熱交換器は温度の異なる流体間で熱エネルギーを効率的に移動させる装置で、金属加工業界では製造工程の温度制御や冷却システムに欠かせない機器です 。熱交換の仕組みによって、多管式、プレート式、フィンチューブ式などに分類され、それぞれ異なる特徴と適用範囲を持っています 。
参考)熱交換器について
多管式熱交換器は、円筒形のシェル(胴体)内に多数の細い伝熱管(チューブ)を収めた構造で、液体同士の熱交換における代表的な方式です 。小さな空間の中で大きな伝熱面積を確保でき、流体の圧力損失を小さく抑えられるため、低温から高温、低圧から高圧まで幅広い用途に対応可能です 。
参考)https://www.katsukawa.co.jp/%E5%A4%9A%E7%AE%A1%E5%BC%8F%E7%86%B1%E4%BA%A4%E6%8F%9B%E5%99%A8%E3%80%80%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%AB%EF%BC%86%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%96%E5%BC%8F%E7%86%B1%E4%BA%A4%E6%8F%9B%E5%99%A8
固定管板式と遊動管板式の2つの構造があり、固定管板式は管板が胴体に溶接されているため高圧条件に適している一方、遊動管板式は管束の脱着が容易で清掃性に優れています 。また、構造が単純で信頼性が高く、油圧業界や化学関係で最も広く使用されているのも特徴の一つです 。
プレート式熱交換器は、凸凹にプレスした金属板(プレート)を多数重ね合わせ、交互に温度差のある流体を流す構造です 。多管式熱交換器と比較して、わずか1/5の大きさでほぼ同等の熱伝導力を得られる高い伝熱効率が最大の特徴で、軽量でコンパクトな設計が可能です 。
気体から気体、液体から液体の熱交換に適用でき、ガスケットプレート熱交換器とブレージングプレート熱交換器の2種類に分類されます 。プレート表面の凸凹構造により乱流が発生し、効率的な熱交換が実現されるほか、個別のプレート交換が可能でメンテナンス性にも優れています 。
参考)https://www.izumifood.shi.co.jp/maintenance/pdf/platemente.pdf
フィンチューブ式熱交換器は、伝熱管にフィン(伝熱板)を取り付けることで伝熱面積を増やした構造で、主に気体と液体の熱交換に使用されます 。一般的なエアコンもこの方式を採用しており、チューブ内の水・蒸気・油などの液体と、チューブ外の空気やガスなどの気体間で効率的な熱交換を実現します 。
プレートフィン式では金属板を適正なピッチで保持する加工技術により、チューブに圧入された金属板が大きな伝熱表面積を確保します 。蒸気による空気加熱、排熱利用による温水発生、冷却水によるガスクーラーなど、350℃までのガス温度と3MPaまでのチューブ管内圧力に対応可能で、幅広い工業用途に適用されています 。
参考)https://www.katsukawa.co.jp/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC%E5%86%B7%E5%8D%B4%E3%83%BB%E9%99%A4%E6%B9%BF%E8%A3%85%E7%BD%AE%E7%94%A8%E7%86%B1%E4%BA%A4%E6%8F%9B
スパイラル式熱交換器は、2枚の伝熱板を螺旋状に巻き取って細長い流路を形成した構造で、主に低温排熱回収用途に使用されます 。流体が渦巻流になって熱交換を行い、流路断面積が広く流体通過距離が短いため、圧力損失が少なく高効率な熱交換が可能です 。
特に製油所、石油化学工場、製鋼所などで汚れやすい流体の熱交換に威力を発揮し、単一流路構造により流体の流路通過速度が速く、伝熱板に付着したスケール(不純物)を剥ぎ取る自己洗浄効果があります 。また、多管式熱交換器に比べて小型化が可能で、狭小な場所でも設置できる利点があります 。
参考)スパイラル式熱交換器 |1限目 熱交換器とは|熱交ドリル|株…
マイクロチャンネル熱交換器は、微細加工技術を使って作られた数ミリ径以下の狭隘な流路を持つ先進的な熱交換器です 。流路を微細化することで伝熱面積を飛躍的に拡大し、熱交換器の小型化と高性能化を同時に実現します 。
拡散接合技術による完全一体接合により、100MPaの高耐圧設計が可能で、オールステンレス構造によりコンタミネーション防止にも貢献します 。特に自然冷媒を使用した二酸化炭素ヒートポンプ給湯機や次世代カーエアコン用熱交換器として、環境負荷低減の観点からも注目が集まっています 。
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金属加工業界では、各工程で発生する熱の回収や製品の冷却に熱交換器が重要な役割を果たしており、加工条件や流体の特性に応じて最適な種類を選択することで、省エネルギー化と生産効率の向上を実現できます 。また、定期的な洗浄やガスケット交換などのメンテナンスを適切に実施することで、長期間にわたって安定した性能を維持することが可能です 。
参考)熱交換器のメンテナンスの方法や未実施のリスクとは