鉛筆硬度試験 jis k5600 塗膜硬度測定法

塗装皮膜の品質管理に欠かせない鉛筆硬度試験について、JIS K5600の標準規格に基づいた試験方法から判定基準、各種塗装樹脂の硬度目安まで詳しく解説。試験機の選定方法や注意点を知って、製造現場での正確な硬度評価を実現できますか?
鉛筆硬度試験 jis k5600 塗膜硬度測定法
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規格概要と試験の背景

JIS K5600は塗料一般試験方法の国際標準規格で、塗膜やコーティング材の硬さ評価に広く使用されています。旧規格のJIS K5400から規格改正され、より詳細な試験基準が設定されました。

鉛筆硬度試験 jis k5600 塗膜硬度測定法

鉛筆硬度試験 jis k5600における規格改正と試験の位置づけ

 

塗料および塗膜の品質管理において、鉛筆硬度試験は国際的な標準評価方法として認識されています。JIS K5600は、旧規格であったJIS K5400「塗料一般試験方法」を改正した新しい国家規格であり、塗膜の機械的性質を測定する方法を統一しています。旧規格における「2.4 鉛筆引っかき値」という項目が、新規格では「4.4 引っかき硬度(鉛筆法)」として5部の機械的性質の中に位置づけられました。

 

この改正により、試験方法の詳細な手順や判定基準がより明確に規定されるようになりました。塗膜の硬度評価は、製品の耐摩耗性や耐久性を予測する上で重要な指標となるため、規格の統一は業界全体の品質向上に貢献しています。

 

規格改正の背景には、製造現場での試験結果のばらつきを減らし、より再現性の高い試験を実現するという目的がありました。金属加工業や自動車製造業など、多くの産業分野でこの試験が採用されています。

 

鉛筆硬度試験 jis k5600における基本的な試験方法と手順

鉛筆硬度試験の基本的な手順は、以下のプロセスで構成されています。まず、三菱ユニ鉛筆の6Bから9Hまでの異なる硬度の鉛筆を準備することから始まります。これらの鉛筆の硬度は、B(ソフト)からH(ハード)へと段階的に設定されており、塗膜がどの硬度レベルまで耐えられるかを判定するための基準となります。

 

試験に用いる鉛筆の芯先の準備は、非常に重要なポイントです。鉛筆の芯の先端を固い平らな面に置いた研磨紙400番に対して直角にあて、芯先が平らで角が鋭くなるように研ぎます。この準備作業が不十分だと、試験結果に大きなばらつきが生じるため、慎重に行う必要があります。

 

次に、研いだ芯を試験面に対して45度の角度にあて、芯が折れない程度の強さで塗面に押し付けながら、試験者の前方に向かって均一な速さで約1cm引っかきます。このとき、押し出す速度は約1cm/sに統一されており、速度のばらつきも結果に影響を与えます。1回の引っかきが終わるごとに、鉛筆の芯の先端を研いで、同一の濃度記号で5回ずつ試験を繰り返すことで、統計的な信頼性を確保しています。

 

判定基準として、塗膜の破れまたはきりきずが5回の試験で2回以上になった鉛筆の硬さの一段下の濃度記号が、その試料の鉛筆硬度として記録されます。つまり、傷がつかなかった最も硬い鉛筆の硬度が、その塗膜の評価値となるのです。

 

鉛筆硬度試験 jis k5600の塗装樹脂別判定基準と硬度の目安

製造現場では、塗装に用いられる樹脂の種類によって、期待される鉛筆硬度が異なります。JIS K5600の規格に基づいた実務的な判定基準は、以下のとおりです。

 

焼付けアクリル樹脂塗装では2H以上の硬度が求められることが多く、焼付けアクリル樹脂を用いた自動車部品や家電製品は、この基準を満たすように設定されています。電着塗装アニオン電着塗装)も同様に2H以上が合格基準とされており、自動車のプライマー層などで活用されています。

 

一方、樹脂塗装(ウレタン樹脂)はF以上で合格とされており、比較的軟らかい塗膜特性を有しています。これは、ウレタン樹脂塗装が優れた屈曲性を提供し、曲げ試験での割れ抵抗が高いためです。セラミックコート塗装は3H以上という高い硬度基準が設定されており、より厳しい使用環境に適応する製品に採用されています。

 

一般的な硬度の目安として、2液ウレタン樹脂塗装はF~2H、焼付けエポキシ樹脂塗装はH~、焼付けアミノアルキド樹脂塗装はHB~H、焼付けフッ素樹脂塗装は2H~、焼付けセラミック樹脂塗装は3H~7Hとされています。これらの値は、各樹脂の化学的性質と硬化機構に基づいており、実際の塗装施工条件によっても変動します。

 

硬度が高いからといって必ずしも品質が優れているわけではない点は、塗膜評価において見落とされやすい重要な視点です。高硬度の塗膜は屈曲性に劣り、曲げ試験で割れが生じたり、製品の性能を損なう場合があります。したがって、用途に応じた適切な硬度と屈曲性のバランスが求められるのです。

 

鉛筆硬度試験 jis k5600における硬度不足の原因と品質管理への影響

製造現場で鉛筆硬度試験の結果が規定値を下回った場合、その原因は塗装プロセスに関連していることが多いです。焼付塗装の焼付温度が低い場合や、焼付時間が不足している場合、硬化反応が不十分になり硬度が低下します。また、2液型ウレタン塗装では硬化剤の添加量が不足していると、期待される硬度が得られません。

 

硬度不足が生じると、塗膜本来の性能が発揮されず、使用環境での剥がれや劣化につながる可能性があります。これは、製品全体の品質低下と信頼性喪失を招く重大な問題となります。特に自動車部品や建築材料など、長期間の耐久性が要求される製品では、硬度基準の達成が品質保証の必須条件です。

 

一度発生した硬度不足の問題を解決するには、塗装条件の見直しが必要になります。焼付温度の調整、焼付時間の延長、硬化剤の計量管理の強化など、複数のパラメータを同時に検証する必要があります。これらの調整作業は、製造ラインの効率にも影響するため、実施前の綿密な計画が重要です。

 

鉛筆硬度試験 jis k5600における手かき法と機械式試験機の選択基準

鉛筆硬度試験には、主に手かき法と機械式の試験機を用いた方法の二種類があります。手かき法は、試験者が直接鉛筆を操作して引っかく方法で、特別な機械設備を必要としません。このため、コストが低く、試験場所に制限がなく、比較的簡便に実施できるメリットがあります。

 

しかし、手かき法には試験者の技術や経験に結果が左右されやすいという大きなデメリットがあります。鉛筆の押し付け力の加え方、引っかき速度、角度の設定など、複数の因子が試験結果に影響を与えるため、試験者間でのばらつきが生じやすくなります。同一の試料を複数の試験者が測定すると、異なる結果が得られることもあります。

 

機械式の試験機を用いると、これらの問題が大幅に改善されます。連続加重式引掻強度試験機などの機械は、圧力、角度、速度などのパラメータを正確に制御することができます。さらに、データ解析ソフトウェアを組み合わせることで、引っかき時の針が受ける抵抗力を記録し、より詳細な評価が可能になります。

 

金属加工業や自動車製造業など、高度な品質管理が要求される産業では、機械式試験機の導入が推奨されます。一方、コスト制約や試験の頻度が低い場合には、手かき法で対応することも実務的な選択肢となります。

 

実際の選択にあたっては、製品の用途、規模、精度要求、コスト予算などを総合的に判断する必要があります。試験機の選定は、単なる装置選択ではなく、企業の品質管理戦略全体に関わる重要な決定事項なのです。

 

鉛筆硬度試験 jis k5600と他の硬度試験方法の関係性

JIS K5600の規格体系では、鉛筆法による引っかき硬度(5-4)のほか、荷重針法による引っかき硬度(5-5)も規定されています。これらは相互補完的な役割を果たします。鉛筆法は定性的で簡便であり、広く普及している一方、荷重針法はより定量的で精密な測定が可能です。

 

荷重針法では、1mmの半球状の針に段階的に荷重をかけながら引っかき、針が素地に到達したときの荷重値を測定します。この方法は、より詳細な硬度プロファイルを得られるため、研究開発段階や高精度の品質管理が必要な場合に採用されます。

 

JIS K5600の規格体系は、塗膜の機械的性質に関する11項目の試験方法を包含しており、耐屈曲性、耐カッピング性、耐重り落下性、付着性(クロスカット法・プルオフ法)、耐摩耗性(3種類)、耐洗浄性などが規定されています。これらの試験を組み合わせることで、塗膜の総合的な性能評価が可能になります。

 

鉛筆硬度試験はあくまで塗装の性能・性質を表す指標の一つに過ぎず、製品の最終的な性能評価には複数の試験結果の総合判断が必要です。表面的な硬さだけではなく、屈曲性、付着性、耐摩耗性などの複合的な性質を同時に評価することで、初めて製品の真の品質が把握できるのです。

 

製造現場での実務において、試験方法の適切な選択と実施が、製品品質の維持と向上に直結しています。

 

日本塗料検査協会による鉛筆硬度試験の解説ページでは、引っかき硬度(鉛筆法)の基本的な方法論が詳しく説明されており、実務的な参考資料として活用できます。
JIS K5600-5-4の正式な規格文書では、塗料一般試験方法における塗膜の機械的性質の詳細な技術仕様が規定されており、企業の品質管理基準の構築に不可欠な情報源です。

 

 


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