ウェットエッチングの種類と金属加工工程の選択

ウェットエッチングの種類には等方性と異方性があり、それぞれ異なる加工特性を持ちます。エッチング液の成分や反応条件により制御される金属加工技術について、具体的な種類と特徴を解説します。どの種類が適切でしょうか?

ウェットエッチングの種類

ウェットエッチング 種類と特性
等方性エッチング

全方向に均等に反応が進行し、高速処理が可能

🎯
異方性エッチング

一方向に優先的に反応し、精密な加工を実現

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エッチング液の選択

材料に応じた酸・アルカリ溶液の最適化

ウェットエッチングの基本分類と特性

ウェットエッチングは腐食の進み方により大きく2つの種類に分類されます。等方性エッチングは、エッチング液が被加工材のあらゆる方向に等しく反応する種類で、反応速度が速く大量処理に適しています。一方、異方性エッチングは一方向に優先的に反応が進む種類で、より精密な加工形状を実現できます。
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等方性エッチングでは、マスキングレジストの下部もえぐるように侵食するため、アンダーカットが発生しやすい特性があります。しかし、反応速度が高いため、大面積の加工や量産向けの用途に多用されています。異方性エッチングは反応速度が遅くなりますが、エッジの立った精密なパターン形成が可能で、微細加工が求められる分野に適用されます。
参考)【ドライ/ウェット】エッチング工程とは?原理と装置の構成

 

これらの種類の選択は、エッチング液の成分と被加工材の材質の組み合わせによって決まり、一般的に強酸を使用すると等方性となり、弱酸を使用すると異方性となります。温度、濃度、攪拌条件も反応特性に大きく影響し、プロセス制御の重要な要素となっています。
参考)https://www.witc.co.jp/blog/fiklceu2l/

 

ウェットエッチング液の種類と組成

ウェットエッチングに使用されるエッチング液は、被加工材の種類により様々な組成が採用されています。シリコン系材料には硝酸とフッ酸の混酸が使用され、硝酸が酸化反応、フッ酸が溶解反応を担い、酸化・溶解を繰り返すことで材料を除去します。酸化膜(SiO2)のエッチングには純粋なフッ酸(HF)が用いられ、水溶性のH2SiF6を生成することで溶解が進行します。
参考)https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/surface_treatment_technology/st01/c1934.html

 

金属材料では、アルミニウムやアルミニウム合金に対してNaOH(水酸化ナトリウム)溶液が使用され、150-180g/ℓの濃度で70-80℃の条件下で処理されます。銅およびその合金には塩化第二鉄(FeCl3)溶液や塩酸(HCl)と硝酸(HNO3)の混酸が適用され、材料特性に応じて濃度や温度が調整されています。
参考)基板エッチング技術とエッチング液の分析

 

窒化膜(Si3N4)の処理には熱リン酸(H3PO4、80℃)が使用され、シリコンを酸化させてSiO2を生成した後に溶解させる二段階の反応メカニズムを持ちます。これらのエッチング液の選択は、要求される加工速度、選択性、表面品質を考慮して決定され、プロセス最適化の鍵となります。
参考)化学エッチング:プロセス、利点、用途 - GlobalWel…

 

ウェットエッチング加工方式の種類

ウェットエッチングの加工方式には主に3つの種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。ディップ方式は被加工材をエッチング液槽に直接浸漬する最も基本的な方法で、複数枚の同時処理が可能なため量産性に優れています。この方式は薬液の均一な分布により安定した品質を確保できますが、エッチング液の消費量が多くなる傾向があります。
参考)プリント基板の製造におけるエッチングとは?メリットや手順をご…

 

スプレー方式はエッチング液を霧状にして被加工材に吹き付ける方法で、液の乱流効果により溶解が促進され、より高いエッチング速度を実現できます。この方式は薬液の使用量を抑制でき、かつ均一なエッチング効果を得られるため、プリント基板製造などで広く採用されています。スプレーの圧力や流量制御により、エッチング特性の微調整も可能です。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/59/2/59_2_88/_pdf/-char/ja

 

スピン方式は回転台に取り付けた被加工材にエッチング液を滴下する方法で、遠心力により液の均一な分散を図ります。この方式は小面積の精密加工に適しており、エッチング液の使用量を最小限に抑えることができます。回転速度の制御により、エッチング深さや均一性の調整が可能で、研究開発や試作段階でよく使用される方式です。

ウェットエッチングプロセス制御の種類

ウェットエッチングのプロセス制御には温度制御、濃度制御、時間制御の3つの主要な種類があります。温度制御はエッチング速度に直接影響し、高温では反応速度が向上しますが、過度な加熱はオーバーエッチングやマスクの損傷を引き起こすリスクがあります。適切な温度範囲の設定と精密な温度管理により、安定したエッチング特性を維持することが重要です。
濃度制御はエッチング液の活性度を決定する重要な要素で、濃度が高いほど反応速度は向上しますが、選択性や表面品質に影響を与える可能性があります。攪拌(かき混ぜる、またはスプレーする)により薬剤の均一な分散を図り、エッチングムラやアンダーカットの発生を防止する制御も重要です。濃度の経時変化を監視し、適切なタイミングでの液交換や補充を行うことで、プロセスの再現性を確保できます。
参考)https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/backno5_pdf53.pdf

 

時間制御は最終的な加工深さと形状精度を決定する要因で、被加工材をエッチング液に浸す時間が長いほど、エッチングはより深く、より広く進行します。プロセスウィンドウの設定により、所望の寸法精度を確保しつつ、オーバーエッチングを防止することが求められます。リアルタイムモニタリングシステムの導入により、エッチング進行状況を監視し、最適なエンドポイント検出を行うことが現代の高精度加工では不可欠となっています。

ウェットエッチング材料別対応の種類

ウェットエッチングでは対象材料に応じて最適なエッチング液の種類を選択する必要があります。鉄系材料では塩化第二鉄(FeCl3)系エッチング液が広く使用され、120-180g/ℓの濃度で50℃程度の温度条件下で0.025mm/分程度の加工速度を実現できます。ステンレス鋼(SUS)は高い耐腐食性を持つため、より強力なエッチング液や高温条件が必要となり、材質に応じた詳細な条件設定が重要です。
参考)金属加工における「エッチング加工」を徹底解説|メリット・デメ…

 

銅および銅合金には複数の種類のエッチング液が適用可能で、塩化第二鉄系、硝酸・塩酸混合系、よう素系などが用途に応じて選択されます。特に金の微細加工では、シアン系、王水系、よう素系の3種類の主要なエッチング液が存在し、それぞれ異なる特性を持ちます。よう素系は液性が中性で扱いやすく、成分濃度によるエッチング速度の制御も容易なため、半導体基板の金薄膜微細加工に多用されています。
アルミニウム材料には水酸化ナトリウム(NaOH)系のアルカリエッチング液が使用され、6-20g/ℓのアルミニウムを含む150-180g/ℓのNaOH溶液で70-80℃の条件下で処理されます。また、リン酸、硝酸、酢酸の混合液も使用され、80%リン酸、5%硝酸、酢酸の組み合わせが効果的とされています。コバール(鉄-ニッケル-コバルト合金)などの特殊合金には、材料特性を考慮した専用のエッチング液組成が開発されており、熱膨張特性や耐熱性を損なうことなく精密加工が可能です。