非接触シール ベアリングの種類と選び方・使い分けの基本

非接触シール ベアリングはなぜ高速回転に強いのか?ZZやLLBなどの型番の見方、接触シールとの違い、金属加工現場での正しい選び方と交換管理のポイントを徹底解説。あなたの現場に合った選択ができていますか?

非接触シール ベアリングの種類と正しい選び方・使い分け

非接触シールのベアリングは「水性がない」から切削液まわりには使えないと思われがちですが、実は工作機械の主軸まわりでZZ型が標準採用されているケースは珍しくありません。


この記事の3つのポイント
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非接触シールの仕組みと種類

ZZ(金属シールド)・LLB/VV(非接触ゴムシール)・ラビリンスシールの3タイプを構造から解説。内輪に触れない設計が低トルク・高速回転を実現する理由がわかります。

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メーカー別型番の読み方

NSK・NTN・KOYO・NACHIなど主要4メーカーの記号一覧を整理。「ZZ」「LLB」「VV」「2NKE」が同じ非接触シールを指すことを知れば、現場での発注ミスが激減します。

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金属加工現場での選定基準

高速回転重視か防塵重視か、使用温度帯はどこか──現場環境に合わせた選定の判断基準と、グリース寿命を延ばすための管理ポイントを具体的に解説します。


非接触シール ベアリングの構造と「内輪に触れない」理由


ベアリングのシールとは、転動体(ボールやころ)を保護するために取り付けられた「蓋」のことです。シールには大きく分けて「接触式」と「非接触式」の2種類があり、両者の最大の違いは内輪との接触の有無にあります。


非接触シールは、シール板の先端と内輪の間に意図的に「微小なすき間」を設けた構造です。このすき間は0.1〜0.3mm程度と非常に小さく、だいたいコピー用紙2〜3枚分の厚さに相当します。触れていないぶん、摩擦抵抗が発生しません。


つまり、回転中にシールが内輪を「引っ張る」ことがないため、高速で回してもトルク損失が極めて小さくなるということです。これが非接触シールの最大の特性です。


一方、接触シールはゴム製のリップ(先端)が内輪の溝に押し当たり、液体や粉塵を物理的に遮断します。密封性は非接触より高いですが、常にシールが内輪と擦れ続けるため、摩擦熱が発生します。これが原因で高速回転時の温度上昇につながります。

































比較項目 非接触シール 接触シール
摩擦トルク 🟢 小さい 🔴 大きい
高速回転性 🟢 開放型と同等 🟡 制限あり
グリース密封性 🟡 良好 🟢 非常に良好
防塵・防水性 🟡 中程度 🟢 高い
使用温度(標準品) -30〜+110℃


摩擦が少ないということは、発熱が抑えられ、グリースの劣化も遅くなります。これが条件です。高速スピンドルや電動モーターで非接触シールが採用される理由は、まさにここにあります。


NTN公式:シールの役目と種類(接触形・非接触形の違いをイラストで解説)


非接触シール ベアリングの3つの種類とそれぞれの特徴

非接触シールといっても、内部構造によって3つのタイプに分かれます。現場での適切な選定のために、それぞれの特性を整理しておきましょう。


① 金属シールド(ZZ型)


鋼板製のシール板を外輪に固定し、内輪との間にすき間を作る最もシンプルな構造です。シールドとも呼ばれます。開放型と同等の高回転性を持ちながら、ある程度の粉塵侵入とグリース漏れを防ぎます。これは使えそうです。


ただし防水性は低く、水や切削液が直接かかる環境では向いていません。工作機械の主軸スピンドルや電動モーターのロール軸など、比較的クリーンな環境で高速回転が求められる場所に多く使われます。コスト面でも接触式より割安なケースが多く、量産機器に広く採用されています。


② 非接触ゴムシール(LLB・VV型)


ゴム製シールの先端が内輪に触れない構造です。金属シールドよりも柔軟な形状に作れるため、すき間の精度が高く、防塵性はZZ型を上回ります。グリースの密封性も金属シールドより優れています。


ZZより防塵性が高く、接触式(LLU・DDU)より低摩擦というバランス型です。製造ラインのコンベアモーター、工場内の搬送設備など、ある程度の粉塵環境で高速回転もこなしたい場合に選ばれます。


③ ラビリンスシール


複雑な迷路状(ラビリンス)の通路を設けることで、液体や粉塵が侵入しにくくなる構造です。シール板を使わず、軸とハウジング側の形状で密封するため、摩擦はほぼゼロです。高温・高速が要求される発電機・タービン・大型産業設備に採用されることが多く、標準の玉軸受に内蔵されているZZやLLBとは別の設計思想です。


非接触シール ベアリングの種類は、使用環境と回転数で使い分けるのが基本です。


ミスミ技術情報:シールド形・シール形の種類比較表(各メーカー記号一覧つき)


非接触シール ベアリングの型番の見方とメーカー別記号一覧

金属加工の現場でベアリングを発注するとき、最も混乱しやすいのが「メーカーごとに記号が違う」という点です。同じ「非接触ゴムシール(両側)」でも、メーカーによって記号がまったく異なります。






























シールの種類 NTN NSK KOYO NACHI
非接触金属シールド(両側) ZZ ZZE
非接触ゴムシール(両側) LLB VV 2RU 2NKE
接触ゴムシール(両側) LLU DDU 2RS 2NSE


たとえばNTNの「6205LLB」とNSKの「6205VV」は同じ「非接触ゴムシール付き深溝玉軸受(内径25mm)」です。型式がメーカー依存であることを知らないと、代替品を探すときに誤ったものを選んでしまうリスクがあります。


型番の基本構造を確認しておくと安心です。



  • 「6205ZZ」の「62」は形式・寸法系列(深溝玉軸受の標準外径)

  • 「05」は内径番号で、05×5=内径25mmを意味する

  • 「ZZ」が非接触金属シールドを示す記号


内径番号の読み方にも注意が必要です。「04」以降は番号に5を掛けた数値がそのまま内径(φ)になりますが、「00〜03」の4つだけは例外です。



  • 00 → 内径φ10mm

  • 01 → 内径φ12mm

  • 02 → 内径φ15mm

  • 03 → 内径φ17mm


この4つは暗記が必須です。「03」だから「03×5=15mm」ではなく17mmになる、という点でベテランでも間違えることがあります。発注前に必ずカタログで確認する習慣をつけましょう。


型番の見落としが1文字でも起きると、機械の寿命が縮まる可能性があります。厳しいところですね。


非接触シール ベアリングの選定で失敗しないポイント:接触型との使い分け

非接触シールを選ぶべき場面と、接触シールを選ぶべき場面は明確に異なります。選定を誤ると、設備が過熱したり、逆に短期間で汚染破損したりします。


非接触シールを選ぶべき場面


回転数が高い、またはトルク損失を最小限に抑えたい場面が第一の条件です。電動モーターの回転軸、工作機械のスピンドル、インバーター駆動のファンモーターなどが典型例です。これらの用途では、接触シールの摩擦による発熱が問題になることがあります。たとえばNSKの技術情報によれば、接触シールの摩擦トルクは非接触の2〜3倍になることもあります。


また、比較的クリーンな環境(密閉されたモーター内部、室内の搬送設備など)で、水や切削液の直接かかりがない場所でも非接触シールが活躍します。


接触シールを選ぶべき場面


水・切削液・金属粉が直接かかる可能性がある場所では、防水・防塵性能が高い接触シール(DDU・LLUなど)を選ぶのが原則です。NC旋盤マシニングセンターの下部コンベア、クーラントが飛散するエリアの搬送ローラーなどが該当します。


注意したいのは、「非接触だから防塵が全くない」という誤解です。ZZやLLBもある程度の粉塵侵入は防ぎますが、水に対してはほとんど無力です。非接触シール ベアリングは防水性が不適とされており、水まわりで使うのはダメということです。


内部すきま(C記号)との組み合わせも確認する


シールの種類だけでなく、型番末尾のC記号も重要です。熱が発生しやすい場所では内部すきまが標準(CN)のままだとベアリングが熱膨張でロックするリスクがあります。高温環境ではC3(すきまが標準より大きい)を選ぶことで、膨張の逃げ道を確保できます。非接触シールのZZにC3を組み合わせた「6205ZZC3」のような選定が、工場の高温環境では定石です。


NYZベアリング:ベアリングシールの選び方(ラビリンス・テフロン・接触型の用途比較)


非接触シール ベアリングの寿命を左右するグリース管理と交換サイクル

非接触シールのベアリングは「密封型だからメンテ不要」と思われることが多いですが、これは半分しか正しくありません。グリース管理の軽視が、早期破損の主な原因のひとつです。


グリース寿命の目安を知る


シール付きベアリングに封入されたグリースには寿命があります。三菱電機の技術情報によると、シールドボールベアリングのグリース寿命は4極モーターの場合で約2万時間、2極モーターの場合で約1万時間が目安とされています。1日8時間稼働換算だと、4極なら約6.8年、2極なら約3.4年です。


ただしこれは理想的な条件下での数値です。温度が高い、回転数が高い、振動が大きい──こうした悪条件が重なると寿命は大幅に短くなります。


温度管理が最重要


ベアリングの動作温度は100℃以下に保つことが理想とされています(NTN技術資料より)。100℃を超えるとグリースが急速に劣化し、封入グリースが変色・硬化してしまいます。非接触シールはグリースを補給できない構造のため、一度劣化したら交換するしかありません。


早めに温度異常を察知するために、非接触式赤外線温度計でベアリング周辺の表面温度を定期的に測定することが有効です。周囲温度から+30℃以上の温度上昇があれば、グリース劣化・異物混入・取付不良のどれかを疑いましょう。


「グリースの入れすぎ」も厳禁


グリースを大量に封入すれば良いわけではありません。過剰なグリースはベアリング内でかき混ぜられ、かえって発熱を招きます。KOYOの技術情報によれば、グリースはベアリング内部空間の1/3〜1/2程度が適量です。入れすぎると温度が上がり、グリースが液化して外に流れ出し、最終的には焼き付きに至るリスクがあります。グリースの量は適量が条件です。


非接触ゴムシール(LLB・VV)タイプは、金属シールドよりグリース密封性が高いため、グリース漏れには比較的強いです。ただし、封入量の設計はメーカー出荷時に最適化されているため、補充不可の密封型ベアリングを分解して追加グリースを入れる行為はトラブルの原因になります。


異音・振動が出たら即対応


ベアリングからの「シャー」「ゴロゴロ」「キーン」などの異音は、グリース劣化・汚染・軌道面の損傷を示すサインです。これらの異音が出始めたら、段階的に悪化する前に早期交換を検討してください。金属加工の現場では、設備停止による機会損失は数万〜数十万円単位になることもあり、早期の予防交換がコスト面でも有利です。


JTEKT(KOYO)ベアリング基礎知識:グリース潤滑の目的・方法・寿命グラフ解説


NTN公式:運転状態での点検方法(温度・音・振動のチェックポイント)


現場担当者だけが知る、非接触シール ベアリング選定の独自視点

設備保全の教科書には載っていない視点として、「同じ型番でも封入グリースの種類が違うと、トラブルになる」という点があります。これは意外に見落とされやすい盲点です。


たとえば「6205ZZ」を交換するとき、もともと封入されていたグリースが高速用の低粘度グリース(ビーコン325相当)だった場合、代替品として標準グリース(アルバニアグリース相当)封入のZZを使うと、グリースの基油粘度が合わず、高速回転時に油膜が形成されないことがあります。これは損失ですね。


メーカーによってはグリースの種類を型番末尾の記号で区別しています。NTNなら「/2AS」「/3E」「/5K」、KOYOなら「A2」「B5」「SR」といった記号がそれに当たります。現場で長年使っているベアリングを交換するときは、型式の本体だけでなく末尾のグリース記号まで現物で確認してから発注することが大切です。


「安価な互換品」に潜むリスク


国内大手メーカー(NSK・NTN・KOYO・NACHI)以外の廉価品ベアリングも市場には多く流通しています。コスト削減の観点から使われることもありますが、公差精度やグリースの品質が異なる場合があり、精密工作機械の主軸や高速スピンドルへの使用には注意が必要です。一般搬送設備や補助ロールなど、精度要求が低い箇所での使用に限定するのが現実的な対策です。


「片側シール」の活用が意外な答えになるケース


両側シール(ZZ・LLBなど)が標準ですが、あえて片側シール(Z・LBなど)を選ぶ場面もあります。たとえば設備の設計上、片側は別途オイルシールで密封される構造になっていて、ベアリング側に重複シールを付けると摩擦が増えてしまうケースです。また、片側だけオイル循環で潤滑し、もう片側は密封したいような特殊条件でも使われます。両側シールが「常に正解」ではない、という認識は設備保全の深みを増す知識です。


グリース相性の問題を避けるために


異なるメーカーのベアリングに切り替える際に、グリース記号まで確認できない場合は、交換時にベアリング周囲の古いグリースを完全に取り除いてから新品を取り付けることが基本です。古いグリースと新しいグリースが混ざり、液化・流出する「グリース相性問題」を未然に防げます。これだけ覚えておけばOKです。


設備管理の現場では、ベアリング1個の選定ミスが設備停止→部品調達→復旧作業という連鎖を生み、数時間〜数日の損失につながることがあります。非接触シール ベアリングの知識を深めることは、そのままコスト削減と生産安定に直結します。


スミス技術情報:接触型・非接触型の構造の違いをわかりやすく解説(リップと内輪の接触有無)




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