金属加工現場では、機械との接触、切削片の飛散、騒音、有害物質への暴露など、多様な危険要素が存在します 。労働安全衛生規則第593条により、有害な業務においては適切な保護具の備え付けが事業者に義務付けられており、金属加工業でも年間6,000~7,000件の労働災害が発生している現状があります 。
参考)保護具の着用義務がある作業とは?保護具の種類や選び方をご紹介…
金属製品製造業の労働災害では「はさまれ・巻き込まれ」が36.3%と最も多く、続いて「飛来・落下」(14.7%)、「墜落・転落」(9.2%)となっています 。これらのリスクに対応するため、作業内容と環境に応じた適切な保護具の選択と着用が不可欠です。
参考)金属加工業における労災事故の相談が急増しています!
労働安全衛生保護具は、身体の部位別に8つの主要カテゴリに分類されます 。保護帽は頭部を飛来・落下物から守り、保護めがねは目を切削片や金属粉から保護します。聴覚保護具は騒音による聴力障害を防止し、呼吸用保護具は有害な粉じんや化学物質から呼吸器を守ります。
参考)https://www.jisha.or.jp/order2023/hogogu/
防護手袋は手指の外傷防止に重要で、金属加工では労働災害の約3分の1を手指の事故が占めています 。防護服は熱や化学物質から身体を保護し、高視認性安全服は視認性向上により事故防止に寄与します。墜落制止用器具は高所作業時の転落防止に、安全靴は足部の外傷や電気事故を防ぎます 。
特に金属加工では、機械加工の現場で切削片や金属粉から目を守るための保護めがねが基本的な保護具となり、飛散物が多い環境ではサイドカバー付きのゴーグルタイプの選択が推奨されています 。
2024年4月の労働安全衛生法改正により、一定の有害化学物質を取り扱う業務において保護具着用が事業者の義務として明確化されました 。労働安全衛生規則第594条の2では、対象業務に従事する労働者に「不浸透性の保護衣、保護手袋、履物または保護眼鏡等適切な保護具」の使用が義務付けられています 。
参考)【2024年4月義務化】労働安全衛生法 保護具着用義務とは?…
義務化の対象となる「皮膚等障害化学物質等」の判断には、安全データシート(SDS)の「2. 危険有害性の要約」項目を確認し、特定の3つの項目のいずれかが区分1に該当する場合、適切な保護具着用が必要です 。
製造業における保護具着用率の現状では、保護めがねの重要性を62%が実感しているものの、実際の着用率は28%にとどまっています 。着用しない理由として「社内ルールに定められていないから」が27%と最多で、企業による着用ルール策定の重要性が示されています 。
参考)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000127493.html
保護具の性能評価は国際的に標準化されており、聴覚保護具ではSNR(Single Number Rating)値による遮音性能評価が重要です 。耳栓やイヤーマフの選択時には、作業環境の騒音レベルと周波数特性に応じて適切なSNR値を持つ製品を選定する必要があります 。
参考)https://www.monotaro.com/s/c-269/q-SNR/
防護手袋の耐切創性能では、ANSI/ISEA 105規格によるA1からA9までの9段階評価や、EN 388規格による1から5までの5段階評価システムが採用されています。最も切れにくいのは鎖手袋と呼ばれるステンレスを編み込んだもので、刃物や鋭利な素材、薄型鋼板等の金属加工作業に適しています 。
参考)作業用保護手袋の種類と特徴をチェック!
電気用ゴム手袋では電圧別に3種類に分類され、A:300Vを超え交流600Vまたは直流750V以下、B:交流600Vまたは直流750Vを超え3,500V以下、C:3,500Vを超え7,000V以下の規格があります 。作業環境に応じた適切な規格の選択が電気事故防止に不可欠です。
保護具技術は急速に進歩しており、3Dプリンティング技術を活用した機能性ポリマー材料の開発が注目されています 。金属補強材を組み込んだポリマー素材により、従来の保護具では実現困難だった軽量性と高い保護性能の両立が可能になっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10779770/
COVID-19パンデミックを契機として、大規模積層造形(LSAM)技術による個人用保護具の製造が実用化され、従来のサプライチェーンでは対応困難な緊急時にも迅速な保護具供給が可能になりました 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7557352/
最新の研究では、超音波溶接技術や接触溶接プロセスを活用した保護手袋の材料構造開発が進められています 。合成ポリアミドニット生地とPLA、ABS、PET-G等のポリマーとの接合技術により、より高性能な保護手袋の実現が期待されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11595776/
また、金属検出機能を組み込んだスマート安全ベストの開発により、金属加工現場での新たな安全対策手法も提案されています 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7728712/
保護具の性能維持には適切な保守管理が不可欠です。東京都労働安全衛生保護具措置規程第15条では、保護具の紛失や機能喪失に備えて予備の保護具を備えることが規定されています 。
参考)東京都労働安全衛生保護具措置規程
聴覚保護具では、装着者の耳に適したものの選択、正しい装着方法での装着、適正な保守管理により聴力障害の発生及び進行防止が可能です 。耳栓の場合、装着した耳栓の遮音効果を「耳栓チェッカー」等で確認することが推奨されています 。
参考)聴覚保護具 href="https://jsaa.or.jp/%E8%81%B4%E8%A6%9A%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E5%85%B7/" target="_blank">https://jsaa.or.jp/%E8%81%B4%E8%A6%9A%E4%BF%9D%E8%AD%B7%E5%85%B7/amp;#8211; 公益社団法人 日本保安用品協会
電動ファン付き呼吸用保護具(PAPR)は、マスクに内蔵された電動ファンによりろ過材で有害物を除去した空気を面体内に供給するシステムですが、定期的なフィルター交換とファン機能の点検が必要です 。
参考)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/pdf/taisaku/common_PPE.pdf
耐熱手袋では、100℃を超える環境でメタ系・パラ系アラミド繊維製品を使用しますが、長時間使用は手袋自体の蓄熱による火傷の恐れがあるため、可能な限り短時間使用に留めることが重要です 。定期的な外観検査により、繊維の劣化や損傷の早期発見と交換が安全確保の鍵となります。