ケイ酸塩とシリカの違いと金属加工での活用法

金属加工従事者が知っておくべきケイ酸塩とシリカの本質的な違いとは?構造の特徴から産業用途まで、実務で役立つ知識を詳しく解説していきます。活用法もわかる?

ケイ酸塩とシリカの違い

ケイ酸塩とシリカの基本的な違い
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化学組成の違い

ケイ酸塩は金属イオンを含む化合物、シリカは純粋な二酸化ケイ素

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結晶構造の特徴

四面体構造を基本とするが、結合方式に大きな違いがある

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工業的応用性

金属加工における役割と用途が異なる材料特性を持つ

ケイ酸塩の基本構造と化学的特徴

ケイ酸塩は、ケイ素原子を中心とし、電気陰性な配位子がこれを取り囲んだ構造を持つアニオンを含む化合物です 。ケイ酸塩鉱物に代表される大多数のケイ酸塩では、ケイ素原子は4個の酸素原子によって囲まれた四面体構造をとります 。この四面体構造の基本単位は [SiO4]4- で、Siを中心としてOが各頂点に配列している珪酸四面体と呼ばれています 。
参考)ケイ酸塩 - Wikipedia

 

鉱物の種類によってこの四面体が連なる度合いは異なり、単独、対、クラスター、環状、鎖状、二本鎖状、層状、3次元網目状など多岐にわたる特徴があります 。層状ケイ酸塩鉱物は、層状に重合したポリケイ酸イオンが、層状の水酸化アルミニウムに片側あるいは両側から結合した層状構造単位からなる鉱物として知られています 。
参考)https://soilsci.info/Book_SoilSci/6_SecondaryMinerals.pdf

 

天然に広く、かつ多量に存在し、地殻の主成分を構成するケイ酸塩は、アルミニウム、鉄、カルシウム、カリウム、ナトリウムなどの塩が多く含まれています 。一般に融点が高く(多くは1000℃以上)、融解してから冷却するとガラスをつくりやすい性質を持ちます 。
参考)珪酸塩(ケイサンエン)とは? 意味や使い方 - コトバンク

 

シリカの構造的特徴と物理的性質

シリカ(二酸化ケイ素)は SiO2 の化学式で表されるシリコン酸化物の総称で、結晶質あるいは非晶質物質としてさまざまな状態で存在します 。シリカの骨格を作るのはSiに配位した4個の酸素が形成する正四面体構造で、このSiO4四面体の酸素同士が結合して3次元のネットワーク構造を作っています 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/16/4/16_4_269/_pdf/-char/ja

 

SiO4四面体が周期的な規則性をもって結合したものを結晶質シリカと呼び、規則性がない場合に非晶質シリカと呼びます 。各シリコン原子が4つの酸素原子に四面体で共有結合している3次元ネットワークを形成するという特徴があります 。シリカは石英やその多形などの鉱物として自然界に見られ、これはケイ素周りが負電荷を帯びないため、追加のカチオンを含まない特別な例となっています 。
参考)https://www.goodfellow-japan.jp/jp/blog/sio2-silica.htm

 

Si-O結合は、イオン結合性に富んだ共有結合であると考えられており、SiO4四面体は、O原子が隣り合う2個のSi原子に共有されて結合しているため、組成を示すときはSiO2として表現されます 。合成シリカには、フューズドクォーツ、ヒュームドシリカ、シリカゲル、オパール、エアロゲルなどの形態があります 。
参考)シリカの構造

 

ケイ酸塩とシリカの金属加工における相違点

金属加工分野において、ケイ酸塩とシリカは異なる役割を果たしています。ケイ酸塩の代表的な工業用途として、珪酸ソーダ(けい酸ナトリウム)は別名「水ガラス」と呼ばれ、鋳造砂の無機系硬化剤として使用されています 。また、溶接棒用フラックスの結合材、耐火物の結合材としても重要な役割を担っています 。
参考)珪酸製品

 

一方、シリカは金属加工において異なる用途を持ちます。結晶質シリカを含む砂を使用するブラスト処理や鋳造作業により、金属表面処理において重要な材料として活用されています 。コロイダルシリカ溶液を使った特殊コーティングでは、金属材の表面硬度を飛躍的に向上させることが可能で、約30%以上の硬度向上が確認されています 。
参考)コロイドシリカ溶液を使った特殊コーティングで金属材の表面硬度…

 

シリカは鋳造用語集において、シリカ(SiO2)が99%以上の埋没材粉末として記載されており、高融点金属で使用される材料として知られています 。研磨材としても、二酸化ケイ素砥粒は化学式SiO2で表記され、シリカとも呼ばれ、硬度は他砥粒より低いものの、研磨対象に応じて効果的に使用されています 。
参考)鋳造用語集

 

ケイ酸塩の産業応用と金属製造プロセス

ケイ酸塩は金属製造プロセスにおいて多岐にわたる応用があります。土木分野では軟弱地盤改良、シールドトンネル工事などの原料として活用され、建築分野ではコンクリート強化防水材、防火・耐火材、ジオポリマーなどの材料として使用されています 。鋳物関連では、鋳物砂の無機系硬化剤として重要な役割を果たし、溶接棒の溶接用フラックスの結合材としても不可欠です 。
珪酸カリは珪酸ソーダと類似した物理的・化学的性質を持ちながら、結晶性や被覆性などの特性上の違いから特別な用途に用いられています 。溶接棒被覆材のバインダーや無機系塗料原料として活用され、金属加工における表面処理技術に貢献しています 。
窯業分野では、耐火物の結合材、粘土の分散剤、陶土の解こう剤として使用され、接着剤分野では無機繊維・建材・鋳型の接着剤、コーティング剤・シーリング剤として多様な応用があります 。これらの特性により、ケイ酸塩は金属加工プロセスの品質向上と効率化に重要な貢献をしています 。

シリカ材料の特殊用途と表面処理技術

シリカ材料は金属加工における先端的な表面処理技術において重要な役割を担っています。コロイダルシリカは液体媒体中に1-100nmのシリカ粒子が安定して分散したもので、金属表面処理における革新的な材料として注目されています 。用途は鋳造関係、耐火物関係、製紙関係、無機繊維関係、触媒関係、塗料・接着剤関係、金属表面処理、半導体研磨など多岐にわたります 。
参考)https://www.nippon-chem.co.jp/dcms_media/other/cre2007-11.pdf

 

シリカの表面処理技術では、チタニア(TiO₂)やアルミナ(Al₂O₃)などの酸化物をシリカ表面に担持、被覆し、光触媒性や絶縁性、耐熱性を付与する処理が行われています 。処理されたシリカは触媒として活用され、金属加工プロセスの効率化に貢献しています 。
参考)シリカの表面処理とは?−機能性を引き出すための基本技術と応用…

 

メソポーラスシリカは、ナノメートル単位の細孔を有するシリカ質多孔体であり、炭化水素やアンモニアの吸着性に優れ、親水性が低いことから活性炭やゼオライト、シリカゲルに代わる材料として期待されています 。この材料は金属加工における環境改善技術や品質管理システムにおいて新たな可能性を提供しています 。