防止策と防止対策による金属加工事故の完全排除

金属加工事故の防止策と防止対策

金属加工現場における挟まれ・巻き込まれ事故の防止対策

金属加工現場で最も重篤な災害となるのが挟まれ・巻き込まれ事故です 。この事故の主要な原因として、機械の不具合や安全装置の未利用、作業中の不注意、マニュアルの不徹底、安全教育の不足が挙げられます 。
参考）https://om.lakeel.com/column/detail35

 

防止策として、まず機械の点検とメンテナンスが基本的な対策となります 。機械が正常に動作しているかどうかを定期的に確認し、異常があればすぐに修理を行うことで、事故のリスクを大幅に減少させることができます。特に、安全装置が正常に機能しているかどうかの確認が重要です 。
作業環境の整備も不可欠です 。5Sの徹底により事故要因を常時排除し、通路と作業設備の間を広めに確保することで、動線の交差を防ぎ、可動部への不用意な接近による事故を防ぐことができます。また、作業服や保護具を正しく着用することで、衣服の巻き込みやヒューマンエラーを防ぐことにもつながります 。
厚生労働省のリスクアセスメントマニュアルによると、加工物の固定作業中、締め付け金具に指・手を挟まれる危険性があり 、品物が外れた際に品物と軸受箱の間に手を挟まれる事故も報告されています 。
参考）https://anzeninfo.mhlw.go.jp/risk/kinzoku04_6_2.html

 

切削加工における防止策による災害防止

切削加工では、切削液の適切な管理が安全対策の重要な要素となります 。作業者は保護メガネ、保護手袋、保護マスク、作業着を着用し、皮膚や目への接触、吸入を防ぐ必要があります 。作業場は常に換気をよく行い、油煙やミストの滞留を防ぎ、必要に応じて局所排気装置などを設置します 。
参考）現場で役立つ！切削油の基礎知識と選び方の決定版

 

切削加工中の切粉の飛散も重大なリスクとなります 。切削加工中はアクリルカバーを閉じて加工し、防護メガネおよび長袖作業着を必ず着用することが防止対策として有効です 。また、透明アクリルによる飛散防護板の設置により、品物がチャックから外れるリスクを軽減できます 。
参考）https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001411792.pdf

 

旋盤作業では、切りくずが剃刀のように鋭利で危険であり、飛散時の危険度が倍増します 。切りくずの飛散を防止するカバーを旋盤に設置することが必須の防止策となります 。原則として、切削加工時は保護眼鏡を着用しなければならず、特に初心者は切りくずの飛散方向を予測できないため、常に保護眼鏡をかけることが重要です 。
参考）https://www.nmri.go.jp/archives/eng/khirata/metalwork/appendix/safe/index_j.html

 

厚生労働省の金属加工作業におけるリスクアセスメント実施マニュアル
金属加工作業に伴う災害防止のための具体的なリスクアセスメント手法が詳述されています。

 

機械設備の定期メンテナンスによる防止対策

機械や設備の定期メンテナンスは、工場の安全対策において非常に重要な防止策です 。定期的なメンテナンスを行うことで、機械の故障を防ぎ、事故のリスクを大幅に減少させることができます 。具体的には、機械の摩耗部分のチェックや、油圧システムの漏れの確認、電気系統の安全検査などが含まれます 。
参考）工場の安全対策とは？重要視されている理由と今すぐ取り入れるべ…

 

プレス機械においては、労働安全衛生法に基づき、事業者が実施すべき日常的な保守点検（始業前点検など）と、1年以内ごとに1回行うことが義務付けられている特定自主検査（年次検査）があります 。潤滑油の補充、消耗部品の交換、センサー類の清掃といった予防保全を計画的に行うことが、機械の安定稼働と安全確保の両立に繋がります 。
参考）プレス機の安全対策7例！安全作業の徹底を難しくする壁

 

設備トラブルの防止策として、点検結果は必ず記録し、不具合が見つかった場合は速やかに修理・改善する体制が必要です 。実際の災害事例でも、スイッチの誤動作や制御装置の不具合が死亡事故につながったケースが報告されており 、定期点検や保守が不十分であれば安全は維持できません。
チャックハンドルの取り忘れによる飛散事故を防ぐ防止策として、チャックハンドルのスイッチ付き専用置台をつくり、加工機械が作動可能になるインターロックを組み込む対策が有効です 。

5S活動とリスクアセスメントを活用した防止策

製造業における労働災害防止には、4S活動（整理・整頓・清掃・清潔）の実施が効果的です 。5S（整理・整頓・清掃・清潔・しつけ）の徹底により、職場に潜む労働災害のリスクが低減され、職場の安全確保に効果が期待できます 。
参考）工場の安全対策の重要性とは？対策のポイントと事例をご紹介

 

リスクアセスメントは、職場における危険性又は有害性などの調査のことで、その結果に基づいて対策を実施する一連の手法です 。リスクアセスメントを実施することで、工場内に潜むリスクを明確にし、被害の大きさに応じた優先順位を付けることができます 。これにより、各リスクに適した合理的な対策を講じることが可能となり、費用対効果の観点からも的確な安全対策を実施できます 。
参考）食品工場作業におけるリスクアセスメント - 食品工場の建設な…

 

金属加工現場で事故の発生しやすい板金加工では、工具が作業台に雑然と並んでいたり、着用するべき保護具を省略していたりすると、思わぬところで作業の遅れやケアレスミスが生じ、連鎖的に重大な事故を招く危険があります 。いわゆる4Sの徹底により、かなりの件数の事故を防ぐことができます 。
参考）金属加工における安全 【通販モノタロウ】

 

KYT（危険予知訓練）は、従業員が作業場や業務の中に潜む危険を洗い出し、対処方法を話し合う訓練です 。これにより職場での事故を防げる可能性が高まり、実践的な防止策として機能します。

切削液の安全管理による包括的防止対策

切削液の安全な取り扱いは、金属加工現場における重要な防止対策の一つです 。局所排気装置では、ミストの発生源（加工点など）のできるだけ近くに吸引フードを設置し、ミストが拡散する前に捕捉して屋外へ排出することが重要です 。
参考）【労働災害防止】切削油の安全な取り扱い方｜作業者（従業員）の…

 

水溶性切削油剤の腐敗防止には、抗菌性切削油剤の選定使用、適正な濃度管理の徹底、クーラント更液時の清掃・殺菌、混入他油の除去、日常的なクーラント管理の実施が必要です 。これらの防止策により、作業者の健康被害を未然に防ぐことができます。
参考）水溶性切削油剤の腐敗防止 上の注意点

 

不水溶性切削油剤は消防法上の第4類「引火性液体」に属するため、消防設備の設置が義務付けられています 。警報設備、消火設備、避難設備といった消防設備により、火災事故の防止対策を講じる必要があります。
参考）https://cutting-environment-improvement.com/columns/04

 

オイルミストの人体への影響を防ぐ防止策として、使用する切削油を変更する、オイルミストの発生箇所をカバーで覆う、粉じんマスクやゴーグルを着用する、作業環境に適した対策を講じることが有効です 。皮膚接触の防止策として、切削液が皮膚に付着した場合は、速やかに石鹸と水で洗い流し、かぶれなどの異常を感じた場合は、直ちに医師の診察を受けることが重要です 。
参考）オイルミストが人体に与える影響は？快適な環境を保つための有効…

 

厚生労働省：金属加工作業におけるリスクアセスメントのすすめ方（PDF）
機械加工作業におけるリスクとその低減対策の具体例が詳細に記載されています。