エポキシ樹脂特徴と接着性耐薬品性電気絶縁性用途

エポキシ樹脂の特徴をご存知ですか?金属加工の現場で多用される優れた接着性、耐薬品性、電気絶縁性などの特性を持つこの樹脂は、どのように活用できるのでしょうか?

エポキシ樹脂の特徴

エポキシ樹脂の主要な特徴
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優れた接着性と密着力

金属、コンクリート、木材などあらゆる素材に強力に接着し、剥がれにくい特性を発揮します

高い電気絶縁性

体積抵抗率10¹²~10¹⁷Ω・cmの優れた絶縁性能で電気・電子部品に最適

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耐薬品性と防食性

水分・酸素を通さず、アルカリや溶剤に強い耐性で長期間の防食効果を実現

エポキシ樹脂の接着性と機械的強度

 

エポキシ樹脂の最も重要な特徴の一つが、金属加工現場で多用される優れた接着性です。この樹脂は金属、コンクリート、ガラス、木材など様々な素材に対して強力な接着力を発揮します。分子構造に含まれる極性基が被着材表面と化学的な結合を形成し、さらに硬化時の収縮率が3%程度と低いため、接着面への内部応力が小さく、剥離しにくい特性を持っています。

 

参考)https://jp.meviy.misumi-ec.com/info/ja/howto/marketplace/50053/

機械的強度に関しても、エポキシ樹脂硬化物は三次元ネットワーク構造により高い剛性と引張強度を示します。特に構造用接着剤として使用される場合、ブロック塀など重量物の接着から精密な電子部品の固定まで幅広い用途に対応できます。ただし、硬化後の樹脂は硬くて丈夫な反面、衝撃や曲げに対する靭性がやや低く、割れやすいという欠点もあるため、用途に応じて柔軟剤や補強材を添加する工夫が必要です。

 

参考)エポキシ樹脂

金属加工の現場では、この接着性を活かして金型の補修、部品の組み立て、コーティングなど多様な場面で活用されています。特に異種材料の接着においてエポキシ樹脂は他の接着剤では困難な組み合わせにも対応できる貴重な材料となっています。

 

参考)エポキシ樹脂系接着剤

エポキシ樹脂の耐薬品性と防食特性

エポキシ樹脂は耐薬品性と食性に優れ、金属加工業界における表面保護材料として重要な役割を果たしています。この樹脂は水分子だけでなく酸素分子も透過させない緻密な構造を持つため、金属表面を化学的腐食から守る能力が極めて高いのが特徴です。

 

参考)https://www.y-skt.co.jp/magazine/knowledge/guide-epoxy/

具体的には、エポキシ樹脂は水、油、アルカリに対して強い耐性を示します。工場の薬品タンク内部や化学プラント配管の内面保護材として使用されるのはこの特性によるものです。船舶の塗料、飲料水缶の内側コーティング、自動車の防食用塗料など、過酷な化学的環境下での使用実績も豊富です。

 

参考)エポキシ樹脂の特性と用途 強化剤として最適な高機能素材

ただし、耐酸性についてはやや弱点があり、強酸環境では劣化が進む可能性があります。この弱点は酸無水物型硬化剤を選択することで改善できます。また、エポキシ樹脂ライニング施工では、下地処理として金属表面の汚れ、、油分を完全に除去し、適切な粗度を確保することが極めて重要です。この準備作業が防食効果の持続性を左右する決定的な要因となります。

 

参考)化学プラントの腐食対策|エポキシ樹脂ライニングとビニルエステ…

防食コーティングとしてのエポキシ樹脂は、鱗片状防錆顔料と組み合わせることでJIS K 5674 2種同等以上の優れた防食性を発揮し、長期間の屋外使用にも耐える耐久性を実現しています。

 

参考)https://www.monotaro.com/s/attr_f3590-%E8%80%90%E9%A3%9F%E3%83%BB%E9%98%B2%E8%85%90/q-%E3%82%A8%E3%83%9D%E3%82%AD%E3%82%B7%E6%A8%B9%E8%84%82/

エポキシ樹脂の電気絶縁性と耐熱性

エポキシ樹脂の電気絶縁性は金属加工現場における電気・電子部品の製造に不可欠な特性です。体積抵抗率は10¹²~10¹⁷Ω・cmという極めて高い値を示し、これは高性能樹脂であるPEEK樹脂に匹敵する性能です。この優れた絶縁性により、電気回路内で電流が流れてはいけない部分を確実に分離できます。

 

参考)エポキシ樹脂とは?プラスチックとの違いや特徴を解説-都市環境…

耐電圧性も高く、20~30kV/mmの高電圧がかかっても絶縁破壊を起こしにくい特性を持っています。誘電率は3.3~4.0程度で安定しており、高周波領域でも低い誘電損失を維持します。さらに吸水率が低いため、高湿度環境下でも絶縁性能を維持できる点が金属加工現場での信頼性を高めています。

 

参考)EPエポキシ樹脂(物性表2)|KDAのプラスチック加工技術

耐熱性に関しては、一般的なエポキシ樹脂のガラス転移温度は100~150℃程度ですが、硬化剤の選択によっては200℃を超える高耐熱グレードも実現可能です。ガラス転移温度とは樹脂が硬い状態から柔らかい状態に変わる温度であり、この温度以下では形状と性能を維持します。熱分解温度は250~350℃程度と非常に高く、接着の目安はガラス転移点となります。

 

参考)エポキシ樹脂について

最近の研究開発では、ガラス転移温度240℃という革新的な高耐熱エポキシ樹脂も登場しており、鉛フリーはんだに対する耐性も備えています。これらの電気絶縁性と耐熱性の組み合わせにより、エポキシ樹脂はプリント基板の基材、モーター絶縁材、高電圧部品の封止材として幅広く採用されています。

 

参考)https://www.sanyu-rec.jp/product/electronic/cat/cat70/

エポキシ樹脂の硬化剤と用途別の選択方法

エポキシ樹脂の性能は硬化剤の種類によって大きく変化するため、金属加工の用途に応じた適切な選択が重要です。硬化剤は主にアミン系、酸無水物系、フェノール系に分類され、それぞれ異なる硬化特性と最終物性を与えます。

 

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/53/4/53_4-3/_pdf

アミン系硬化剤は最も一般的で、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、変性ポリアミド、芳香族ポリアミンなどの種類があります。脂肪族アミンは常温で硬化し、約100℃の耐熱性を持つ硬化物を形成するため、塗料用途に多用されます。一方、芳香族ジアミンは主に高温硬化タイプで、加熱硬化により得られる硬化物はガラス転移点が高く、耐熱性や機械強度に優れるため電気・電子部品用途に使用されます。

 

参考)https://www.threebond.co.jp/technical/technicalnews/pdf/tech32.pdf

酸無水物系硬化剤は加熱により硬化し、耐熱性と電気絶縁性に優れた硬化物を与えるため、電気・電子材料の封止や注型に適しています。フェノール系ではノボラック型が主流で、特にクレゾールノボラックやフェノールノボラックが硬化剤として使用されます。

 

参考)技術情報 エポキシ樹脂硬化促進剤│サンアプロ株式会社

硬化促進剤としては、イミダゾール類や三級アミンが用いられ、硬化反応を加速させる役割を担います。最近注目されているチオール系硬化剤は、低温・速硬化という特徴があり、省エネルギー化を求める現場での採用が増えています。

 

参考)エポキシ樹脂チオール系硬化剤の特長 | 堺化学工業株式会社

金属加工現場では、作業環境温度、必要な硬化時間、要求される耐熱性や機械的強度を考慮して硬化剤を選定する必要があります。一般的に、低温~室温硬化タイプはガラス転移点が低く軟らかい硬化物となり塗料用途向け、加熱硬化タイプは高いガラス転移点と優れた機械強度を持ち構造材や電子部品向けとなります。

エポキシ樹脂のデメリットと金属加工現場での対策

エポキシ樹脂には多くの優れた特徴がある一方で、金属加工の現場で理解しておくべきいくつかのデメリットも存在します。これらの欠点を把握し、適切な対策を講じることで、エポキシ樹脂をより効果的に活用できます。

 

最も顕著な欠点は紫外線による劣化です。エポキシ樹脂は紫外線を受けると黄変し、色褪せや物性低下を起こすため、屋外での長期使用には不向きです。この対策として、屋外用途ではウレタン塗料などの耐候性に優れた上塗りを施すことが必須となります。近年では、エポキシアクリレートという、エポキシ樹脂の耐久性を維持しながらアクリル樹脂を配合して紫外線耐性を向上させた改良型も登場しています。

 

参考)CFRPで使われるエポキシ樹脂とは?メリット・デメリットを分…

低温環境での硬化速度の遅さも実務上の課題です。冬季や低温作業環境では硬化に時間がかかり、施工計画に影響を与えることがあります。この場合、加温設備の使用や、低温硬化型の硬化剤への変更が有効な対策となります。

 

参考)エポキシ塗料とウレタン塗料の違い|特徴・用途を徹底比較

靭性の低さも重要な欠点です。エポキシ樹脂は硬くて丈夫な反面、衝撃や曲げに対する粘りが不足し、割れやすい性質があります。この脆性を改善するため、ゴム変性やハイパーブランチポリマーの添加による靭性向上技術が開発されています。金属加工現場で振動や衝撃が予想される用途では、こうした改質エポキシ樹脂の選択が推奨されます。

 

参考)https://www.mdpi.com/2073-4360/12/9/1908/pdf

意外と知られていない特性として、エポキシ樹脂は易燃性であることも把握しておく必要があります。火気を扱う作業現場では適切な安全管理が求められます。最近では、リン系やシリコーン系の難燃剤を添加した難燃グレードも開発されており、より安全な作業環境の構築に貢献しています。

 

参考)エポキシ樹脂(プラスチック用語解説:あ行)|KDAのプラスチ…

さらに実務的な問題として、二液性エポキシ樹脂の場合、主剤と硬化剤の配合比を正確に守らないと硬化不良や物性低下を招きます。専用ガンやノズルを使用するか、ワンプッシュで正確に配合できる製品を選ぶことで、現場でのミスを防止できます。

 

参考)金属用エポキシ接着剤 – Permatex Ja…

スリーボンドのエポキシ樹脂技術資料
エポキシ樹脂の基礎から硬化剤の選択方法まで、金属加工現場で役立つ詳細な技術情報が掲載されています。

 

産総研のエポキシ樹脂ケミカルリサイクル研究
エポキシ樹脂の環境負荷低減に向けた最新のリサイクル技術開発について、のリサイクル技術開発について、権威ある研究機関の取り組みが紹介されています。

 

 


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