ISO9001を取得済みでも、nadcap認証の受審条件を満たせず門前払いになる企業が後を絶ちません。
Nadcap(ナドキャップ)とは、米国の非営利組織PRI(Performance Review Institute)が運営する、航空宇宙産業の特殊工程に特化した国際認証制度です。 ボーイング、エアバス、GE、ロールスロイス、ハネウエルといった世界の航空機・エンジンメーカーがプライムメーカー(サブスクライバー)として参加しており、サプライヤーに認証取得を義務付けています。 jaqg.sjac.or(https://jaqg.sjac.or.jp/faq/faq09.html)
金属加工業者にとって身近な対象工程は以下の通りです。 expertbus(https://expertbus.biz/?page_id=275)
- 🔥 熱処理(Heat Treating)
- 🔩 溶接(Welding)
- 🧪 非破壊検査(NDT)
- ⚙️ 特殊機械加工(Non-Conventional Machining)
- 🧲 化学処理(Chemical Processing)
- 🪨 複合材料(Composites)
審査費用の目安は工程ごとに異なります。 expertbus(https://expertbus.biz/?page_id=275)
| 工程 | 審査日数 | 審査費用(USD) |
|------|---------|----------------|
| 特殊機械加工 | 2日 | $4,530 |
| 溶接 | 2日 | $4,740 |
| 非破壊検査 | 3日 | $5,225 |
| 熱処理 | 4日 | $6,040 |
| 複合材料 | 4日 | $6,040 |
これが基本です。ただし審査費用だけで総コストを判断するのは危険です。
現在、国内でnadcap認証を取得している企業は決して多くありません。2015年1月時点でも全国134事業所・278認証の取得にとどまっており、中小企業は約67事業所(全体の約5割)でした。 航空宇宙産業という特性上、取得企業は特定の地域・分野に集中する傾向があります。 tkc(https://www.tkc.jp/cc/senkei/201510_consult01)
東京都の支援組織TMAN(東京都中小企業振興公社)が公開している認証企業一覧には以下の企業が掲載されています。 tman.metro.tokyo.lg(https://www.tman.metro.tokyo.lg.jp/supplier/nadcap.html)
| 会社名 | nadcap認証の範囲 |
|--------|----------------|
| 株式会社上島熱処理工業所 | 熱処理 |
| 金属技研 株式会社 | 熱処理 |
| コスモ精機 株式会社 | 従来型機械加工 |
| 菅澤製機 株式会社 | 非破壊試験 |
| 多摩冶金 株式会社 | 熱処理 |
| 日本プレシジョンキャスティング 株式会社 | 溶接・熱処理・非破壊試験 |
| 三益工業 株式会社 | 熱処理・非破壊試験 |
| 株式会社吉増製作所 | 特殊機械加工・溶接・熱処理・非破壊試験 |
兵庫県のHAC(ひょうご航空ビジネス・プロジェクト)には福伸電機株式会社(機械加工・板金成型・溶接、JIS Q9100+Nadcap取得)が参加しています。 また多摩川パーツマニュファクチャリング株式会社は熱処理・溶接/ろう付け・表面処理・非破壊検査の4工程でnadcap認証を保有しています。 hyogo-hac(https://www.hyogo-hac.com/introduction/)
網羅的な一覧は公開されていません。PRIの公式サイト(eAuditNet)に登録企業データベースがありますが、英語環境での検索になります。
TMAN公式:東京都内のNadcap認証企業一覧ページ(工程別に検索可能)
「ISO9001を取得しているからnadcap受審もできる」と思っている方が多いですが、これは間違いです。 ISO9001認証の取得だけでは、nadcap認証取得の条件を満たせません。 jaqg.sjac.or(https://jaqg.sjac.or.jp/faq/faq09.html)
取得に必要な前提条件は以下の2点です。 staging.namac(https://staging.namac.jp/column/3631)
1. AS/EN/JIS Q 9100の認証取得(または AC7004による品質システムの構築)
2. ボーイング・GEなどのサブスクライバー(顧客)からnadcap取得を要求されていること
つまりnadcapは原則、顧客要求がある場合に取得するものです。 「いつか航空宇宙分野に参入したいから先に取得しておこう」という単独の動機では、審査受付の条件すら満たせないケースがあります。 hinshoken-tfm(https://hinshoken-tfm.jp/archive/8187/)
条件が2つあるのがポイントです。どちらか片方だけでは不十分です。
JAQG(航空宇宙品質センター):nadcap受審の必要条件に関するFAQ(公式)
取得費用について「審査費用だけ払えばOK」と考えていると大きな誤算を生じます。これは痛いところですね。
地方創生関連の官公庁資料によれば、nadcap新規取得にかかる期間は約1年半、費用は約200万円が目安とされています。 ただしこれはあくまで最低ラインです。実態はさらに上乗せされます。 chisou.go(https://www.chisou.go.jp/tiiki/tiikisaisei/dai67nintei/plan/a0090.pdf)
具体的な追加コストの内訳を見てみましょう。 tkc(https://www.tkc.jp/cc/senkei/201510_consult01)
- 📄 英語資料の翻訳・文書英語化費用
- 🗣️ 通訳費(現地審査時)
- 🏗️ 品質管理部門の体制拡充費
- 🔧 設備投資費(必要な場合)
認証取得済み中小企業の約5割が初回審査準備に1〜1.5年をかけており、受審費用だけで50〜100万円程度かかります。 翻訳・通訳・体制整備まで含めると、200万円を超えるケースは珍しくありません。 tkc(https://www.tkc.jp/cc/senkei/201510_consult01)
静岡県・全国の一部自治体では、こうした認証取得費用を対象とした最大100〜500万円の助成金制度が設けられています。 取得を検討する段階で、各都道府県の航空機産業支援窓口に事前相談することで、費用の一部を補填できる可能性があります。 hojyokin-portal(https://hojyokin-portal.jp/subsidies/73094)
補助金ポータル:静岡県航空機産業認証取得助成金の詳細(最大500万円、Nadcap認証対象)
nadcap認証は「あると便利な資格」ではありません。ボーイング・エアバス・GEといった世界の航空機・エンジンメーカーが、製造委託の条件として認証取得を義務付けているケースが多いため、認証がなければ発注リストにすら載れないという状況になっています。 hinshoken-tfm(https://hinshoken-tfm.jp/nadcap/)
「認証を持っていると得をする」ではなく、「持っていないと発注先から除外される」時代になっています。これが現実です。
ジャムコ株式会社はNDT(非破壊検査)・複合材・レーザー加工の3工程でnadcap認証を2014年4月から保有しており、世界水準の品質管理の証明として活用しています。 認証取得をきっかけに、新規取引先の開拓や既存顧客からの受注拡大につながった事例は国内でも複数確認されています。 jamco.co(https://www.jamco.co.jp/ja/business/jco/strength/case02.html)
全国航空機クラスター・ネットワーク:nadcap認証取得の条件と審査の特徴について(専門解説記事)
nadcap取得の道筋は「何となく準備する」では進みません。段階が決まっています。
Step 1:AS/JIS Q 9100の取得
まずnadcap受審の前提条件となるJIS Q 9100認証を取得します。IS09001とは別の規格であることを改めて認識してください。 認証機関はIAQGのOASISデータベースに登録された日本国内5社から選びます。 staging.namac(https://staging.namac.jp/column/3631)
Step 2:顧客(サブスクライバー)からの要求確認
実際の顧客(ボーイング・GE系のTier-1メーカーなど)から書面や仕様書でnadcap取得を要求されているかを確認します。 要求の有無が審査受付の条件になります。 hinshoken-tfm(https://hinshoken-tfm.jp/archive/8187/)
Step 3:対象工程の特定と文書整備
自社が審査を受ける工程(熱処理・溶接・NDTなど)を絞り込み、工程仕様書・手順書・記録類を英語で整備します。 翻訳・文書作業の費用と時間は多くの企業が想定以上と感じています。 tkc(https://www.tkc.jp/cc/senkei/201510_consult01)
Step 4:PRIへの申請と現地審査
PRI(eAuditNet)経由で申請し、現地審査(平均3日前後)を受けます。 初回通過率は高くないため、専門コンサルタントの活用を検討するのも有効です。 tkc(https://www.tkc.jp/cc/senkei/201510_consult01)
Step 5:認証維持のための定期審査対応
nadcap認証は取得して終わりではありません。定期審査(サーベイランス)への対応と、品質管理体制の維持が継続的に必要です。
なお、取得支援の専門コンサルタント会社(エキスパートビジネスなど)が国内にも存在しており、初回審査の準備段階から伴走サポートを提供しています。 expertbus(https://expertbus.biz/?page_id=275)
エキスパートビジネス:Nadcap認証取得支援サービス(審査費用・プロセスの詳細も掲載)
TKCグループ:航空産業の国際認証制度「ナドキャップ」解説(中小企業向けの実態データあり)