ダクト内を流れる空気は、管壁との摩擦や継手部での方向変化により圧力を失います 。この圧力損失を正確に計算することは、換気設備の設計において不可欠な技術です 。金属加工現場では、効率的な排気システムの構築により作業環境の改善と電力コストの削減を同時に実現できます 。
参考)スタッフブログ
圧力損失の計算は、直管部分の摩擦損失と継手部分の局所損失の合計で求められます 。空気の密度をρ、風速をv、管径をdとすると、動圧Po = (1/2) × ρ × v²として表現され、この動圧を基準に各部の損失係数を乗じて算出されます 。摩擦係数λと抵抗係数ζは、実験により求められた定数として設計基準書に記載されています 。
参考)ダクトの圧力損失計算
ダクト内の圧力損失計算は、ベルヌーイの定理に基づく流体力学の基本原理を応用します 。空気密度ρ(標準状態で1.2kg/m³)、風速v(m/s)から動圧Po = (1/2) × ρ × v²を算出し、これを各部の損失計算の基準とします 。この動圧は、空気が持つ運動エネルギーを圧力の単位で表現したものです 。
直管部の摩擦損失は、「圧力損失[Pa/m] = 摩擦係数λ × 動圧Po ÷ 管径d」で計算されます 。摩擦係数λは、管の表面粗度と流れの状態(レイノルズ数)により決定され、亜鉛メッキ鋼板の場合は約0.018~0.025の値を用います 。管径が大きいほど単位長さあたりの損失は小さくなり、風速の2乗に比例して増加する特性があります 。
参考)ダクト式換気扇の圧力損失計算(等圧法)の解説と摩擦抵抗線図の…
継手部の局所損失は、「圧力損失[Pa] = 動圧Po × 抵抗係数ζ」で算出されます 。90度エルボの場合、抵抗係数は0.9~1.3程度で、曲率半径と管径の比(R/D)により変化します 。分岐部分では流量比により抵抗係数が大きく変わるため、設計時には十分な検討が必要です 。
参考)排煙ダクトなどの圧力損失計算例題
摩擦抵抗線図は、ダクト径と風量から単位長さあたりの圧力損失を直接読み取れる実用的なツールです 。横軸に風量、縦軸に摩擦損失率、斜線でダクト径を表示した三次元グラフとして構成されています 。例えば、直径150mmのダクトに200m³/hの風量を流す場合、摩擦損失率は約1.1Pa/mとなります 。
この線図を用いる際は、ダクト材料の表面粗度を考慮する必要があります 。亜鉛メッキ鋼板、ステンレス鋼板、樹脂ダクトなど材料により摩擦係数が異なり、圧力損失に大きな影響を与えます 。特に高温環境下では材料の選択が重要で、適切な材料選定により長期的な性能維持が可能となります 。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/dda3e43161ea9a000f15079a664669135973eaac
実際の計算では、直管の長さに継手部の直管相当長を加えた総延長に摩擦損失率を乗じて総圧力損失を求めます 。この手法により、複雑な数式を用いることなく迅速で正確な計算が可能となり、現場での設計作業の効率化に大きく貢献します 。
エルボとベンドは、ダクトシステムにおいて最も圧力損失の影響が大きい継手部分です 。エルボは急激な方向変化により流れの剥離と渦を発生させ、ベンドと比較して約2倍の圧力損失を生じます 。実際の測定例では、同条件下でエルボの圧力損失が157kPaに対し、ベンドは81kPaと大幅な差が確認されています 。
参考)【流体】熱と流れの不思議vol.4 圧力損失③~エルボ・ベン…
曲率半径R/D比は、ベンド部の圧力損失を決定する重要な要素です 。R/D = 0.5の場合の抵抗係数は0.71ですが、R/D = 2.0では0.13まで低下し、設計時の曲率半径選択が全体の性能に大きく影響します 。金属加工現場では、設置スペースの制約とのバランスを考慮した最適化が求められます 。
整流板の設置は、ベンド部の圧力損失を大幅に削減する効果的な手法です 。整流板を設けることで圧力損失を約半分に削減でき、46kPaまで低下させることが可能です 。この技術は、既存設備の改善や高効率システムの新設において、コストパフォーマンスの高い解決策として注目されています 。
分岐・合流部は、単純な継手と異なり流量比により抵抗係数が大きく変化する複雑な特性を持ちます 。合流継手では、主流に対する支流の風量比V3/V1により抵抗係数が決定され、0.2~1.4の範囲で0.07~0.42と大きく変動します 。この特性を理解せず設計すると、予期しない圧力損失により全体の性能低下を招く可能性があります 。
割込分岐と直角円すい分岐では、同じ風量比でも抵抗係数に大きな違いがあります 。風量比0.8の場合、割込分岐の抵抗係数は0.11ですが、直角円すい分岐では0.52と約5倍の差が生じます 。形状の選択により大幅な効率改善が可能であり、設計段階での詳細な検討が重要です 。
合流分岐点の圧力損失特性を考慮した空調ダクト系の風量・圧力解析に関する学術論文
実際の計算では、最も圧力損失の大きい経路を特定し、その経路の総圧力損失を求めます 。複数の分岐を持つシステムでは、各経路の圧力バランスを考慮した調整ダンパーの設置が必要となる場合があります 。これにより、設計風量の確実な確保と全体の効率化を同時に実現できます 。
効率的なダクト設計では、等圧法と等速法の適切な使い分けが重要です 。等圧法は全区間で単位長さあたりの摩擦損失を一定にする方法で、一般的な低圧ダクトに適用されます 。等速法は全区間で風速を一定に保つ方法で、排煙ダクトなどの高圧システムに使用されます 。用途に応じた適切な選択により、材料コストと運転コストの最適化が可能となります 。
ダクト材料の選定は、圧力損失と耐久性の両面から検討する必要があります 。亜鉛メッキ鋼板は一般的で経済的ですが、ステンレス鋼板は耐食性に優れ長期使用に適しています 。樹脂ダクトは表面が滑らかで摩擦損失が小さいものの、耐熱性に制限があります 。金属加工現場の環境条件に最適な材料選定により、ライフサイクルコストの削減が実現できます 。
参考)https://www.jafmec.or.jp/wp_jafmec/wp-content/uploads/2017/04/%E7%A9%BA%E8%AA%BF%E8%A8%88%E7%AE%97%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%882019%EF%BC%88%E5%85%A5%E5%8A%9B%E4%BE%8B%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BC%89_%E7%A9%BA%E8%AA%BF%E8%A8%88%E7%AE%97.pdf
ダクト圧力損失計算の詳細な計算式と実践的な計算方法
システム全体の最適化には、送風機の特性曲線との適合性も重要な要素です 。計算で求めた圧力損失に10~20%の余裕を加えた値を設計静圧とし、必要風量での運転点が効率の良い範囲に収まるよう送風機を選定します 。この総合的なアプローチにより、エネルギー効率の高い換気システムの構築が可能となり、金属加工現場での競争力向上に貢献します 。
参考)圧力損失の計算をかんたんに!ダクト空調設計に不可欠な圧力損失…