電気伝導度の単位「ms/m」は、ミリジーメンス毎メートルを表し、物質の電気伝導能力を定量的に示す重要な指標です 。国際単位系(SI単位系)では「S/m」(ジーメンス・パー・メーター)が基本単位として定められていますが、測定対象の大きさや用途に応じて、ミリジーメンス(mS)、マイクロジーメンス(μS)、デシジーメンス(dS)が使用されています 。
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金属加工従事者にとって重要なのは、この単位が電気抵抗率の逆数として定義されることです 。つまり、値が大きいほど電気を通しやすく、値が小さいほど電気を通しにくい材料ということになります。特に導電性が求められる部品や配線材料の選定において、この理解は不可欠です 📊。
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日本工業規格(JIS)では、「JIS K 0102:2019 工場排水試験方法」などで従来の μS/cm の値を併記しており、実務においては複数の単位系が混在している状況があります 。そのため、単位変換の正確な理解が現場では重要となっています。
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ms/mとS/mの変換は、以下の関係式で表されます:1 ms/m = 0.001 S/m = 10⁻³ S/m 。この基本的な変換関係を理解することで、異なる測定機器や文献で使用される単位間の変換が可能になります。
参考)mS/m を S/m へ変換する (電気伝導率)
より詳細な単位換算表では、以下の関係が成り立ちます :
実際の金属加工現場では、アルミニウムの導電率が約32.3~33.3×10⁶ S/m、銅が約43.5~71.4×10⁶ S/mという値で表されることが多く 、これをms/m単位で表現する際の換算が必要になります。測定機器によっては自動変換機能を持つものもありますが、手計算での確認は品質管理上重要です 🔧。
参考)特性表 導電率ランキング
渦電流位相式プローブを用いた導電率測定は、金属加工業界で広く採用されている非破壊検査手法です 。この方法では、2つのコイルが巻かれたフェライトコアから構成されるプローブを使用し、励起電流によって高周波磁界(kHz-MHzレンジ)を生成します 。
参考)導電率測定
測定コイルは、試料に誘起された渦電流によるインピーダンス変化と位相変移を検出し、この位相角φが材料の導電率に直接依存することを利用して測定を行います 。特に位相感応渦電流法では、プローブと試料表面が密着していなくても測定が可能で、塗装やプラスチックコーティング下の金属層も測定できるという優位性があります 。
金属加工現場では、この原理を活用して材料の品質管理、熱処理状態の確認、合金成分の推定を行っています 。特に航空宇宙産業では、ボーイング仕様BAC 5651に適合した測定が求められ、材料の安定性チェックや熱損傷の判定に活用されています ✈️。
参考)SIGMASCOPE速 SMP350
主要な金属材料の電気伝導度をms/m単位で整理すると、材料選定の指針が明確になります。銅(Cu)の導電率は43.5~71.4×10⁶ S/m(43,500,000~71,400,000 ms/m)で、これが電気伝導性の基準値(100% IACS)とされています 。
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アルミニウム(Al)の導電率は32.3~33.3×10⁶ S/m(32,300,000~33,300,000 ms/m)で、銅の約60%程度の値を示します 。しかし、密度が銅の約1/3であるため、同重量での電気伝導能力は銅の約2倍となる特徴があります 。
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その他の金属では、モリブデン(Mo)が17.9~19.2×10⁶ S/m、タングステン(W)が18.2×10⁶ S/m、純ニッケル(Ni)が10.9×10⁶ S/mとなっています 。ステンレス鋼SUS304では1.4×10⁶ S/m(1,400,000 ms/m)と、銅と比較して大幅に低い値を示します 。これらの数値は、用途に応じた材料選定の重要な判断基準となります 🏗️。
金属加工現場での品質管理において、電気伝導度測定は材料の純度確認、熱処理状態の評価、合金組成の推定に活用されています 。特にアルミニウム合金では、A1070(純度99.7%以上)で約62% IACS、A3003合金で約40% IACS、6063-T5合金で約52% IACSという数値が品質基準として使用されています 。
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測定値をms/m単位で記録する際の注意点として、温度補正が重要です。一般的に金属の導電率は温度上昇とともに低下するため、標準温度(20℃または25℃)での値に補正する必要があります 。また、表面状態や微細構造の影響も考慮し、複数点での測定値を平均化することが推奨されます。
現代の導電率測定装置では、測定範囲1~1000 ms/mでの測定が可能で、分解能1.0 ms/m、サンプリングレート最大10サンプル/秒での高精度測定が実現されています 。これにより、製造工程でのリアルタイム品質監視が可能となり、不良品の早期発見と工程改善に貢献しています 📈。
参考)https://www.mdpi.com/1424-8220/24/13/4159/pdf?version=1719408311