無酸素銅(C1020、C1011)は、真空中または一酸化炭素などの還元性雰囲気中で溶解し、鋳造することによって製造されます 。この製造プロセスにより酸素含有量を0.001%以下まで抑制し、銅純度99.99%以上という極めて高純度な純銅を実現しています 。
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製造工程では電解精製された高純度銅を脱酸処理せずにそのまま鋳造し、酸化を防ぐために還元性ガス雰囲気下で溶解・鋳造が行われます 。この工程により「OFC(Oxygen-Free Copper)」と呼ばれる酸素を含まない極めて不純物の少ない銅材が得られます 。
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無酸素銅の最大の特徴は、高温加熱しても水素脆化が生じない点にあります 。また、低温環境での熱伝導率が純アルミニウムや純チタンと比較して10分の1以下となり、圧倒的に高い熱伝導率を誇ります 。
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タフピッチ銅(C1100)は、純度が99.90%以上の純銅で、0.02~0.05%程度の酸素を意図的に残留させて製造されます 。溶解した電気銅に酸化銅を添加し、酸素を含有させる製法が用いられています 。
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タフピッチ銅に含まれる酸素は、導電性を害する不純物元素を酸化物として析出させて無害な形にするため、実際にはタフピッチ銅の導電性を向上させる効果を持ちます 。そのため、タフピッチ銅はより純度の高い無酸素銅と同等の導電性を発揮することができます 。
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しかし、含有する酸化銅は600℃以上に加熱すると水素と反応して水蒸気を生成し、割れや亀裂などを生じさせる水素脆化を起こします 。このため、タフピッチ銅は高温状態となるような用途には向いておらず、溶接やはんだ、ろう接などの加工には適していません 。
無酸素銅はその優れた特性から、ブスバーや放熱板、コネクタや端子などの電子部品から医療機器まで幅広い用途に使用されています 。特に真空装置や電子管、半導体製造装置など、非常に高い気密性や清浄性が求められる用途で重宝されています 。
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電気・電子分野では、無酸素銅の高い導電性と耐疲労性を活かし、電線の導体や高性能オーディオケーブル、半導体部品の配線材料として利用されています 。ガス放出特性の優秀さから、極低温環境下での熱交換器や真空機器にも多く活用されています 。
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最新の研究では、三菱マテリアルが開発した高性能無酸素銅「MOFC-GC」のように、セ氏1千度での加熱があっても微細で均一な結晶組織を安定的に保てる製品も登場しており、電動車向けなどの高温環境での応用が期待されています 。
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タフピッチ銅は電気・電子機器における導体材料として最も多用されている素材の一つです 。電力の伝送を担う送電線や配電線、トランスの巻線、モーターのコイル、電車の架線、スイッチギアのブスバーなど、電気エネルギーの損失を極力抑える必要がある用途でその力を発揮します 。
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電子部品分野では、プリント基板(PCB)の銅箔、リードフレーム、コネクタ端子、ICチップの配線材料などに利用されています 。微細加工が求められるこれらの用途では、タフピッチ銅の延性や成形性も大きなメリットとなります 。
自動車産業では、電動車両の電気配線、モーターの巻線、接続部品などに使用されることが多く、自動車の性能向上とエネルギー効率の改善が図られています 。建築分野では屋根材や配管材としても利用され、銅の耐食性や長寿命が建築物の耐久性向上に寄与します 。
参考)タフピッチ銅の特長と製造業での利用方法
金属加工における材料選択では、使用環境と要求特性を総合的に評価する必要があります 。水素脆化が懸念される高温環境や溶接を伴う用途では、無酸素銅への切り替えが必要となります 。水素脆化は「遅れ破壊」という極めて深刻なトラブルを引き起こす可能性があるため、安全性を重視する場合は無酸素銅の選択が推奨されます 。
参考)タフピッチ銅から無酸素銅への材質変更提案! - 銅板加工.c…
コストパフォーマンスの観点では、タフピッチ銅は同等の電気伝導性を持つ無酸素銅に比べて安価であり、信頼性とコストのバランスが重要視される民生品から産業機器まで幅広い分野で選ばれています 。ただし、酸素含有量の違いは一見小さな差に見えて実は非常に大きな差となるため、用途に応じた適切な選択が重要です 。
品質管理の面では、材料の特性を理解し、加工条件を適切に設定することが製品品質の向上に直結します 。強度や耐腐食性などの特性を把握し、適切な加工方法を選ぶことで、製品の信頼性を確保することができます 。
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