液圧プレスの届出は設置工事の30日前が法令上の期限

液圧プレスを設置・移設・変更する際、届出が必要なことは知っていますか?労働安全衛生法・騒音規制法・振動規制法など複数の法令が絡み、見落とすと罰則リスクも。正しい手順を解説します。

液圧プレスの届出と法令義務を正しく理解する方法

液圧プレスを新設する予定があるのに、届出は1種類だけで大丈夫だと思っていませんか。


この記事の3つのポイント
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届出は最大3種類の法令にまたがる

労働安全衛生法・騒音規制法・振動規制法それぞれに届出義務があり、液圧プレスは複数の届出が同時に必要になるケースがあります。

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設置工事の30日前が共通の提出期限

労働安全衛生法も騒音・振動規制法も、いずれも設置工事開始の30日前までに届出を提出することが義務付けられています。

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無届けには罰金・懲役の罰則がある

騒音規制法違反の無届けは罰金刑の対象。特定自主検査を怠った場合も50万円以下の罰金が科される可能性があります。


液圧プレスの設置届とは何か:労働安全衛生法第88条の基礎知識


液圧プレス(油圧プレス)は、労働安全衛生規則第86条に定める「機械等」として明確に指定されています。これは「動力により駆動されるプレス機械」のうち、クランク軸等の偏心機構を有する機械プレスと並んで液圧プレスが対象に含まれるためです。


具体的には、液圧プレスを新たに設置するとき・既設の液圧プレスを別の場所へ移設するとき・主要構造部分を変更するとき、の3パターンで届出義務が発生します。これが原則です。


届出先は、設置場所を管轄する所轄の労働基準監督署長です。提出する書類は全国統一書式である「様式第20号(機械等設置・移転・変更届)」で、厚生労働省のホームページから無料でダウンロードできます。無料です。


様式第20号だけを提出すれば終わりではありません。別表第七に定める事項を記載した書面(圧力能力・ストローク長さ・停止性能などを記した概要書)、プレス機のカタログまたは構造図、型式検定合格標章の写し(該当する場合)など、複数の添付書類が必要です。監督署によっては「動力プレス摘要書」や「動力プレス機械明細書」など独自の指定書式を設けているケースもあるため、事前に管轄の労働基準監督署へ確認しておくのが確実です。


なお、届出書類はすべて揃えて郵送でも提出できます。返信用封筒を同封すると、受理印を押された控えが戻されるため、手元に残す意味でも同封をおすすめします。


提出期限は工事開始の30日前。この30日というリードタイムを逆算して、プレス導入スケジュールを組む必要があります。カタログ請求やメーカーへの問い合わせなどを含めると、実際には60〜90日前から準備を始めるケースが多いです。


参考:アイダエンジニアリング株式会社による設置届の手順解説
ご存知ですか?プレス機を設置・移設・改造するときは「設置届」が必要です – アイダ技術情報


液圧プレスの届出は「労働安全衛生法だけ」では足りない理由

液圧プレスに関連する届出を規定する法律が、実は3つあります。混乱しやすいポイントです。それぞれを整理しましょう。


① 労働安全衛生法(法第88条・則第86条)
設置する工場内の労働者の安全を守ることを目的とした届出です。対象は「動力プレス及び液圧(油圧)プレス」と明確に定められています(平成16年4月1日以降に新たに購入・設置する装置から義務化)。


② 騒音規制法
工場近隣への騒音公害を止するための届出で、「金属加工機械」として液圧プレス(矯正プレスを除く)が特定施設に指定されています。都道府県知事が指定した「指定地域」内の工場が対象で、設置工事の30日前までに市区町村窓口へ届出が必要です。


③ 振動規制法
工場近隣への振動公害を防止するための届出で、こちらも液圧プレス(矯正プレスを除く)がすべての機械プレスと並んで特定施設に指定されています。騒音規制法と同様、指定地域内の工場が対象です。


つまり、同じ1台の液圧プレスを設置する際に、最大で3種類の法令に基づく届出が同時に必要になることがあります。これは意外ですね。


さらに、地域によっては都道府県の環境保全条例が追加指定を設けている場合があります。例えば、騒音規制法では「呼び加圧能力294kN以上の機械プレス」が対象ですが、条例によっては能力に関係なくすべての液圧プレスを特定施設に追加指定している自治体もあります。矯正プレスだから届出不要と思いこんでいると、条例の追加指定で実は届出が必要だったというケースもゼロではありません。


届出先も異なります。労働安全衛生法は所轄の「労働基準監督署」、騒音・振動規制法は所轄の「市区町村の環境担当窓口」というように、同じ届出期限でも提出先が別々です。


参考:日本鍛圧機械工業会による騒音・振動規制法の詳細一覧
プレス機械の騒音と振動の規制と対策一覧表 – JFMA 日本鍛圧機械工業会


液圧プレスの届出で揃える書類と提出手順のチェックリスト

届出準備で最も時間がかかる作業が「書類の収集」です。事前にどの書類が必要かを把握しておくと、スケジュールを無駄なく進められます。


労働安全衛生法に基づく設置届で必要な書類は以下のとおりです。


| No. | 書類の種類 | 入手先 |
|---|---|---|
| ① | 機械等設置・移転・変更届(様式第20号) | 厚生労働省HPからダウンロード(無料) |
| ② | プレス機概要書(圧力能力・ストロークなど) | メーカーに問い合わせ |
| ③ | プレス機のカタログまたは構造図 | メーカーHPまたはメーカーへ請求 |
| ④ | 型式検定合格標章の写し(該当する場合) | メーカーへ請求 |
| ⑤ | 安全装置の型式検定合格標章の写し(④が不要な場合) | 安全装置メーカーへ請求 |
| ⑥ | 安全措置の概要を示すカタログまたは図面(④⑤いずれも非該当の場合) | メーカーへ依頼 |


「圧力能力」「ストローク長さ」「停止性能」など、同じ機種でも機械ごとに数値が異なることがあります。仕様確認書とカタログを照合しながら記入するのが基本です。


次に、実際の提出手順を整理します。


1. 管轄の労働基準監督署を確認する 設置場所の住所で管轄署が決まります。厚生労働省のサイトで検索できます。


2. 監督署独自の指定書式を確認する 電話またはメールで事前確認すると、差し戻しリスクを防げます。


3. 書類を全て揃えて提出する 郵送可。返信用封筒を同封すれば控えが返ってきます。


4. 工事開始30日前の期限を必ず守る 期限を過ぎると違反となります。


届出の準備が整った段階で、監督署から追加書類の提出要請や工場訪問の要請が来る場合があります。余裕を持って60日前には準備を開始するのが現実的です。これが条件です。


参考:日本鍛圧機械工業会による油圧プレス導入の手引き(届出書類や手続きに関する実務情報を収録)
プレス機械の安衛法一覧表 – JFMA 日本鍛圧機械工業会


液圧プレスの届出を怠ったときの罰則と特定自主検査の義務

「届出を出さなかったらどうなるのか」という疑問を持つ方は少なくありません。結論から言うと、無届けには罰則があります。


騒音規制法・振動規制法において、無届けまたは虚偽の届出をした場合、罰金刑の対象になります。振動規制法では「市町村長の命令に従わない違反」に対して1年以下の懲役または50万円以下の罰金という罰則が定められています。無届けそのものでも罰金が科される可能性があります。


労働安全衛生法上の届出違反も同様で、罰則の対象となる違反行為です。届出義務の違反は「法令違反」として記録が残るため、後々の行政指導や改善命令・監査継続の引き金になることがあります。


厳しいところですね。


さらに見落としがちな義務として、「特定自主検査」があります。液圧プレスを含む動力プレスは、1年以内に1回、有資格者または登録検査業者による定期自主検査の実施が法令で義務付けられています(労働安全衛生規則第135条)。検査結果の記録は3年間保存しなければなりません。


この特定自主検査を怠った場合や、資格を持たない者が検査を行った場合は、50万円以下の罰金が科されます。痛いですね。


加えて、プレスを5台以上保有する事業場では「プレス機械作業主任者」(国家資格)の選任も義務です(労働安全衛生規則第133条)。設置届の提出が完了したからといって、法令上の義務はそれで終わりではないことを理解しておく必要があります。


まとめると、液圧プレスに関連する主な法令義務は「届出→設置→作業主任者の選任→特定自主検査(年1回)」という流れで継続的に発生します。


液圧プレスの届出で見落とされやすい「移設・改造時」の再届出義務

新設時の届出については比較的よく知られています。ところが、「既設の液圧プレスを工場内で移動させた」「主要構造部分を改造した」というケースで再度届出が必要になることを見落としている現場は少なくありません。


労働安全衛生法第88条は、設置だけでなく「移転」「主要構造部分の変更」についても届出を義務付けています。つまり、同じ工場の中で機械の位置を変えただけでも、届出が必要なのです。


では「主要構造部分の変更」とはどこまでを指すのでしょうか?これは監督署への確認が必要な場合もあります。油圧ユニットや制御盤の交換にとどまる場合と、フレームやスライドなど機械本体の構造に関わる変更の場合とでは扱いが異なることがあります。迷ったら監督署へ問い合わせるのが原則です。


また、騒音規制法・振動規制法についても「特定施設の数の変更」「使用の方法の変更」「防音設備等の廃止・変更」などが届出の対象となる場合があります。これらも設置工事の30日前までの事前届出が必要です。


見落としやすいもう一つのポイントとして、「工場立地法」があります。一定規模以上の工場(特定工場)で製造設備の面積が変わる場合、工場立地法に基づく届出が必要になる場合があります。液圧プレスの設置や増設により製造設備の配置面積が変化する際は、この点も確認が必要です。


これはケースバイケースが多いため、「変更を伴う作業を始める前に必ず確認する」という習慣が、法令違反を防ぐ最も確実な方法です。管轄の労働基準監督署や市区町村窓口に事前相談することで、無駄な差し戻しや工事の遅延を防ぐことができます。これだけ覚えておけばOKです。


参考:厚生労働省による安全衛生法関係様式(様式第20号のダウンロードページ)
安全衛生法関係様式集 – 群馬労働局(厚生労働省)




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