5軸cncのメリット・デメリットと価格、種類、構造の違い

5軸CNCの導入は生産性を飛躍させますが、高コストや複雑さが課題です。メリット・デメリット、3軸との違い、価格相場を理解し、自社に最適な一台を選ぶには、どのような知識が必要になるのでしょうか?

5軸CNCのメリットとデメリット

5軸CNC加工機 導入のポイント
複雑形状の高精度加工

ワンチャックで多面加工が可能。段取り替え不要で高精度を維持し、インペラなどの複雑な部品製造に最適です。

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導入コストと技術習得

数千万〜1億円超の高額な初期投資に加え、複雑なプログラム作成にはCAMと専門オペレーターの育成が不可欠です。

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多様な機械構造と価格帯

ワークや目的に合わせ、テーブル回転型や主軸傾斜型など最適な構造を選定。価格も数百万円から様々です。

5軸CNC加工のメリットとデメリットの徹底比較

 

5軸CNC加工は、従来の3軸加工(X軸、Y軸、Z軸)に回転・傾斜の2軸を加えた加工方法で、金属加工業界に革命をもたらしました 。この技術がもたらすメリットは計り知れませんが、同時に導入には慎重な検討を要するデメリットも存在します 。

 

主なメリット

  • 段取り替えの削減と高精度化:最大のメリットは、一度のチャッキング(ワークの固定)で多面的な加工が可能な点です 。3軸加工では加工面を変えるたびに必要だった段取り替えが不要になるため、作業時間の大幅な短縮と、段取り誤差の発生リスク低減による精度の向上が実現します 。
  • 複雑形状の加工能力:航空宇宙産業で用いられるインペラやブリスク、医療分野の人工関節など、自由曲面やアンダーカットを含む複雑な形状の部品を一体で削り出すことが可能です 。
  • 工具の最適化と長寿命化:ワークに対して工具を常に最適な角度で当てられるため、突き出しの短い標準的な工具で加工できる場面が増えます 。これにより、工具のたわみが抑制されて加工精度が安定し、工具費の削減や長寿命化にも繋がります。
  • 高品質な加工面の実現:工具の先端ではなく側面(カッターパス)を利用して削ることで、切削速度が向上し、より滑らかで高品質な仕上げ面を得ることが容易になります 。

主なデメリット 😥

  • 高額な導入コスト:5軸加工機は、その複雑な構造と高性能な制御装置から、3軸加工機に比べて本体価格が非常に高額です 。数千万円から1億円を超える投資が必要になるケースも珍しくありません 。
  • プログラムの複雑化と専門知識:同時5軸加工のような複雑な動きを制御するNCプログラムは、手打ちで作成することはほぼ不可能です 。そのため、高性能なCAM(Computer-Aided Manufacturing)ソフトウェアの導入が必須となり、これを操作できる高度なスキルを持つオペレーターの確保や育成が課題となります 。
  • 重切削への不向き:回転軸や傾斜軸を持つ構造上、3軸加工機に比べて機械全体の剛性が低くなる傾向があり、大きな負荷のかかる重切削には向いていない場合があります 。
  • 設置スペースとメンテナンス:機械が大型になる傾向があり、広い設置スペースを要求されます。また、軸数が多い分、メンテナンスも複雑になり、精度維持のためのコストと手間が増加します。

以下の参考リンクは、大手工作機械メーカーDMG森精機による5軸加工の基本解説です。メリットや加工の種類が分かりやすく図解されています。

 

基礎から分かる5軸加工|DMG森精機

5軸CNC加工機の種類と構造の違い

5軸CNC加工機は、追加された2つの回転軸を「どの部分で担うか」によって、大きく3つの種類に分類されます 。それぞれの構造に特徴があり、加工するワークのサイズや形状、重さによって最適なタイプが異なります。3つの直線軸(X,Y,Z)に加え、X軸周りの回転をA軸、Y軸周りをB軸、Z軸周りをC軸と呼び、これらの組み合わせで機械の特性が決まります 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

種類 構造 特徴 主な用途
回転傾斜テーブル型
(テーブル/テーブル)
直線3軸は工具側にあり、回転・傾斜の2軸をテーブル側が担う 。AC軸またはBC軸の組み合わせが多い 。 比較的小型〜中型のワークに適しており、市場で最も一般的なタイプ。テーブルが動くため、重厚長大なワークの加工には不向き。 金型、試作品、複雑な小物部品など
回転傾斜ヘッド型
(ヘッド/ヘッド)
回転・傾斜の2軸を主軸ヘッド側が担う。テーブルは直線軸方向にのみ移動するか、固定されている 。 テーブルに重量物を載せても加工精度に影響が出にくいため、大型・重量ワークの加工に適している。 航空機部品、大型金型、建機部品など
混合型
(ヘッド/テーブル)
回転軸と傾斜軸を、主軸ヘッド側とテーブル側で1軸ずつ分担する 。例えば、主軸が傾斜し(B軸)、テーブルが回転する(C軸)といった構成。 両タイプの長所を組み合わせた構造。広い加工領域を確保しやすく、多様な形状に対応できる柔軟性を持つ。 自動車部品、多面加工が必要な中〜大型部品など

これらの構造を理解することは、自社の主力製品や将来的な加工ニーズに合った設備投資を行う上で極めて重要です。例えば、小物部品の高精度加工がメインであればテーブル回転型、将来的に大型部品の受注を見込むならヘッド型や混合型が視野に入ります。

 

5軸CNC加工の価格相場とコストを抑える方法

5軸CNC加工機の導入を考える上で最大の障壁となるのが、その価格です 。価格は、メーカー、機械のサイズ、剛性、搭載するCNC装置、オプション機能などによって大きく変動します 。

 

価格相場 💰

  • エントリーモデル:比較的安価なモデルでは、2,000万円台から見つけることが可能です 。例えば、松浦機械製作所の「MX-520」は約2,600万円という価格設定で、5軸加工の導入ハードルを下げています 。
  • ミドルレンジ:市場で最も競争が激しい価格帯で、4,000万円〜6,000万円程度が一つの目安となります。ある調査では、複数製品の平均価格が約4,962万円、中央値が約4,439万円というデータもあります 。
  • ハイエンドモデル:大型で高剛性、高精度な最先端のモデルになると、価格は8,000万円を超え、1億円以上になることも珍しくありません 。例えば、牧野フライス製作所の「V100S」は税込み8,900万円とされています 。

コストを抑えるための視点 📉

  1. 補助金の活用:新規設備投資には、国や地方自治体が提供する補助金制度(例:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」など)が利用できる場合があります。これらの制度を積極的に活用することで、初期投資の負担を大幅に軽減できます。
  2. 中古市場の検討:新品にこだわらず、状態の良い中古機を探すのも一つの手です。ただし、精度やメンテナンス履歴を慎重に確認する必要があります。
  3. 機能の厳選:自社の加工に不要なオプション機能は削ぎ落とし、必要な仕様にカスタマイズすることでコストを最適化します。「同時5軸」が本当に必要か、「割り出し5軸」で十分ではないか、という検討も重要です 。
  4. CAMソフトウェアの選定:機械本体だけでなく、CAMソフトウェアも大きなコスト要因です 。高機能なものは数百万円に達しますが、機能やサポート体制を比較検討し、自社に合ったコストパフォーマンスの高いソフトウェアを選ぶことが大切です。OneCNCのように、固定5軸オプションを80万円程度で提供しているメーカーもあります 。

以下の参考リンクは、5軸マシニングセンタの具体的な製品価格に触れている貴重な情報源です。相場観を養う上で役立ちます。

 

5軸マシニングセンタの購買価格は?具体的な製品の費用相場を調査

5軸CNC加工プログラムの複雑性と最新のCAMソフトウェア

5軸CNC加工の能力を最大限に引き出す鍵は、NCプログラムにあります。しかし、3軸に回転・傾斜の2軸が加わることで、そのデータ量は膨大かつ複雑になり、手作業でのプログラミングは現実的ではありません 。

 

プログラムの複雑性 🤯

  • 膨大なデータ量:滑らかな曲面を加工するためには、微小な直線や円弧の連続で工具経路を表現します。同時5軸加工では、これら無数の座標点(X,Y,Z)それぞれに対して、回転軸の角度(A,B,C)も同時に制御する必要があり、プログラムは数万〜数百万行に達することもあります。
  • 干渉(コーズ)のリスク:工具、ホルダー、主軸ヘッド、ワーク、治具、テーブルといった複数の要素が三次元空間で複雑に動くため、予期せぬ干渉(衝突)のリスクが3軸加工とは比較にならないほど高まります。
  • 工具先端点制御:工具の中心と刃先の位置を正確に算出し、プログラムされた経路通りに工具の先端を動かすための「工具先端点制御(TCP)」は、5軸加工に不可欠なCNCの機能です。この制御を使いこなす知識が求められます。
  • 工具径補正の無効化:意外と知られていない点として、同時5軸のNCプログラムでは多くの場合、CNC装置の「工具径補正」機能を使用しません 。工具の摩耗や交換に対応するため、CAM側で工具径を考慮した精密なツールパスを再計算し、プログラムを新たに出力する必要があります。

最新CAMソフトウェアの役割 💻
この複雑性を解決するのがCAM(Computer-Aided Manufacturing)ソフトウェアです。最新のCAMは、3Dモデルから効率的で安全な工具経路(ツールパス)を自動生成します。

 

  • ツールパス生成:荒取り、中仕上げ、仕上げといった工程ごとに、最適な加工戦略に基づいたツールパスを自動で作成します。
  • 干渉チェックとシミュレーション:機械全体の3Dモデルを読み込み、加工前にPC上で詳細なシミュレーションを行います。これにより、実際の機械で加工する前に干渉を検知し、プログラムを修正できるため、高価な機械やワークの損傷をぎます。
  • ポストプロセッサ:CAMが生成した標準的な工具経路データを、特定の工作機械が搭載するCNC装置(FANUC, Siemens, Heidenhainなど)の言語(Gコード)に変換する役割を担います。このポストプロセッサの精度が、加工品質を左右する重要な要素となります。

5軸CNC導入後の意外な落とし穴と人材育成の重要性

高価な5軸CNC加工機を導入しさえすれば、すぐに生産性が上がり、利益が生まれるわけではありません。むしろ、導入後に直面する「意外な落とし穴」を理解し、対策を講じることが、投資を成功させるための鍵となります。これは、機械という「ハード」だけでなく、それを扱う「ソフト」、すなわち人材の重要性を浮き彫りにします。

 

導入後の意外な落とし穴 🕳️

  • 「機械は動いているが、儲からない」状態:5軸加工機は段取り替えが少ないため、長時間連続で稼働させることが可能です。しかし、その間に次の加工プログラムの準備や、加工済み製品の検査、バリ取りなどの後工程が滞ってしまうと、工場全体で見たときにボトルネックが移動しただけで、生産性は向上しません。機械の稼働率だけでなく、全体のリードタイム短縮を意識する必要があります。
  • 衝突リスクへの過度な恐怖:高価な機械を破損させたくないという思いから、オペレーターが切削条件を過度に安全志向に設定し、機械の性能を全く引き出せないケースがあります。高精度なシミュレーションを信頼し、攻めの加工に挑戦できる環境と文化の醸成が不可欠です。
  • メンテナンスの複雑化とダウンタイム:回転軸や傾斜軸は、直線軸に比べて構造が複雑で、高い精度が求められます。定期的な精度測定やメンテナンスを怠ると、知らないうちに品質が低下している可能性があります。また、故障時のダウンタイムが長引けば、生産計画に深刻な影響を与えます。
  • 測定・検査工程の高度化:複雑な3次元形状の製品を正確に評価するためには、ノギスやマイクロメータといった従来の測定具では不十分です。三次元測定機などの高度な検査設備と、それを使いこなすスキルが新たに必要になる場合があります。

成功の鍵を握る人材育成 👨‍🏫
これらの課題を乗り越えるためには、以下の様な人材育成が不可欠です。

 

  1. CAMオペレーターの育成:単にCAMを操作できるだけでなく、加工原理を深く理解し、最適なツールパスや切削条件を導き出せる高度な技術者が必要です。外部の研修やセミナーへの参加を積極的に支援することが求められます 。
  2. 段取り・オペレーターの多能工化:5軸加工では、段取りの重要性が一層高まります。精度の高い治具の設計・製作能力や、複雑な動きをする機械の特性を理解し、異常を早期に察知できるオペレーターの育成が重要です。
  3. 部門間の連携強化:設計部門は、5軸加工の特性を理解した「加工しやすい設計(DFM: Design for Manufacturability)」を心掛ける必要があります。製造、品証、営業といった全部門が5軸加工という新たな武器をどう活かすか、共通認識を持つことが企業の競争力を高めます。

結局のところ、5軸CNC加工機という最高の道具を使いこなせるかどうかは、それを使う「人」にかかっているのです。

 

 


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