FRPパテには多様な種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。車の整備現場でよく使用される代表的なパテとして、ニューポリラック白、PLライト12、MAX KK5000Eなどがあります。
ニューポリラック白は4.0kg容量で、可使時間が4~8分、研磨開始時間が25~50分となっており、白色でFRPの補修に最適とされています。特に目立たない仕上がりが要求される外装部品の補修に適しており、研磨性は標準的ですが、収縮性が少なく安定した仕上がりが期待できます。
PLライト12は3.0kg容量で、可使時間が5~12分、研磨開始時間が30~70分です。取扱いが容易で研磨性が良好という特徴があり、初心者でも扱いやすいパテです。白色と黒色の両方が用意されており、下地色に応じて選択できます。
MAX KK5000Eは14kg容量の大容量タイプで、可使時間が4~12分、研磨開始時間が30~90分です。重機ウエイトなど大型鋳物の補修に最適とされており、抜群の研磨性を誇ります。大規模な補修作業や商用車の修理に威力を発揮します。
アラミド繊維配合のFRP強化パテも注目されています。鉄の5倍の引張強度を持ち、曲げや振動に強い特性があります6。サイドシルやドア部分のリペアなど、構造的強度が要求される箇所の補修に特に有効です。
硬化剤の種類も重要な選択要素です。硬化剤BはBPO、硬化剤CはCHPOとなっており、季節や作業環境に応じて適切な硬化剤を選択する必要があります。
FRPパテ補修の基本手順は、サンディング→FRP積層→サンディング→ゲルコート塗布→サンディング→バフ掛けという流れになります。この工程を正確に実行することで、プロレベルの仕上がりを実現できます。
下地処理は補修の成否を左右する重要な工程です。まず、ひび割れの両側にマスキングテープを貼り、周囲を保護します。次に耐水ペーパー(#400)で、ひび割れのラインに沿って研磨し、バリを取り除きます。研磨は方向性をクロスにすることで密着力が増します。
表層に油分などがある場合は、アセトンで脱脂することが重要です。シリコンオフを使用した脱脂も効果的で、パテの密着性を大幅に向上させます6。
穴が開いた場合の補修では、穴の断面をテーパー状に広げる処理が必要です。これにより、パテとの接合面積が増加し、強度の向上につながります。少量のポリエステル樹脂主剤に硬化剤を添加し、少量の塗料を入れて色付けすることで、混ぜムラによる硬化不良を防げます。
パテの盛り付けは、収縮分を見込んで厚めに行うことがポイントです。空気を抜くイメージで、あちこちに漉すように作業します。穴の周りに薄く厚みを持たせることで、ガラスマットとの密着性が向上します。
ガラスマットの取り扱いにも注意が必要です。ハサミで綺麗に切るのではなく、手でちぎった方が馴染みが良いとされています。マットに樹脂を塗る際は、樹脂分が多いと強度が上がらないため、如何に樹脂分を少なくするかが成功の鍵となります。
硬化剤の配合は、作業環境と季節によって大きく左右される重要な要素です。気温・パテ温・天気・湿度・日照などの諸条件により、可使時間と研磨開始時間が様々に変化します。
基本的な乾燥時間の目安として、20℃環境下では約20~40分となっています。しかし、10℃以下の低温時や雨・雪が降る可能性が高い場合、湿度が85%以上の時には、FRPの硬化・乾燥が著しく低下し、付着力が弱くなるため作業を避けるべきです。
硬化剤の添加量は、工程スピードとの兼ね合いを考慮する必要があります。硬化剤を多く入れすぎると穴(スアナ)が発生する可能性があるため、適切な量を守ることが推奨されます。工程スピードを上げたい場合は、硬化を早めて2回目以降に工程を分けることがベターです。
強制乾燥を行う場合は、40℃で5分程度、必ず50℃以下で10分以内とすることが重要です。50~60℃で5~10分程度の強制乾燥により、大幅に乾燥時間を短縮できます。
硬化剤Cのパテの場合、補助硬化剤Bを一緒に使用することにより大幅に乾燥時間を短縮できる裏技があります。この方法は、急ぎの修理作業で特に重宝します。
結露や雨上がりなどで補修面が湿っている時は、剥離や乾燥不良の原因となるため、1~2日間乾燥させてから作業することが必須です。夏場では直射日光の下での使用を避け、適切な作業環境を整えることが品質向上につながります。
FRPパテの強度は、接着剤強度と構造的強度の両面から考える必要があります。接着剤強度に関しては、内部への食い込みと両方の接合という観点から、浸透しやすいのは樹脂、厚みが出やすいのがパテという特性があります。
木材などの多孔質材料との接合では、浸透よりも厚みが必要なケースが多いため、タルクパテの方が比較的接着剤強度は強くなると推察されます。しかし、接合部は応力が集中するため、板面のみの接着力と、ガラスマット入りFRPでは曲げ強度に極めて大きな差が出ます。
薄く、強くという意味合いでは、ガラス繊維を入れるのがベストの選択になります。ガラスマット一枚を貼り付け混合液を塗ると0.8ミリの厚さになり、貼る枚数を多くすればするほど強度が強くなり、分厚くなっていきます。
密着性の向上には、荒手の研磨ペーパーでの研磨が基本的な方向性となります。研磨の方向性をクロスにすることで密着力が増し、表層に油分などがある場合はアセトンで脱脂することでより良い結果が得られます。
ミッチャクロンなどのプライマーを使用することも効果的で、ゲルコートの脱泡補正を行う際にリューターで掘った穴にミッチャクロン、アセトン、スチレンなどを塗ることで密着性が向上します。
表面処理の技術として、1000番程度まで削ってコンパウンドの中目から細目で仕上げる方法があります。場合によっては極細目まで使用し、研磨するタイミングのベストタイムは、外部環境に大きく左右されますが、数時間後の固くなりすぎず、かつきちんと削れるタイミングが最適です。
FRPパテ作業における安全対策は、作業者の健康と作業品質の両面で重要な要素です。ガラス繊維を扱うため、肌や目を保護する保護具は必須です。ガラス繊維は直接皮膚に触れてしまうとチクチクと非常に不快な思いをするため、手袋の着用は必須です。
呼吸器保護として、有機ガス用塗装マスクなどを使用し蒸気を吸い込まないようにすることが重要です。FRP材料は有機溶剤を含むため、適切な換気と保護具の使用は法的義務でもあります。
目の保護では、保護メガネの着用が推奨されます。ガラス繊維は非常に細かく、目に入ったり肺などに吸い込んでしまう可能性があるため注意が必要です。
作業環境の管理も重要な品質管理要素です。火気のあるところでは使用せず、取り扱い中、乾燥中とも換気をよくすることが必須です。特に密閉された工場内での作業では、適切な換気設備の稼働と定期的な空気の入れ替えが必要です。
温度・湿度管理は作業品質に直結します。10℃以下の低温時や湿度85%以上の高湿度時は作業を避け、最適な作業環境を維持することで安定した品質を確保できます。
品質検査のポイントとして、硬化後の密着性テスト、表面の平滑性確認、強度テストなどを実施することが推奨されます。特に安全に関わる構造部品の補修では、十分な強度確認を行う必要があります。
作業記録の管理も重要で、使用したパテの種類、硬化剤の配合比、作業環境条件、乾燥時間などを記録することで、品質の安定化とトラブル時の原因追究が可能になります。定期的な技術研修と最新の安全基準への対応も、プロの整備工場として必要な取り組みです。