精密板金曲げ加工とプレスブレーキによる高精度曲げ技術

精密板金における曲げ加工の基礎知識から高精度な曲げ技術まで、プレスブレーキを用いた加工方法やスプリングバック対策、最小曲げ半径の設定について詳しく解説します。精密板金従事者が知るべき曲げ加工の技術とポイントとは?

精密板金曲げ加工の基礎技術

精密板金曲げ加工の概要
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高精度な加工技術

プレスブレーキを用いた精密な角度制御による高品質な曲げ加工

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多様な曲げ工法

V曲げ、L曲げ、Z曲げなど用途に応じた最適な加工方法の選択

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精密な寸法管理

スプリングバック補正と最小曲げ半径の適切な設定

精密板金曲げ加工の定義と特徴

精密板金曲げ加工とは、金属板を高精度で曲げることにより複雑な形状や角度を持つ部品を製作する加工技術です。一般的な板金加工と比較して、精密板金の曲げ加工では数ミクロン単位の精度が要求され、医療機器や電子機器などの高精密部品製造に欠かせない技術となっています。
参考)精密板金の曲げ加工における注意点とポイントについて解説

 

プレスブレーキを用いた曲げ加工では、上型(パンチ)と下型(ダイ)の間に金属板を挟み、パンチを下げることで金属板を所定の角度に曲げます。この加工方法は、直角な曲げだけでなく、鋭角や鈍角にも対応可能で、幅広い形状の部品製造を実現しています。
参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/metal-machining/32344/

 

精密板金加工における曲げ工程は、製品の品質とばらつきに大きな影響を与えるため、高度な技術力と最新の設備が必要です。特に複雑形状の精密板金では、曲げ加工の精度が最終製品の機能や性能を左右する重要な要素となっています。
参考)【精密板金における加工技術紹介】高精度曲げ加工 | 精密板金…

 

精密板金曲げ加工に使用する主要機械設備

精密板金の曲げ加工には、主にプレスブレーキとパネルベンダーという2種類の機械が使用されます。プレスブレーキは重くて厚い板への曲げ加工が得意で、複雑な立体形状に対応できる多様な形状の汎用金型が準備されており、初期費用なしで板金加工が可能です。
パネルベンダーは1.6mm以下の薄板への曲げ加工に最適で、条件次第では金型の取り換えが不要になり、プレスブレーキと比較して高い生産性を誇ります。ただし、しごき曲げの際にパンチ部分と母材の接地面に多少のキズが発生する恐れがあるため、注意して加工を行う必要があります。
最新のNCベンダーを導入することで、一発加工で高精度な曲げ加工が可能になり、従来機種では困難だった複雑形状の精密板金部品も高品質で製造できるようになりました。これらの設備は、数十個から数百個作る中量産以上の場合に特に重要な役割を果たしています。

精密板金曲げ加工の基本工程と流れ

精密板金の曲げ加工は、まず工程設計から始まります。図面の仕様通りの製品を製造するために、加工に使う汎用金型を選定し、曲げ加工の順番や回数を工夫して効率よく製造できる方法を検討します。
次に図面展開を行い、完成状態の寸法や仕様が指示された図面を曲げ加工前の状態に展開します。曲げ部は曲げRを考慮して展開し、加工途中での変形を防ぐために強度を確保する目的で、最終形状では必要ない曲げを一時的につける場合もあります。
実際の曲げ加工では、材料の準備から始まり、曲げる箇所や角度、方向などを計画した後、専用の機械で所定の角度まで曲げます。CAD(コンピュータ支援設計)やCAM(コンピュータ支援製造)ソフトウェアが活用されることもあり、より精密な加工が可能となっています。
参考)製造業の板金加工における曲げの仕事内容 - 有限会社 早野研…

 

精密板金曲げ加工で使用する金型とパンチダイシステム

精密板金の曲げ加工において、パンチとダイは必ずセットで使用される重要な金型です。例えばプレスブレーキを使った曲げ加工では、V字型の溝になったダイをセットし、上からパンチを押し当てて板材を曲げます。
参考)製品情報・加工技術|株式会社大橋製作所 メタル事業部

 

V曲げ加工では、上型は約90度の凸形状のパンチと呼ばれる金型を使用し、下型にはV形状の溝がある金型を使用します。鋼板を上下の金型の間に挟み、圧力を加えていくことで鋼板を曲げていき、この際の変形状態に応じてパーシャルベンディング、ボトミング、コイニングと呼ばれる特徴があります。
加工する板厚や材質に応じて適切な金型を選択することが重要で、金型の摩耗や油圧圧力の変動が曲げ精度に影響するため、定期的な工具点検とプレス機の校正が必要です。最新の精密板金加工では、3Dプリンティング技術を活用したAISI316L austenitic stainless steel製のパンチとダイの製造も研究されています。
参考)https://www.mdpi.com/2504-4494/6/3/49/pdf?version=1650459416

 

精密板金曲げ加工における独自の自動化・効率化技術

精密板金業界では、従来の手作業に依存した曲げ加工から脱却し、自動化・効率化を実現する独自技術の開発が進んでいます。電動サーボ小物ベンディング自動化システムの導入により、小型精密部品の連続加工が可能となり、人的作業によるばらつきを大幅に削減できます。
参考)株式会社バーコムシートメタル|総合板金加工(精密板金・ユニッ…

 

角度検出機による自動補正システムでは、曲げ加工中の製品角度をリアルタイムで検出し、自動で補正を行うことで正確な角度出しを実現しています。このシステムにより曲げ足りないことや曲げ過ぎることがなく、一発で高精度な曲げ加工が可能になります。
参考)曲げ加工で起こるスプリングバック対策とは? - ステンレス筐…

 

双腕ロボットによる板金曲げ加工の動作計画技術も実用化されており、複雑な曲げ順序を最適化することで作業効率を向上させています。これらの自動化技術は、特に多品種小ロット生産において威力を発揮し、精密板金の競争力向上に大きく貢献しています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/e189646dd03d4cedf22c6c19f8d3172c7c2aa0f1

 

精密板金曲げ加工の主要な工法とその特徴

精密板金の曲げ加工には、用途や形状に応じて様々な工法が使用されます。最も基本的なV曲げは、V型金型を用いて板材を押し込み曲げる方法で、突き当て位置と力加減を細かくコントロールすることで高精度な角度制御を実現します。
参考)精密板金加工の曲げ加工| V曲げ・Z曲げ・L曲げ・R曲げ・段…

 

L曲げ(押さえ曲げ)は、板材を押さえながらパンチを押し当ててL字(直角)に曲げる加工方法で、板を押さえながら曲げるためV曲げと比べて成形が安定し、長い板材の曲げも可能です。U曲げ(逆押さえ曲げ)では、パンチと逆押さえで加圧してU字に曲げ、両角を同時に曲げることで曲げ角度のバラツキを少なくできます。
参考)曲げ加工 – 金属を曲げる曲げ加工とV曲げ・U曲げ・L曲げを…

 

Z曲げ(曲げ戻し)は、板材をZ字に曲げる加工方法で、2工程加工と1工程加工の2つの方法があります。1工程加工では専用金型を使って一度でZ字に曲げることができ、2工程加工と比べて寸法精度が高く成形が安定しています。これらの工法を適切に選択することで、求められる精度と形状を効率的に実現できます。

精密板金曲げ加工におけるスプリングバック対策技術

スプリングバックは、曲げ加工後に圧力が除かれると材料が一部元の形状に戻る現象で、精密板金加工において最も重要な課題の一つです。正確な角度・形状で曲げを実現するためには、スプリングバックを考慮して仕上げる形状よりも深い角度まで曲げておく対策が必要です。
代表的なスプリングバック対策として、あらかじめ曲げ角度を鋭角にする方法があります。スプリングバックは起きてしまうものと想定し、余分に曲げ角度を鋭角にしてスプリングバックで増加した角度と合わせて規格に入るように調整します。
2段曲げによる対策では、1段階目は予備曲げとして80°~90°程度曲げ、一旦加圧を緩めて故意にスプリングバックを起こした後、パンチを上昇させずに再度加圧を行って指定の角度を出します。コーナー抑え込み方式(ストライキング)では、パンチの刃先面の両隅にストライキングと呼ばれる出っ張りを設け、コイニング方式の曲げに近づけることでスプリングバックを防止します。
参考)https://www.conic.co.jp/tech/brake/pdf/tech_pb-11.pdf

 

精密板金曲げ加工における最小曲げ半径の設定

最小曲げ半径(Rmin)とは、外側に亀裂が現れずに曲げることができる限界の内側半径を指し、精密板金加工の品質を左右する重要なパラメータです。基本的に、展延性が低く板厚が厚いものほど最小曲げRが大きくなり、展延性が高く板厚が薄いものほど最小曲げRは小さくなります。
参考)板金加工の基礎講座href="https://www.sheetmetal.amada.co.jp/column/course02/basis13/" target="_blank">https://www.sheetmetal.amada.co.jp/column/course02/basis13/amp;#x2161; 箱物展開

 

板厚別の最小曲げ寸法は材料特性によって異なり、例えばL曲げ加工では板厚0.5mmで内R=0の場合3.3mm、板厚3.0mmで内R=0の場合5.2mmという具合に設定されます。Z曲げ加工では板厚0.5mmで内R=0の場合5.9mm、板厚3.0mmで内R=2.0の場合16.9mmとなり、加工方法により異なる制約があります。
参考)標準加工情報 - 丸井工業株式会社

 

最小曲げRを小さくする方法として、材料の選定、加工温度の調整、曲げ速度の制御、潤滑剤の使用、予備成形の実施、熱処理などが有効です。これらの要素を適切に組み合わせることで、より小さな曲げ半径での高精度加工が可能となり、複雑な形状の精密板金部品製造を実現できます。
参考)曲げRの計算方法【基礎知識】図面指示と板厚・強度|金属加工総…