設計BOMの役割と重要性を理解し、製造プロセスを革新する
設計BOMと製造BOM 3つの重要な違い
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目的の違い
設計BOMは「製品の機能・仕様」を定義。製造BOMは「製品の製造方法・手順」を定義します。
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構成・粒度の違い
設計BOMは機能単位の階層。製造BOMは組立順序や工程単位の階層で構成されます。
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主管部門の違い
設計BOMは設計部門が、製造BOMは生産技術部門や製造部門が責任を持ちます。
設計BOMとは?目的も構成も異なる製造BOMとの根本的な違い
設計BOM(E-BOM: Engineering Bill of Materials)とは、その名の通り、製品の設計段階で作成される部品表のことです 。製品がどのような部品で構成され、どのような機能を持つのかを定義するためのもので、いわば「製品の
設計図 」そのものと言えるでしょう 。主にCADデータと連携して作成され、部品の仕様や図面番号、
材質 、リビジョン(改訂履歴)といった技術情報が集約されています 。設計部門が中心となって管理し、製品の機能や性能を保証することが最大の目的です 。
一方、製造BOM(M-BOM: Manufacturing Bill of Materials)は、その製品を「どのように製造するか」という視点で構成された部品表です 。設計BOMの情報を基に、実際の製造工程や組立順序、加工方法、使用する設備、リードタイムといった生産に関わる情報が付加されます 。つまり、製造現場での作業指示や部品手配、生産スケジューリング、原価計算などに使われる、より実践的な情報なのです 。
この二つのBOMの最も大きな違いを、以下の表にまとめました。
観点
設計BOM (E-BOM)
製造BOM (M-BOM)
目的
製品の機能・性能の定義、設計意図の表現
製造実行、部品手配、原価計算
構成の視点
機能単位、論理的な親子関係
製造工程、組立順序
情報の粒度
粗い(サブアセンブリ単位など)
細かい(個々の部品、購入品、加工手順など)
主管部門
設計部門、開発部門
生産技術部門、製造部門、資材部門
主な管理項目
図面番号、仕様、材質、設計変更履歴
工程順、使用設備、リードタイム、仕入先
このように、同じ製品を扱っていても、E-BOMとM-BOMでは目的も情報の粒度も全く異なります 。この違いを理解しないままでは、後述する連携や統合はうまくいきません。E-BOMが「What(何を作るか)」を定義するのに対し、M-BOMは「How(どう作るか)」を定義するものだと捉えると、その役割の違いがより明確になるでしょう 。
設計BOMから製造BOMへ。連携・統合を阻む壁と具体的な手法
設計部門が作成したE-BOMを、製造部門がM-BOMとして再構築するプロセスは、多くの製造業で課題を抱えています。この連携がうまくいかないと、設計変更の伝達漏れによる手戻りや、部品手配のミス、生産計画の遅延など、深刻な問題を引き起こす可能性があります 。連携を阻む主な壁としては、以下のような点が挙げられます。
情報の分断と二重管理 😥: 設計と製造で別々のExcelファイルやシステムでBOMを管理しているため、情報が分断され、どちらが最新か分からなくなります。結果として、両方のデータを更新する手間が発生します 。
部門間のコミュニケーション不足 🗣️: 設計部門は「機能」を、製造部門は「作りやすさ」を優先するため、互いの要求を理解せずに対立してしまうことがあります。これがBOM変換作業を属人化させる原因にもなります。
品番体系の不統一 🔢: 同じ部品でも、設計部門と製造部門で異なる品番を使っているケースがあります。これにより、データの突合が困難になり、手作業での変換に多大な工数がかかってしまいます 。
では、これらの壁を乗り越え、E-BOMとM-BOMをスムーズに連携させるにはどうすれば良いのでしょうか。その具体的な手法として、以下の4つのステップが有効です。
Step1: 粒度の調整 E-BOMの機能単位の構成を、M-BOMの製造工程単位に分解・再構成します。例えば、E-BOMでは一つのユニットとして扱われている部品群を、M-BOMでは組立順序に従って複数の工程に分割します 。
Step2: 属性情報の追加 E-BOMにはない、製造に必要な情報(仕入先、単価、リードタイム、加工情報など)をM-BOMに追加します。このとき、どの情報をどちらのBOMが持つべきか、責任分界点を明確にすることが重要です 。
Step3: 工程・用途の紐付け BOP(Bill of Process: 工程表)やルーティング(作業手順)情報とM-BOMを連携させ、「どの部品を」「どの工程で」「どの順番で」使うのかを明確に定義します 。
Step4: 改訂と同期のルール化 設計変更(ECO: Engineering Change Order)が発生した際に、E-BOMの変更をどのタイミングで、どのようにM-BOMに反映させるかのルールを定めます。PLM(製品ライフサイクル管理)システムなどを活用し、変更履歴を正確に管理・同期させることが理想です 。
このE-BOMからM-BOMへの変換プロセスを効率化・自動化することが、製造業のDXにおける重要な一歩となります。
BOMの連携や統合に関するより詳細な技術情報や事例は、以下のリンクで確認できます。製造業のBOM構築に関するコンサルティングファームの具体的な解説が記載されています。設計BOMと製造BOMはどう違う?EBOM⇔MBOM同期の現場運用を4ステップで解説
設計BOMを起点としたCAD/PLM連携による圧倒的な業務効率化事例
設計BOMの真価は、CADやPLM(製品ライフサイクル管理)システムと連携させることで最大限に発揮されます 。従来、多くの企業では設計者がCADで作成した図面を見ながら、手作業でExcelなどに部品情報を転記して設計BOMを作成していました。この方法では、入力ミスや転記漏れが発生しやすく、設計変更のたびに膨大な修正作業が必要でした 。
しかし、最新の3D CADやPLMシステムを導入することで、このプロセスは劇的に変わります。
CADデータからのBOM自動生成 🤖: 3D CADで製品モデルを設計すると、その構成情報(アセンブリ構造)から直接、設計BOMが自動で生成されます。これにより、手作業による転記ミスがなくなり、BOM作成の工数が大幅に削減されます 。
PLMによる一元管理と変更履歴の可視化 🗂️: 生成された設計BOMはPLMシステムに登録され、一元管理されます。設計変更が行われると、リビジョンが自動で更新され、「いつ」「誰が」「何を」変更したのかという履歴がすべて記録されます。これにより、関係各部門は常に最新の正しい情報にアクセスできるようになります 。
ERPとの連携による後工程の自動化 ⚙️: PLMで管理されている設計BOMの情報がERP(統合基幹業務システム)に連携されると、それを基にした製造BOMの作成、生産計画の立案、部品の自動発注までをスムーズに行うことが可能になります。設計変更の情報も即座に後工程に伝達されるため、手戻りや仕様間違いによる損失を防 ぐことができます 。
ある製造業の事例では、CADとPLMを連携させて設計BOMを中心とした情報管理基盤を構築した結果、設計変更にかかる工数を50%削減し、製品開発のリードタイムを30%短縮することに成功したという報告もあります。これは、設計BOMが単なる部品リストではなく、設計から製造、さらには保守サービスに至るまでの製品ライフサイクル全体の情報を繋ぐ「デジタルスレッドの中核」として機能していることを示しています。
ものづくりにおけるBOMの重要性や、図面管理からモノ管理へ移行する必要性について、専門コンサルタントによる詳細な解説が参考になります。第108回 設計部門BOM改善コンサルの現場から~その40~「図面管理からモノ管理へ」
設計BOMの応用編:標準化と多様化を両立する「150%BOM」という新常識
顧客ニーズの多様化に伴い、製品のバリエーションが爆発的に増加する現代において、注目されているのが「150%BOM」という概念です 。これは、スーパーBOMやマトリックスBOMとも呼ばれ、標準部品に加えて、想定されるすべてのオプション部品や仕様違いの部品をあらかじめ含めて構成した、いわば「全部入り」の設計BOMのことです 。
通常、製品ごとに作成されるBOMを「100%BOM」と呼ぶのに対し、150%BOMは将来の派生モデルや様々なカスタマイズに対応できる可能性の塊として設計段階で構築されます 。なぜ、このような一見冗長に見えるBOMが有効なのでしょうか。
そのメリットは以下の通りです。
見積もり・受注の高速化 ⚡: 顧客から引き合いがあった際に、150%BOMから必要なオプションを選択(フィルタリング)するだけで、即座に個別製品のBOM(100%BOM)を生成し、正確なコストと納期を見積もることができます。
設計の標準化とナレッジの蓄積 📚: どの部品が標準で、どれがオプションなのか、どの部品が組み合わせ可能なのかといった設計ノウハウがBOM自体に集約されます。これにより、設計の属人化を防ぎ、若手設計者でもベテラン並みの設計が可能になります。
部品種類数の削減(VA/VE) 💸: すべてのバリエーションを一覧できるため、「このオプション部品は、こちらの標準部品で統合できるのではないか」といった部品統合の検討(VA/VE活動)が容易になり、コストダウンに繋がります。
例えば、自動車のカーナビゲーションシステムを考えてみましょう。基本モデルに加えて、高性能スピーカー、リアモニター、各種
センサー といった無数のオプションが存在します。これらを150%BOMとして管理しておけば、顧客が希望する組み合わせを選択するだけで、専用の部品構成と製造指示を瞬時に生成できるのです 。
この150%BOMの考え方は、従来の「製品ごとにBOMを作る」という常識を覆すものです。設計資産を最大限に活用し、マスカスタマイゼーション(大量生産の効率性と個別受注生産の柔軟性を両立させる生産方式)を実現するための強力な武器となり得る、まさにBOM管理の新常識と言えるでしょう。
設計BOMはDXでどう進化する?AIが実現する未来の部品表管理
製造業における
デジタルトランスフォーメーション (DX)の進展に伴い、設計BOMの役割とあり方も大きく変わろうとしています。BOMはもはや静的な部品リストではなく、製品ライフサイクル全体にわたるあらゆる情報を繋ぐ、動的な「データ基盤」へと進化しています 。そして、その進化を加速させるのがAI(人工知能)技術の活用です。
将来的には、以下のようなBOM管理がAIによって実現されると考えられています。
AIによるBOM自動生成・最適化 🧠: 過去の設計データや製造データ、さらには市場のトレンドや顧客の要求仕様をAIが分析し、コスト、納期、性能の観点から最適な設計BOMの構成案を自動で提案します。設計者は、その提案を基に最終的な意思決定を行うだけでよくなります。
設計変更影響のリアルタイム予測 📈: ある部品の設計変更が、コスト、製造工程、サプライチェーン にどのような影響を与えるかをAIがリアルタイムでシミュレーションし、可視化します。「このネジを別の材質に変えると、強度は5%向上するが、コストが8%上昇し、調達リードタイムが2週間延びる」といった具体的な影響範囲を瞬時に把握できます 。
サービスBOMとの連携による予知保全 🔧: 製品稼働後に収集されるIoTデータと、設計BOM、サービスBOM(保守部品表)をAIが連携分析します。部品の劣化状況や故障の予兆を検知し、「そろそろ交換が必要です」と能動的に保守部品やメンテナンス作業を提案する予知保全が可能になります。
自然言語によるBOM情報検索 🔍: 「去年、A社向けに納品した製品で、強度不足が指摘された部品のリストを見せて」といった自然言語での曖昧な問いかけに対し、AIが関連するBOM情報を横断的に検索し、的確な回答を提示します。これにより、必要な情報へのアクセス性が飛躍的に向上します。
このように、AIと連携した未来の設計BOMは、単なる「部品の記録」から、企業の意思決定を支援する「知的なアドバイザー」へとその役割を変えていくでしょう。設計BOMを中心としたデータ駆動型の製品開発プロセスを構築することこそが、これからの製造業が競争力を維持・強化していくための鍵となるのです。
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