あなたが今使っている溶剤、実は次回の輸出検査で“禁止成分扱い”になるかもしれません。
中国でVOC(揮発性有機化合物)規制が加速したのは、2020年以降の「青空保衛戦3年計画」によるものでした。背景には、北京市や広東省を中心に深刻化していた光化学スモッグ問題があります。特に塗装や金属加工の工程で発生するトルエンやキシレンは、PM2.5の主因とされました。
つまり金属加工業にも直接的な影響が出ているということです。
2021年時点でVOC排出基準を満たさない工場は全国で16,000件を超え、うち約20%が操業停止命令を受けています。広東省では一度の違反で最高50万元(約1,100万円)の罰金となることも。厳しいところですね。
同時に、省政府ごとに追加基準が設けられ、地方差も生まれています。たとえば上海市では、塗装ブースのVOC回収率が85%未満だと再稼働が認められません。85%という数字が目安ですね。
VOC違反は「排出量」だけでなく、「成分含有率」でも判定されます。つまり、溶剤や洗浄液に閾値以上のトルエン・酢酸エチルを含むだけで摘発対象になり得ます。実際、江蘇省の金属部品メーカーでは2023年にわずか0.3%成分超過で罰金20万元の事例が報告されています。痛いですね。
違反判定は環境監視局の抜き打ち検査で行われ、サンプルが現場から直接採取されます。このため「宣言上は基準内だが実際には超過」といったグレー運用はもはや通用しません。つまり抜け道はありません。
また、同年の制度改定で「企業信用スコア制」が導入され、環境違反歴があると部材調達や補助金申請に大きな制約を受けます。たとえば設備補助金は2年間申請できません。結論は、違反すると金より痛い損失になるということです。
現場で最も影響が大きいのは、塗料・脱脂工程での溶剤変更です。環境配慮型塗料の中でも、中国市場で認可されている代表的な製品には「Akzo Nobel EcoRange」「PPG Envirobase」などがあります。これらはVOC含有量が従来比で約40~70%削減されています。
ただし導入コストは上昇します。例えば、一般溶剤が1リットルあたり25元だったのに対し、低VOC品は平均で37元前後に上がる傾向です。単純計算で月500リットル使用する工場なら、年間約7万2,000元(約160万円)の追加コストが発生します。高いと感じるかもしれません。
しかし、長期的には「操業停止リスクゼロ」「信用スコア維持」「環境補助金の対象」などの金銭的メリットが得られるため、結果的に得をするケースが多いです。つまり投資の性格に近いわけです。
特に日本から中国へ加工製品や構造部材を輸出している企業は、VOC規制を軽視できません。2024年には、中国の輸入検査で「VOC含有率報告書」の提出が義務化され、対象は金属製品でも「防錆塗装部」「封入溶剤部」がある場合に拡大されました。報告書がなければ通関保留です。
つまり、輸出側の塗装材料管理まで把握されるようになったということです。実際、蘇州の税関では、書類不備による輸入遅延件数が5か月で約1,200件にのぼりました。平均遅延日数は8日です。遅延が長いですね。
これを防ぐには、材料メーカーから発行されるVOC成分証明書と、安全データシート(SDS)をセットで用意して送付することが重要です。SDSは無料で入手できるものもあります。書類管理が鍵です。
今後5年間(2026~2030年)の環境政策では、「低VOC塗材と水性塗装の普及率を75%以上に」という明確な目標が掲げられています。つまり規制は緩まないということです。
また、AIを活用した排出監視装置の導入が義務化地域も拡大見込みです。すでに広東省では金属加工業のうち従業員100人以上の工場がAI計測システムの装着を義務づけられました。導入費は平均10万元前後ですが、補助金対象です。補助金が条件です。
ここで重要なのは「中国全体が一律ではない」という点です。つまり、都市や業種単位で異なる基準を読み解く力が求められます。あなたの工場に合った規制を理解することが、最大のコスト回避策です。
環境省中国部局公式発表の最新資料(罰金・制度改正の具体数字に関する一次情報)
https://www.mee.gov.cn/