FRP使い方基本から補修手順まで完全解説

車の整備でFRPを使った補修作業は避けて通れません。正しい積層手順や離型ワックスの使い方、硬化剤の配合比率を知ることで品質の高い補修が可能になりますが、あなたは適切な手順を理解していますか?

FRP使い方基本手順

FRP補修の基本ポイント
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積層補修手順

サンディング→FRP積層→ゲルコート塗布の順序で進行

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離型ワックス処理

型からの剥離を確実にするための重要な前処理工程

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硬化剤配合管理

用途別に異なる硬化剤混入量の正確な調整

FRP積層補修の基本手順と注意点

FRP(繊維強化プラスチック)の補修作業は、車の整備において重要な技術の一つです。基本的な補修手順は「サンディング⇒FRP積層⇒サンディング⇒ゲルコート塗布⇒サンディング⇒バフ掛け」という流れで進行します。

 

まず表面処理として、電気サンダーと60〜320番のサンドペーパーを使用して樹脂研磨を行います。この工程では、補修箇所の古い塗装や劣化した樹脂を完全に除去することが重要です。不十分な下地処理は、後の積層作業での接着不良の原因となります。

 

積層作業では、ガラスクロスと樹脂を順番に重ねていきます。気泡の混入を防ぐため、ローラーを使って空気を押し出しながら作業を進めます。各層の硬化を待ってから次の層を積層することで、強度のある補修部位を作り上げることができます。

 

表面が削れた状態の補修方法と穴が開いた場合では手順が異なる点も注意が必要です。穴が開いた場合は表裏両方からの補修が必要となり、より複雑な作業工程が求められます。

 

離型ワックスの正しい使い方と回数

FRP作業において離型ワックスの使用は、型からの確実な剥離を実現するための重要な工程です。特に初回の型には複数回、通常3回ほどの塗布が必要とされています。

 

正しい手順は「塗布⇒拭き取り」を3回転繰り返すことです。1回の塗布では十分な離型効果が得られない場合が多く、薄く均一に塗布することを心がけながら重ね塗りを行います。

 

離型ワックス選択では、ボンリースやPVCなどの選択肢があります。PVCを刷毛塗りで使用する場合、刷毛の種類や粘性を調整することで刷毛跡を最小限に抑えることが可能です。刷毛の目が出る可能性もあるため、塗布技術の習得が重要になります。

 

パテで作成したマスターでも離型ワックスによる剥離は可能ですが、表面を研磨してつるつるの状態にする必要があります。凹凸があると物理的な食いつきが発生し、レゴブロックのように接着してしまう現象が起こります。

 

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硬化剤混入量の用途別調整方法

FRP作業では硬化剤の混入量が作業性と最終的な品質を大きく左右します。同じポリエステル樹脂でも用途によって硬化剤の配合比率が大きく異なる点に注意が必要です。

 

サーフボード用ポリエステル樹脂とヨット・ボート用ポリエステル樹脂では、硬化剤混入量が異なります。サーフボード用樹脂の硬化剤混入量は比較的多く設定されており、これは作業環境や求められる硬化速度の違いによるものです。

 

車体補修では、作業環境の温度や湿度、作業可能時間(ポットライフ)を考慮して硬化剤量を調整します。一般的に、温度が高い環境では硬化剤量を減らし、低温環境では増量する必要があります。

 

硬化剤の混入が適切でない場合、以下の問題が発生する可能性があります。

  • 硬化不良による強度不足
  • 硬化速度の異常(急激な硬化や硬化遅延)
  • 表面のべたつきや白化現象
  • 内部応力の発生による亀裂

硬化後のスチレンの揮発については、風通しの良い場所であれば数日でほとんど感じられない程度まで減少します。保管環境を整えることで、作業環境の改善と健康への配慮を両立できます。

 

表面処理とサンディング技術のポイント

FRP補修における表面処理は、最終的な仕上がり品質を決定づける重要な工程です。適切なサンドペーパーの番手選択と研磨技術により、プロフェッショナルな仕上がりを実現できます。

 

初期のサンディングでは60〜320番の粗めのサンドペーパーを使用し、樹脂部分の研磨を行います。この段階では古い塗装や劣化部分の除去が主目的となるため、効率的な研磨が求められます。

 

ゲルコート塗布後の仕上げ研磨では、600〜800番の耐水ペーパーを使用します。水研ぎにより発熱を抑制し、ゲルコート表面の平滑性を向上させることができます。

 

最終工程のバフ掛けでは、ポリッシングコンパウンドを使用してゲルコート表面の光沢を復元します。この工程により、補修部位と周辺部分の色調や光沢の統一が図られます。

 

サンディング作業で注意すべき点。

  • 研磨圧力の均一性(局所的な凹みの防止)
  • 研磨方向の一定性(スクラッチパターンの統一)
  • 粉塵対策(適切な集塵設備の使用)
  • 表面温度管理(摩擦熱による樹脂軟化の防止)

ゲルコート層の表面に発生する浅い軽微な傷については、パテによる補修が効果的です。この場合の補修方法は積層補修とは異なる手順となるため、損傷の程度に応じた適切な判断が重要になります。

 

車体パネル補修での実践的応用テクニック

自動車の車体パネル補修においてFRPの使用は、特に樹脂製バンパーやエアロパーツの修理で重要な技術となります。従来の鈑金技術とは異なるアプローチが求められ、材料特性を理解した専門的な技術が必要です。

 

車体補修特有の課題として、曲面形状への追従性があります。平面での積層作業と異なり、3次元曲面では樹脂の流れや繊維の配置に特別な配慮が必要になります。特にコーナー部分や複雑な形状では、繊維の向きを適切に調整することで応力集中を防止できます。

 

温度管理も車体補修では重要な要素です。作業場の環境温度が10℃以下の場合、硬化剤の配合比率を通常の1.5倍程度に増量する必要があります。逆に35℃を超える高温環境では、硬化剤量を減らし、少量ずつの作業に分割することで品質管理を行います。

 

マスキング技術においても、車体補修特有のテクニックがあります。

  • 既存塗装面との境界処理
  • 隣接パーツへの樹脂付着防止
  • 硬化時の収縮を考慮した施工範囲設定
  • 研磨作業時の周辺パーツ保護

色合わせについては、ゲルコート段階での調色が重要になります。既存の車体色に近づけるため、少量のサンプル作成による色確認を行い、光の当たり方による見え方の変化も考慮に入れた調整が必要です。

 

補修部位の強度確保では、母材との接着面積を十分に確保することが重要です。損傷範囲の1.5倍程度の面積で下地処理を行い、段階的な積層により応力の分散を図ります。この手法により、補修後の耐久性を大幅に向上させることができ、長期間にわたって安定した品質を維持できます。