差圧式流量計の設定を少し変えるだけで、流量指示値に最大10%もの誤差が出ることがあります。

差圧式流量計の動作原理を理解するには、まず「ベルヌーイの定理」を押さえることが出発点になります。ベルヌーイの定理とは、流体が管路内を流れるとき、運動エネルギー・圧力エネルギー・位置エネルギーの総和が一定に保たれるという物理法則です。簡単に言い換えると、「流速が上がると圧力が下がる」という関係が成り立ちます。
差圧式流量計は、この性質を意図的に利用する計測機器です。管路の途中にオリフィスプレートなどの「絞り機構」を設けると、流体が絞られた部分で流速が上昇し、その分だけ圧力が低下します。絞りの上流側と下流側に圧力タップを設けて、その圧力差(差圧ΔP)を検出することで、流量を逆算できます。つまり差圧です。
実際の計算式を示すと、体積流量 Q は以下の関係で表されます。
$$Q = C \cdot \frac{\pi}{4} d^2 \cdot \sqrt{\frac{2\Delta P}{\rho(1 - \beta^4)}}$$
ここで C は流出係数(実験で求められる補正値)、d は絞り部の直径、ΔP は差圧、ρ は流体密度、β は絞り径比(絞り径÷管内径)です。重要なのは、流量が「差圧の平方根に比例する」という点です。これが後述するレンジアビリティの制限に直結します。
金属加工現場では、切削液や冷却水の流量管理にこの原理が広く使われています。可動部がないため故障リスクが低く、気体・液体・蒸気など幅広い流体に対応できる汎用性の高さが支持される理由です。構造がシンプルなのも強みです。
昭和機器計装:差圧式流量計のベルヌーイ式を使った流量計算の詳細図と計算式の解説ページ
差圧式流量計は「絞り機構の形状」によって、大きく3種類に分類されます。それぞれの原理は共通ですが、構造・コスト・圧力損失・固形物への耐性が異なります。現場で機種を選ぶ際には、この違いを理解しておくことが大切です。
まず最も広く使われるのがオリフィス流量計です。管路の途中に、穴(オリフィス)の空いた薄いプレートを挟む構造で、製作が容易なため低価格です。ただし絞りの断面が急激なため圧力損失が3種類の中で最大になります。また、プレートのエッジ(縁)が摩耗しやすく、切削スラッジや金属微粉末が含まれた流体には不向きです。
次にベンチュリ管流量計です。管を徐々に縮小し、最小断面(スロート部)を経て緩やかに拡大する形状をしています。圧力の回復が良好なため圧力損失がオリフィスより大幅に小さく、堆積物も生じにくいのが特徴です。しかし構造が複雑なため製作コストが高く、本体が長くなることで設置スペースが必要になります。原水・工業用水などでよく採用されます。
最後にフローノズル流量計です。オリフィスの孔部を下流側にノズル状に伸ばした形状で、オリフィスとベンチュリ管の中間的な特性を持ちます。圧力損失はオリフィスより小さく、ある程度の固形物にも対応できるため、高温高圧の蒸気流量計測にも採用されます。これは使えそうです。
以下に3種類の特徴を比較した表をまとめます。
| 種類 | 圧力損失 | コスト | 固形物耐性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| オリフィス | 大きい | 安価 | 弱い | 一般液体・気体・蒸気 |
| ベンチュリ管 | 小さい | 高価 | 強い | 工業用水・原水 |
| フローノズル | 中程度 | 高温高圧蒸気・固形物含む流体 |
金属加工工場では、切削液配管にオリフィスを選ぶケースが多いですが、スラッジが多い環境ではフローノズルへの切り替えが詰まりトラブルを減らします。選定時は流体特性の確認が条件です。
プラントエンジニアの樹:差圧式流量計の種類別比較と特徴まとめ(オリフィス・ベンチュリ管・フローノズル)
差圧式流量計を現場で使っていると「流量が少ないとき、指示値がぶれる」という経験をした方も多いはずです。この現象には、原理そのものに起因するはっきりした理由があります。
差圧式流量計では、流量は差圧の平方根に比例します。これはつまり、流量が2倍になると差圧は4倍、流量が3倍になると差圧は9倍になる関係です。逆に言えば、差圧が少し変化しても、低流量域では流量の変化量が大きくなります。差圧の0.1%という微小な変動が、流量にすると約3.2%の誤差として現れるケースもあります。これが測定下限付近での指示不安定の正体です。
この特性から、差圧式流量計のレンジアビリティ(測定できる最大流量と最小流量の比)は一般的に5:1程度、実際の運用では4:1程度で使用されることが多いです。測定範囲が狭いということですね。一方、渦流量計のレンジアビリティは25:1と大きく、低流量も安定して計測できます。
そのため、流量が大きく変動する工程では差圧式に限界が生じます。対策として現場でよく取られる方法は以下の3つです。
金属加工の冷却水ラインでは、加工条件によって流量が頻繁に変わる場合があります。その場合は差圧式だけに頼らず、測定レンジの見直しや伝送器の設定確認をあわせて行うことが大切です。
計装技術ブログ:差圧式流量計のローカット機能とゼロ点誤差・レンジアビリティの詳細解説
差圧式流量計が正確に動作するためには、測定精度を確保するための前提条件があります。その中でも現場でもっとも見落とされやすいのが「直管長(ちょっかんちょう)の確保」です。
直管長とは、流量計の前後に設ける真っ直ぐな配管区間のことです。曲がり管やバルブのすぐ後ろでは、流れに旋回流や偏りが生じており、オリフィスに到達する流速分布が乱れています。この状態で差圧を計測しても、ベルヌーイの定理が前提としている「均一な流速分布」が成り立たないため、誤差が大きくなります。流速分布の乱れが原因です。
一般的に必要とされる直管長の目安は、以下のとおりです。
たとえば内径50mmの配管なら、上流側に最短でも250mm(約はがき1枚分の縦幅=148mmより長い区間)、最大では4,000mm(4m)もの直管が必要になります。工場内の既設配管では、このスペースを確保できないケースも珍しくありません。
どうしても直管長が取れない場合の対策として、上流部に「整流器(フロー・コンディショナー)」を挿入する方法があります。整流器は複数の細孔を持つ板状の部品で、乱れた流速分布を均一化してくれます。設置スペースを大幅に圧縮できるため、既設配管への後付け改善にも有効です。これは使えそうです。
また、気体や蒸気を扱う現場では「導圧管の詰まり」もトラブルの原因になります。差圧の信号を伝える細い管(導圧管)に錆・スケール・油分が蓄積すると、正常な差圧が伝わらず指示値がずれます。金属加工工場の冷却水ラインでは、特に錆や切削スラッジが混入しやすいため、定期的なブローダウン(洗浄)が必要です。
キーエンス:差圧式流量計のトラブル事例(直管長不足・圧力管詰まり・脈動)と対策方法
差圧式流量計はシンプルな原理を持ちながら、実際の選定では「思っていたより条件が多い」という印象を持たれることが多いです。ここでは現場目線で整理した選定ポイントを紹介します。また、他のサイトではあまり触れられていない「流体密度の変化への対応」という視点も加えます。
まず基本の確認事項として、以下をチェックしてください。
ここで一般にあまり語られない注意点を一つ挙げます。差圧式流量計の計算式には流体密度ρが含まれますが、この密度は温度・圧力によって変化します。特に気体(圧縮空気など)を測定している場合、配管内の圧力や温度が変動すると、密度が変わるにもかかわらず計算式上は一定と扱ってしまうため、実際の流量と指示値にずれが生じます。結論は密度補正の実施が原則です。
冷却水ラインでも、夏場と冬場で水温が大きく異なる場合、水の密度が若干変化します。水は圧縮性が低いため気体ほど深刻ではありませんが、精密な流量管理が必要な工程では補正を検討する価値があります。
なお、差圧伝送器の設置には「三岐弁(マニホールドバルブ)」の設置が推奨されています。これは、配管を止めることなく差圧伝送器のゼロ点調整(キャリブレーション)を行うための弁で、メンテナンス時の停止時間を大幅に短縮します。設置時に忘れずに組み込んでおくことが、長期運用コストの削減につながります。三岐弁は必須です。
HORIBA:差圧式流量計の原理・特徴・用途を徹底解説(密度補正・適用流体の詳細まで)

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