ジルコニアとセラミックの違い

金属加工従事者が知るべきジルコニアとセラミックの特性の違いとは?強度、結晶構造、応用分野まで詳しく解説します。どちらの素材がお客様のニーズに最適でしょうか?

ジルコニアとセラミックの違い

ジルコニアとセラミックの基本特性
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ジルコニアの強度

モース硬度8-8.5の高強度材料で人工ダイヤモンドとも呼ばれる

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セラミックの美しさ

天然石に近い透明感と自然な色調を実現する審美性

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用途の多様性

工業部品から歯科材料まで幅広い応用分野を持つ

ジルコニアの結晶構造と特性

ジルコニア(二酸化ジルコニウム、ZrO₂)は、温度によって結晶構造が変化する特殊な性質を持つ酸化物セラミックです 。室温では単斜晶系の結晶構造を取りますが、1170℃で正方晶、2370℃で立方晶へと相転移します 。この相転移は約4%の体積変化を伴うため、純粋なジルコニアは昇降温により破壊しやすくなります 。
参考)ジルコニア - Wikipedia

 

そこで実用的なジルコニアには、酸化イットリウム(Y₂O₃)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)などの安定化剤を添加します 。これにより室温でも正方晶や立方晶が安定化し、優れた機械的性質を実現できます 。特に部分安定化ジルコニア(PSZ)は、クラック伝播を抑制する靭性メカニズムにより、従来のセラミックと比較して3倍以上の強度を持ちます 。
参考)ジルコニア・酸化ジルコニウムの特徴(セラミックスの基礎)|セ…

 

モース硬度は8~8.5と天然ダイヤモンドに次ぐ硬度を誇り 、ビッカーズ硬度は1200~1300HVに達します 。曲げ強度では900~1200MPaという高い値を示し、スペースシャトルの断熱材やF1カーのブレーキなど、極限環境下でも使用されています 。
参考)【上尾の歯医者でセラミック治療】ジルコニアはどれくらい硬いの…

 

セラミックの定義と材料特性

セラミックスは、金属や非金属を問わず酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機化合物を焼結した無機固体材料の総称です 。狭義には陶磁器を指しますが、広義では窯業製品全般を含む概念として使われています 。原料には粘土や珪石などの天然鉱物が伝統的に用いられてきました 。
参考)セラミックス - Wikipedia

 

セラミックの特徴として、常温で固体であり、硬度は高いものの脆性破壊しやすい性質があります 。強度や破壊靭性は内部の局所的な欠陥構造に大きく左右され、耐熱性に優れる一方で熱衝撃破壊を起こしやすいという特性を持ちます 。密度は金属より軽くプラスチックより重く、一般的に絶縁体として機能します 。
日本ガイシ「セラミック材料基礎講座」
セラミックスの基礎的な分類と特性について詳しく解説されています。

 

審美性においては、セラミックは天然歯に近い透明感と光の透過性を持ち、治療箇所が目立たない自然な仕上がりを実現できます 。特に光学的性質において、セラミックは質感も天然歯に近く、色調の細かな調整が可能で、隣接する歯との調和を図れます 。
参考)美しさと機能性を両立するセラミック治療 — メリットと注意点…

 

ジルコニアの工業応用と加工特性

ジルコニアは、その優れた機械的性質により多岐にわたる工業分野で活用されています 。耐摩耗性と耐食性に優れるため、工具や切削用途での使用が広がっており、機械部品においても金属材料の代替として期待されています 。熱膨張率が鋳鉄に近く断熱性にも優れているため、ディーゼルエンジン部品での金属材料との組み合わせ利用も進んでいます 。
参考)ジルコニア材料の特徴

 

圧縮強度は1500~2000MPaと極めて高く 、引張強度も300MPa以上を示します 。この高強度特性により、従来セラミックでは困難だった高負荷用途への適用が可能になりました。加工面では、高温での電気伝導性が高く加熱要素としても使用でき 、急激な温度変化にも耐えるため急熱器や急冷器の材料としても実用化されています 。
金属加工従事者にとって特に注目すべきは、ジルコニアが金属より高い強度を持ちながら、化学的に不活性で様々な溶融金属に抵抗する能力を有することです 。これにより、るつぼ材料としても最適で、高温での優れた機械的特性を維持できます 。

セラミック材料の種類と応用範囲

セラミック材料は大きく伝統的セラミックと先端セラミックに分類されます 。伝統的セラミックは主に日用品に使用される一方、先端セラミックは産業やハイテク分野で広く活用されています 。具体的な応用例として、電子部品では半導体パッケージ、コンデンサ、圧電素子、LED照明の基板や蛍光体などがあります 。
参考)セラミックスとは|特徴・種類・活用例・加工性について解説 -…

 

自動車部品においては、エンジン部品、センサー、触媒担体として使用され 、調理器具・食器分野ではIH用トッププレート、電子レンジ用耐熱ガラス、包丁、土鍋などに活用されています 。特にケイ酸塩セラミック材料は、建築業界でタイル、レンガ、セメントとして利用され、耐摩耗性、耐久性、耐腐食性に優れた特性を発揮しています 。
参考)https://ggsceramic.com/ja/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E8%A8%98%E4%BA%8B/%E3%82%BB%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%82%AF%E6%9D%90%E6%96%99%E3%81%AE%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%A8%E7%94%A8%E9%80%94

 

光洋精工「セラミックスとは|特徴・種類・活用例・加工性について解説」
セラミックスの幅広い活用例と加工性について包括的に説明されています。

 

ガラスセラミック材料は、ガラスを結晶化させることで得られる複合材料で、ガラスの特性とセラミックスの利点を兼ね備えています 。高温キッチンでの耐熱ベーキングトレイや調理器具に使用され、優れた硬度と耐熱性に加え、生体適合性も備えています 。

ジルコニアとセラミックの強度比較分析

強度面での比較において、ジルコニアは従来のセラミックを大幅に上回る性能を示します。従来のオールセラミックの曲げ強度が60~80MPaであるのに対し 、ジルコニアは900~1200MPaと10倍以上の強度を実現しています 。この圧倒的な強度差により、ジルコニアは強い衝撃にも耐えることができ、「象が踏んでも壊れない強さ」とも表現されます 。
参考)強度|歯科技工士も納得 ジルコニア選択のススメ

 

破壊靭性の観点では、ジルコニアは大きな力が加わった際に結晶構造を変化させて破損を防ぐメカニズムを持ちます 。この靭性(粘り強さ)により、従来のセラミックで問題となっていた脆性破壊を大幅に改善できています。一方、一般的なセラミックは強い衝撃を受けると割れる可能性があり 、歯ぎしりなどの継続的な負荷には不向きとされています 。
参考)ジルコニアとセラミックどっちが良い?|5つのポイントで比較!…

 

ジルコニア選択のススメ「強度」
ジルコニアの強度特性と従来セラミックとの比較について詳細なデータが掲載されています。

 

耐久性についても大きな違いがあります。セラミックの寿命が約7~10年とされる一方 、ジルコニアは10年前後とより長期間の使用が期待できます 。ただし、実際の寿命はメンテナンスの頻度や使用条件に大きく依存するため、適切な管理下では両素材ともより長期間の使用が可能です 。
参考)セラミックとジルコニアどちらを選ぶ?違いを比較して解説!