FRP塗装の成功は下地処理で決まります。まず表面の汚れや油分を完全に除去し、600番程度のサンドペーパーで軽く研磨して足付けを行います。この工程を怠ると塗装が剥がれる原因となるため、整備業界では「下地に始まり下地に終わる」とも言われています。
研磨作業では以下の点に注意が必要です。
特に既存の塗装面がある場合、ウレタンペンキなどの上からFRP施工を行う際は40番程度の粗いペーパーで地を出す必要があります。この作業により硬化収縮によるシワや剥離を防げます。
下地が濡れていると密着不良の原因となるため、十分な乾燥時間を確保することも重要です。湿度の高い日は特に注意し、必要に応じて送風機を使用して乾燥を促進させましょう。
プライマーはFRP樹脂と下地材の密着を高める重要な役割を果たします。FRP材質の場合、しっかり研磨すれば下地材なしでも接着しますが、研磨後の表面が荒れている場合やFRP以外の材質(金属・木材・コンクリート)に塗布する場合は必須です。
プライマー選定のポイント。
プライマー塗布後は半日から1日程度待って表面の乾燥を確認してから次工程に進みます。気温や湿度によって乾燥時間が変わるため、指触乾燥の状態を確認することが大切です。
塗布作業にはローラーや刷毛を使用し、ムラなく均一に塗ることがポイントです。使用した道具は作業後すぐにアセトンで洗浄し、硬化による使用不能を防ぎます。
トップコートはFRP防水層を紫外線や摩耗から保護する最終工程です。硬化剤添加後30分以内という制限時間があるため、事前の準備と計画的な作業が不可欠です。
施工手順の詳細。
スプレーガンを使用する場合はスチレンモノマーで粘度調整を行いますが、ハケやローラーでの施工時はシンナー類で希釈せず原液のまま使用します。
トップコートの塗布可能面積は1kgあたり約2.5平米です。積層時に空気が入ると硬化不良や強度不足の原因となるため、ローラーや刷毛で丁寧に気泡を除去しながら作業を進めます。
色付けを行う場合はゲルコートと樹脂を混合後、パラフィンを添加し、最後に硬化剤を加える順序で行います。この順序を守ることで均一な発色と安定した硬化が得られます。
硬化剤の配合は塗装品質を左右する最も重要な要素の一つです。配合量や添加順序を間違えると硬化不良や強度不足を招くため、正確な計量と手順の遵守が必要です。
硬化剤配合の基本原則。
ポリトナー顔料を使用する場合の配合率は色によって異なり、ホワイト15%、ブラック10%、カラー15%が目安です。入れすぎると硬化不良の原因となるため注意が必要です。
硬化剤添加のタイミングも重要で、ゲルコートと樹脂、パラフィンを先に混合し、最後に硬化剤を加えることで均一な混合と安定した硬化が得られます。
温度や湿度によって硬化時間が変わるため、作業環境に応じて硬化剤の量を微調整することも業者レベルの技術として重要です。寒冷時は硬化剤を若干多めに、高温時は控えめにすることで最適な硬化状態を実現できます。
長年の経験を持つ業者が実践している失敗回避のテクニックには、一般的な施工マニュアルには記載されていない実践的なノウハウが多く含まれています。
業者が重視する失敗回避のポイント。
意外と知られていない技術として、古いFRP面への塗装では既存の樹脂が完全に硬化しているかの確認が重要です。不完全硬化の上に新しい樹脂を塗布すると界面で剥離が生じる可能性があります。
また、複数回に分けて施工する際の継ぎ目処理も重要な技術です。前回施工部分との境界では5cm程度重ね塗りし、境界線をぼかすように施工することで美しい仕上がりが得られます。
塗装後のメンテナンス性を考慮し、将来の補修がしやすいよう施工記録を残すことも業者の重要な仕事です。使用した樹脂の種類、硬化剤の配合比、施工時の環境条件などを記録しておくことで、後の補修作業を効率化できます。
失敗した際の対処法として、硬化前であれば溶剤で除去可能ですが、硬化後は機械的な除去が必要となるため、作業中の品質管理が何より重要です。