あなた真空甘いと膜不良で数十万円損します
電子ビーム蒸着は、タングステンフィラメントなどから放出した電子を数kV〜10kV程度で加速し、材料に衝突させて加熱・蒸発させる技術です。加熱温度は金属によっては2000℃以上に達します。つまりピンポイント加熱です。
通常の抵抗加熱と違い、坩堝全体ではなく材料表面のみを加熱できるため、純度の高い蒸発が可能になります。アルミや金などは安定して蒸発しやすく、光学膜や半導体で広く使われます。ここが強みです。
蒸発した粒子は真空中を直進し、基板に堆積します。この「直進性」が膜質に大きく影響します。結論は直進蒸着です。
電子ビーム蒸着で最も見落とされがちなのが真空度です。10^-4 Paと10^-6 Paでは、残留ガス量が約100倍違います。これは大きいです。
真空が甘いと蒸発粒子が酸素や水分と衝突し、膜中に不純物として混入します。結果として導電性低下や密着不良が発生します。つまり不純物混入です。
例えば、銅膜で抵抗値が20%以上上昇するケースもあります。これは製品不良に直結します。痛いですね。
このリスク回避には「排気時間の確保→リークチェック→到達圧確認」の順が重要です。真空計のログ確認だけでOKです。
膜厚制御は水晶振動子(QCM)が主流です。1Hzの変化で約0.1nmレベルの精度を持ちます。かなり精密です。
蒸着速度は一般的に0.1〜1nm/s程度で制御されます。例えば100nmの膜なら約100〜1000秒で形成されます。つまり時間管理です。
ただし注意点があります。センサー位置と基板位置がズレると、実際の膜厚が±20%以上ずれることがあります。ここは盲点です。
このズレ対策として「実測補正係数を設定する」ことが有効です。1回測って補正するだけでOKです。
代表的な他方式としてスパッタリングがあります。スパッタはアルゴンイオンで材料を叩き出す方式です。原理が違います。
電子ビーム蒸着は以下の特徴があります。
・高純度膜が作れる
・蒸発速度が速い
・装置構造が比較的シンプル
一方でデメリットもあります。
・段差被覆性が低い
・装置コストが高い(数百万円〜)
つまり用途次第です。
例えば配線用途ならスパッタ、光学用途なら蒸着が選ばれやすいです。使い分けが基本です。
現場で大きな差が出るのは「ビーム調整」と「材料配置」です。特にビーム位置ズレは重要です。
ビームが坩堝の端に当たると、材料ではなく坩堝が溶けることがあります。修理費は10万円以上になるケースもあります。これは避けたいです。
また材料の詰め方も重要です。隙間があると突沸(急激な蒸発)が起き、膜が荒れます。ここは要注意です。
対策として「材料を均一に押し固める→低出力から徐々に加熱」が有効です。ゆっくり立ち上げればOKです。
さらに、蒸着中の観察も重要です。発光状態や蒸発の安定性を見るだけで異常に気づけます。これは経験差が出ます。
参考:電子ビーム蒸着の原理と装置構成の詳細解説