下地が完全に乾燥してから、本塗装を行います 。この際も、一度に厚塗りせず、薄く塗り重ねることで、ムラなく美しい仕上がりになります。

また、ABS材はプラスチックの中でも特にメッキ(めっき)適性に優れていることで知られています 。自動車のフロントグリルやエンブレム、水栓金具のシャワーヘッドなど、金属光沢を持つ多くの部品が、実はメッキ処理を施されたABS材です 。軽量でありながら金属のような高級感を出せるため、コストダウンとデザイン性の両立に大きく貢献しています。

abs 材とアクリル、ポリカの強度や性質の比較

ABS材は汎用性の高い優れた材料ですが、あらゆる点で最強というわけではありません 。特に、金属の代替として樹脂を検討する場合、アクリル(PMMA)やポリカーボネート(PC)といった他の代表的な樹脂との特性の違いを正確に理解し、用途に応じて最適な材料を選択することが不可欠です 。
以下に、それぞれの主な性質を比較した表を示します。

性質 ABS樹脂 (ABS) アクリル樹脂 (PMMA) ポリカーボネート (PC)
耐衝撃性 (強度) 👊 優れている やや劣る(硬くてもろい) 極めて優れている(アクリルの50倍)
透明性 不透明(着色が前提) 極めて高い(プラスチックで最高クラス) 高いがアクリルには劣る
加工性 🛠️ 非常に優れている(切削、接着、塗装など) 良好だが、割れやすい 良好だが、やや難しい
耐熱性 🔥 一般的(約70℃~100℃) やや低い(約60℃~90℃) 高い(約120℃~130℃)
耐候性 (UV) ☀️ 劣る(屋外使用では変色・劣化しやすい) 非常に優れている 優れている(UVカット処理品が多い)
価格 💰 中程度 比較的安価 比較的高価

まとめると、以下のような使い分けが考えられます。

  • 💎 透明性や見た目の美しさを最優先するなら「アクリル」:ディスプレイケースや水槽、看板などに適しています 。ただし、衝撃には弱いため注意が必要です。
  • 🛡️ とにかく頑丈さが求められるなら「ポリカーボネート」:ヘルメットのシールドや弾材料、カーポートの屋根など、過酷な環境で使われます。強度を要する機械部品にも最適です。
  • バランスの取れた優等生「ABS」:複雑な形状の筐体や内装部品、試作品など、強度、加工性、コストのバランスが求められる場合に最もパフォーマンスを発揮します 。二次加工を前提とする場合にも非常に有利です。

このように、それぞれの樹脂の「得意」と「不得意」を把握することが、高品質なものづくりへの第一歩と言えるでしょう。

abs 材の意外な用途とリサイクルにおける環境への影響

ABS材と聞くと、多くの人が家電製品の外装や自動車の内装、あるいは子供のころに遊んだプラモデルを思い浮かべるでしょう 。これらは確かにABS材の代表的な用途ですが、その優れた特性は、我々の生活のさらに意外な場所でも活躍しています。
例えば、以下のような用途はあまり知られていないかもしれません。

  • 🎵 楽器・楽器ケース:タンバリンやリコーダーといった楽器本体や、軽量さと頑丈さが求められるバイオリンケースなどにもABS材が使われています 。
  • 🏈 スポーツ・安全用品:耐衝撃性を活かし、ヘルメットやプロテクター、ダイビング用のシュノーケル部品など、身体を守るための重要なアイテムにも採用されています 。
  • 🏥 医療分野:医療機器のハウジングや操作パネル、持ち手部分など、衛生的で耐久性が求められる場面でもABS材は利用されています 。
  • ✈️ 航空宇宙分野:近年では、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)と組み合わせたサンドイッチ構造の材料として、ドローン(UAV)の構造部品に応用する研究も進められています 。

リサイクルと環境への影響

現代のものづくりにおいて、環境負荷への配慮は避けて通れないテーマです。ABS材は熱可塑性樹脂であるため、加熱して溶かすことでリサイクルが可能です。しかし、単に再生材として利用するだけでなく、より付加価値の高いものへ転換する「アップサイクル」の技術が注目されています。
特に興味深いのが、3Dプリンターの使用で発生したABSの廃材を再利用する研究です 。「エレクトロスピニング(電界紡糸)」という特殊な技術を用いることで、廃棄されたABSをナノメートルサイズの繊維からなる「ナノファイバー膜」へと生まれ変わらせることができます 。この膜は、空気中の微粒子を捕集するエアフィルターや、水を浄化するウォーターフィルターとしての応用が期待されており、廃棄物に新たな価値を与える先進的な取り組みとして注目されています 。
このように、ABS材は私たちの身近な製品を支えるだけでなく、未来の環境技術においても重要な役割を担う可能性を秘めた素材なのです。
以下の参考リンクは、ABS樹脂の基本的な特徴や用途について幅広く解説しています。

 

ABS | 特徴と主な用途 | プラスチック加工技術情報 | プラポート

 

 


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