機能めっきの最も重要な分類として、電気的特性を持つものがあります。電気伝導性が求められる場合は銅・銀・ニッケル・スズなどが使用され、スイッチ・端子・コネクター・回路基板といった製品に施されます。特にUSBやスマートフォンの充電接続部分などの電気接点には、ニッケル・スズ・銀めっきが選択されることが多くなっています。
銀は高純度になるほど柔らかく、コスト面でも課題があるため、実務ではスズが用いられるケースが増えています。磁性が必要な場合にはコバルト-リンやニッケル-コバルトなどのめっき材が採用されており、磁気ディスクなどの電子機器と深い関係を持つ特性として注目されています。
低接触抵抗や電磁波シールド特性も電気的機能として要求される場面があり、用途に応じた材料選定が極めて重要です。
硬度・耐摩耗性が求められる部品には、硬質クロムめっきと無電解ニッケルめっきの二つの選択肢があります。硬質クロムめっきは、金属金型・シャフト・スライド部品など耐摩耗・耐食性を必要とする場面に最適であり、硬度800~1000Hv(ビッカース硬度)という非常に高い硬さを実現します。機械のロングライフ化に大きく貢献することで、自動車部品やフィルム製造用のロールなどに広く採用されています。
一方、無電解ニッケルめっきは電気を使わず化学反応で皮膜を生成するため、複雑形状にも均一な厚みで膜を付けることができます。硬質クロムは均一な皮膜形成が難しくめっき後に研磨が必要な場合がありますが、無電解ニッケルは平滑で均一な被膜が形成されるため、寸法精度が重要な金型などに選ばれることが多くなっています。
精密部品や複雑金型には無電解ニッケル、耐摩耗性の極限を求める場合には硬質クロムと、用途によって使い分けることが製造現場の知恵となっています。
潤滑性を付与したい場合には、無電解ニッケルめっきが第一選択肢です。多孔性を付与することで潤滑油を保持でき、シューター(ゴミ捨て口)やシャフトなど動きのある部品に最適です。無電解ニッケルは膜厚を0.001mm単位で制御でき、複雑な形状にも対応できるため、寸法精度が求められる金型加工に欠かせない選択肢となっています。
潤滑性と寸法精度の両立は、実は単純な技術選定では実現しません。現場経験が豊富な専門業者でも、膜厚分布の最適化に試行錯誤を重ねることが多いのです。表面処理後のさらなる研磨工程の要否判断や、基材との密着力の確保も同時に検討する必要があり、統合的なアプローチが重要です。
耐薬品性・汚染防止性・抗菌性・耐刷性を持つ化学的特性は、化学反応槽や攪拌機などの化学機器分野で活躍しています。無電解ニッケルめっきは化粧品・食品(酢など薬剤を使用する場合)・化学薬品を使用する製品に対して耐薬品性を付与します。
抗菌性においては、銀めっき・銅めっきが選択され、ナイフ・フォーク、自動車のドアノブ、医療用品、衛生用品に広く応用されています。実は身近な存在で、靴下の繊維に銀めっきを加工した抗菌製品も市場に存在しており、消費者が気づかないレベルで機能めっきの恩恵を受けています。
医療用品や食品接触表面では特に細菌の増殖を抑制することが求められ、金属はプラスチックなどに比べてその効果が高いという点が、材料選定の大きな根拠となっています。
機能めっきを選定する際には、単純に「材質と膜厚」の指定だけでは不十分です。電気的・機械的な要求特性(耐食性、摩耗性、導電性、はんだ付け性など)、端子・接点など「重要表面」への重点指示、実生産数量とロットバラツキ許容範囲、製品形状の個別性(深穴、隅部などめっき困難部分の指摘)、さらに環境規制(RoHS、ELV、REACH)などグローバル対応まで多角的な観点が必要です。
興味深いことに、従来から多くの現場では「めっき屋」という職人気質のサプライヤーとバイヤーの間で価格攻防が発生してきました。しかし近年では共同開発や品質管理体制の開示など、協調的なサプライチェーンづくりへと変化しつつあります。試作段階での「必須・希望」要件の切り分けや、膜厚保証方法(サンプリング位置や測定法)も後工程品質への影響が大きいため、現場との密なコミュニケーションが極めて重要となるのです。
コーティングや溶射技術、窒化処理など類似の表面改質が台頭している現在において、機能めっきが選ばれ続ける理由には明確なメリットが存在します。ミクロンレベルで均一膜厚を制御でき、コストパフォーマンスに優れ、広範な基材・形状への対応力を持つ点、そして品質・生産性・メンテナンス合理化を長年の現場知見で積み上げてきた技術資産の大きさが、継続的な信頼をもたらしているのです。
六価クロムなど有害物質規制(RoHS、REACH)により、従来材料や工程の見直しが急速に進んでいます。ノンクロムめっきや環境負荷の少ない電解液、リサイクルめっき液の活用など、「サステナブルなめっきプロセス」へのシフトが本格化しているのです。
近年の自動車業界では電動化や自動運転への移行に伴い、電子部品の小型化・高性能化、そして耐環境性がこれまで以上に強く求められています。センサー、ECUコネクタ、バスバーなど、「見えない縁の下」で機能めっきが威力を発揮しており、従来よりも高い耐食性・信頼性が要求される亜鉛ニッケル合金めっきや錫―ビスマスめっきなどが注目されています。
半導体製造装置の部品や医療機器部品でも高硬度無電解ニッケルめっきが数多く採用され、0.001mm単位での膜厚管理や無ピンホール性、異種材料との界面密着など、最先端技術の要求に応えています。機能めっきの技術は、AI・IoT技術とも連携し、さらに高度な膜厚・品質制御、自動化ライン連携、工程可視化へと発展することが期待されています。
参考:めっきによってプラスできる機能まとめ | めっきのめ
https://www.mekkinome.com/plating-type/
参考:機能めっきの基礎と特性および応用環境対応 | newji
https://newji.ai/procurement-purchasing/fundamentals-characteristics-applications-and-environmental-compatibility-of-functional-plating/

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